ダーク・ブラザーフッド ~闇の一党の勧誘~
ダイビングロック――
かつて緑娘と一緒に、ウダーフリクトと戦ったことがある。
そして突き出た岩にはテントがあり、その近くに不動なるアグナーの手記が置かれていたのを覚えている。
俺がその場所に到着したとき、マグリールがその手記を手にするところであった。
その手記はアグナーの日記。モローウィンドの地からウダーフリクトを追ってきて、返り討ちに合うまでが書かれている。
ウダーフリクトの体内からは、アグナーの妻の遺体が出てきたりしたのも良い思い出だ。
なにしろあの時は、傍に緑娘が居てくれたからな……
死ね――!
あんたに罪は無いが、罪が無いからこそ、死ね。
文句があるなら、いずれ死後の世界で聞こう。
今は黙って、復讐戦の礎となれ。
こうして俺は、マグリールを殺して初めての罪も無い人間を殺すこととなった。
しかし、もしも闇の一党が接触してきて組織に潜入するとなれば、この先多くの罪も無い人間が殺されることとなるだろう。
そうなれば、マグリールはその中の一人でしかなくなるのだ。
俺は聞いたことがある。
一人を殺せばただの人殺しだが、多くを殺せば英雄だと――
そんなことを考えながら、俺は待った。
闇の一党が接触してくるのを……
………
……
…
「人殺しにしてはぐっすり眠るのだな、結構」
気が付くと眠っていたようで、誰かに肩を揺すられた俺は、目を覚ました。
「これから提案することを、晴れ渡った心で聞くといい」
俺は黙ったままでいた。こいつらと親しくするつもりは無い。
それに今は手を出さない。こいつ一人を倒したところで意味は無い。
盗賊ギルドの時と同じ、内部に潜入して一網打尽にしなければならないからな。
「そうして沈黙を好むのか? 私もだ、親愛なる子よ。沈黙とは、死のシンフォニー、シシス自身によるオーケストラのためにあるのではないか?」
彼の名前は、ルシエン・ラチャンス。
闇の信徒からスピーカーとして俺の元にやってきたと言う。
そしてその言葉は、ナイト・マザーの意思だと言ってきた。
本当に闇の一党は存在したんだ……
ナイト・マザーはずっと俺を見ていて、人を殺すところを見つめ、哀れみや後悔も無く命を絶ったことを称賛したそうだ。
当然だろう、これは復讐の一環なのだから、哀れみも後悔もない。
それを感じるのは、復讐を成就した後で十分だ。
そしてルシエンは、ある特殊な家族に加わるための機械について提案してきた。
俺は何も答えず、感情も極力顔に出さないようにしてルシエンを見つめていた。
彼は、どうやらこの俺が、シロディールの英雄でもアークメイジであることも気がついていないようだ。
「では良く聞くのだ。緑の道からブラヴィルの北に向かうところに、イル・オーメンという宿がある」
その宿なら知っている。
以前訪れたことがあって、何か地下に住んでいたルフィオというじいさんが、俺を見て怯えていたっけ?
その宿に何があるというのだろうか?
「お前はそこでルフィオという名の男に出会うだろう」
既に会ったことはある。
「彼を殺せ」
…………なるほど、確かに暗殺者集団だな。
理由とかそういうものはない。盗賊ギルドが盗むのを目的としたギルドなら、この闇の一党は殺すことを目的としたギルドなのだ。
これは盗賊ギルド以上に潰しておかなければならない組織だな。
俺が黙ったままでいると、ルシエンは一人言葉を続けた。
「それで闇の一党への加入の儀は完了となる」
罪亡き人を一人殺して接触を図り、さらに一人殺すことで仲間入りか。
一度は偶然やってしまった可能性もあるが、二度目は自分の意思で殺すということだろう。
もっとも俺は、最初からお前らに接触することで殺しを働いたのだがな。
「事を終え、次にお前が安全とみなせる場所で眠りに付けば、再びお前の前に姿を現すだろう。新たなる家族に対する親愛の態度でな」
そう言い残すと、ルシエンはダイビングロックのテント前から立ち去り、何処かへ消えたのであった。
緑娘よ、見つけたよ。
君の仇を……
きっと奴らを壊滅させて、君の恨みを晴らしてあげるさ。
闇の一党の末端から上層部まで、全て消し去ってみせるさ。
だから、もう少し待っていてくれ。
この仕事が終わったら、君の近くへ行ってもよいのだからな……
………
……
…