ダイビングロックの恐怖 ~ウダーフリクト~
「ダイビングロックという場所を知っているかしら?」
ラグダンフ卿の娘ログバト嬢は、別れ際にそんなことを尋ねてきた。
ダイビングロック、それはこの国シロデイールの北部に連なるジェラール山地にある名所だとか。
山の天辺から突き出た岩が目印だそうだ。
「あれだな」
「何か飛び出ているね」
ラグダンフ卿の屋敷を出てから北を眺めてみると、ログバト嬢の言うとおり突き出た岩が遠くに見えた。
折角ここまで来たのだから、ついでにそのダイビングロックとやらを近くで見てみよう。
そんな好奇心だけで、山の麓あたりまで行ってみたのだ。
「やあこんにちは!」
「アエリン野営地へようこそ。軽業の訓練でもしてあげようかな?」
「いえ、それはまたの機会に。ところでアエリンさん、ダイブロックについてですが――」
「ダイビングロックな。それに俺の名前はトルバーンだ」
「こほん……(。-`ω´-)」
それだったらトルバーン野営地にしろってんの、アエリンって誰だよ。ムジョルにつきまとう奴か? って誰だよムジョルって!
「ところでダイビングロックまで登ってみるのならやめときな。数日前にアンドレ・ラブーシって奴が出かけたっきり帰ってこない」
「神隠しでも起きているんかいな」
「とにかく気をつけることだ」
確かに登るのは大変そうだ。
しかし以前コロヴィア台地でコロヴィア山まで登ったことがあるのだ。今回も大丈夫だろう。
「って、誰か死んでいるな」
「さっきの人が言っていたアンドレじゃないかしら?」
「妙だな、アンドレにしては小柄すぎる」
「そのアンドレってどのくらいなの?」
「身長223cm、体重236kgぐらいのはずなのだがな」
「何よそれ、人間というより化け物といった方がいいじゃないの」
「まぁ一人と呼ぶには大きすぎるからな。だから二人と表現したほうが正しいだろう」
「それだと世界の人口の辻褄が合わないわ」
「――だな、たぶんポテト王国の王子様の方だということで」
「それどこよ?!」
そして彼は、何やら娘からの手紙を所持していた。
どうやらものすごく不器用で、階段を踊り場まで上ろうとするのすら大変なようだ。
何故山脈に登ろうとしたのか――、と。
それは簡単なことだ。昔の人も言っただろう?「そこに山があるから」と。
「どうやら最悪の事態となったようだな……(。-`ω´-)」
「それで、あなたは登るの?」
「そうだなぁ……」
「ここからは無理のようだな、さすがにこの絶壁は登れない」
「じゃあどうするの?」
「まぁ見てなって」
その場所から登るのは諦めて、そのまま西へと向かっていった。
これは自殺滝で学んだことだ、急がば回れ。どこかに登りやすい場所は、ある。
このように、西から回り込めばなだらかな地形になっているのだ。
ダイビングロックははるか後方になってしまったが、小さな滝と流れがあったりする。
この川に沿って登っていけば、それほど苦労はしそうにないな。
少なくともコロヴィア台地の岩山登りよりかは――
………
……
…
「また誰かが死んでいるな」
「やっぱりここは危ないんじゃないのかしら?」
「ここまで来て引き返せるか、あと少しだぞ」
山の途中で、再び誰かの遺体を発見して調査してみる。
登山家というよりは戦士のようだが、こんな所まで何を攻めていたのだろうか?」
「ちょっとラムリーザ危ない!」
「なななっ?!」
その時、突然何者かのうめき声があがり、振り向いた先には――
半透明の魔物?!(。-`ω´-)
すぐに対応する緑娘、いいぞ戦士ギルド、魔術師を護衛するのだ。
緑娘の蹴りが当たるということは、霊体ではない模様。
なんだろ、カモフラージュ機能かな?
しかしでかいな、こいがアンドレじゃないのかね?
――などと考察している場合ではない。
たぶん胸の辺りにめがけて霊峰の指改!
とまぁそんなこんなで、突然襲い掛かってきた謎の半透明怪物を退治したのであった。
「こいつは一体何なんだよ」
「幽霊にしては実体があるみたいだし、山の神様じゃないのかしら?」
「おや? 神を信じるようになったんだね」
「実物するのは信じるわ」
「それは危険だからやめておけ……(。-`ω´-)」
デイドラとか、デイドラな……
結局怪物が何なのかはわからないが、腹の中から氷の弓「フロスト・ワイアームの弓」とか出てきた。
さっきの戦士が持っていた武器かな?
それ以外に出てきた物はと言えば――
「ちょっと気味が悪いことしないでよ!」
「いや、何か入っているなと思って出してみたらこんなのだった」
「大体退治した魔物の腹を掻っ捌いて中身を取り出すって変!」
「人食い鮫の正体はこいつなのかな、と思ったらやっぱり出てきた。こいつが犯人だ、アミティ島の海水浴場は閉鎖だ!」
「わけわかんないこと言ってごまかさないでよ!」
………
……
…
そんなトラブルも生じたわけだが、先ほどの場所から東へ向かって登り続けたところ、ようやくそれらしき場所に到着した。
「ダイビング・ロックの上にテントや野営地があるなんてな」
「こんな危ない場所に、よく寝泊りする気になる人が居るものなのね」
「なんだろ、何か日記のようなものが転がっているぞ?」
「登山日記かしら?」
「こ、この日記は?!」
「な、何なの?!」
「夏休みの日記だ!(`・ω・´)」
「…………」
こほん……(。-`ω´-)
この日記は、シルスクの族長である不動なるアグナーという者が書いた物で、ウダーフリクトという魔物との戦いについて書き残されていた。
スヴェンジャという妻と一緒に魔物を退治しにここまでやってきたが、どうやら失敗したようだ。
彼女の持っていた氷の弓は、その肉体と一緒に魔物に丸呑みされてしまったらしい。
……ん?
氷の弓?
肉体?
「やっべ、さっきの奴がウダーフリクトという魔物だったらしい」
「それじゃあ傍で死んでいた人は?」
「彼が不動なるアグナーなんだろう。そして腹の中から出てきたのがスヴェンジャって人だ」
「もうやだ! 気味が悪い話ね!」
「ダイビング・ロックの恐怖とはよく言ったものだぜ……(。-`ω´-)」
魔物ウダーフリクト――
そしてこの高さの恐怖だぜ。
下から見たら突き出た岩なだけあって、眼下は断崖絶壁である。
ダイビングロックの恐怖とはよく言ったものだ。
「なんか貴族の娘を助けたり、回り道をして登ったり、魔物と戦っていたからすっかり日も暮れてしまったよ」
「しょうがないわね。このテント、丁度二人用の布団がしていあるからそこで寝ましょうよ」
「君もずいぶんと豪胆だな。魔物にやられたアグナーとスヴェンジャ夫婦が使っていたテントだぞ?」
「あたし達は勝ったから平気。それにあなたとは夫婦になるはずだったんだから」
「わかった。君が戦士ギルドのマスターになったら結婚しよう」
「回り道しすぎよ……」
まあよい。
寝相さえ悪くなければ、崖から転落することもないだろう。
少なくとも、ウダーフリクトの恐怖だけは無くなったのだからな。
それではお休み。
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