霊魂が宿りし場所 後編 ~ローグレンの呪い~

 
 アンヴィルでベルウィンから購入したベニラス邸は、幽霊の出る呪われた屋敷だった。
 今、その呪いを解くために、ベルウィンと共にベニラス邸へと向かっている。

 かつてベルウィンの祖父ローグレンは、魔法の研究を趣味とする風変わりな老人だった。
 いや、魔法の研究をしている人にこれまでたくさん出会ってきたのですが……、というかこの俺も、魔法を研究している(ことになっている)魔術師ギルドの準会員なんですが。
 しかし、死霊術という邪悪な魔法が記された魔法書に出会ったことが、ローグレンの運命を変えた。

 死霊術に取り付かれてしまったローグレンは、死霊術を使って寿命を延ばそうとし始めたのだ。
 それで、魔法書に記されていた黒魔術を実行するために、墓地から死体を掘り起こした。うん、それは日記に書いていた内容だね。
 しかしこのことが魔術師ギルドに知られたとき、ギルドはローグレンを抹殺したらしい。しかし、彼の死体は消えてしまっていた。
 そんな経緯があって、アンヴィルの住民はベニラス邸を呪われた屋敷と考え、誰も近寄らなかったんだとさ。
 
「アリーレさん、なんであんな屋敷を進めたのですか? ――と、ベルウィンが言っていますよ」
 疑問形にならないように、ちと苦しいがベルウィンが言ったことにしておく。
「あなたなら呪いを解いて、全てを終わらせてくれるかもとでも期待していたのですよ――、とベルウィンが言っていますよ」
「いや、俺はアリーレさんの意見が聞きたいのですが? ――と、ベルウィンが言っていますよ」
「私もベルウィンも、同じ意見です――、とベルウィンが言っていますよ」
 いかん、たぶん今回は全てベルウィンの意見と考えになってしまう……(。-`ω´-)
 

 早速屋敷の地下へと向かったが、そこも幽霊でいっぱいだった。
 ローグレンが拾ってきた死体が、全て幽霊になってしまったんだろうなぁ。
 幽霊は、バトルメイジのアリーレさんが全て片付けてくれるので楽だが、これがアリーレさんの言う「お掃除」なのだったら、屋敷を取られてしまう。
 まいっか、欲しけりゃやる。俺はコロルかシェイディンハルに家を買って、そこを本拠地にする。

 地下の一番奥には魔方陣が書き込まれており、ベルウィンは壁をいじくっている。
 その奥に何かがあるのか? 黒いどろどろとした液体の入った井戸が隠されているんじゃないだろうな?
 
 しばらくすると、封印が解けたようで、奥に通じる道が現れた。

 しかしベルウィンは逃げ出してしまった。まあいいか、後は自分でなんとかしよう。
「そうだ、チルレンドあげる。俺は使わないし、戦ってくれるのはアリーレさんだから――、とベルウィンが言っていることにしないとダメですか? ――、とベルウィンが言っていますよ」
 謎の会話ルールが存在するのか尋ねようとしたが、そうすれば疑問形になってしまうので、結果意味不明の言葉になってしまった……(。-`ω´-)
「魔法剣ね、ありがとう。さっそく使わせてもらうわ――、とベルウィンが言っていますよ」
 いや、ベルウィンはもういねーし。
 

 地下室の奥には、祭壇のようになっている部分があり、そこに骨が横たわってた。
 動き回る骨が居る世界だ、今更横たわった骨を見たぐらいでは驚かない。
 
「私はローグレン・ベニラス。私が犯した罪を何とかして償いたいのです」
 
 これにはびっくりした。骨が話しかけてきた!
 骨、ローグレンはアンヴィルの人々にした事を詫び、成仏するために手を身体に戻して欲しいと言ってきた。
 手?
 ああ、一階の壷で日誌と一緒に見つけた骨の手のことね。

 確かに片手がなくなっている。
 俺は、拾ってきた骨の手を、そっと側へ置いた。
 
「ふははは、お前のおかげで私は完全体となった。不死への昇華ができたぞ!」
 

 次の瞬間、祭壇の上の骨に火がついて、幽体化したローグレンが襲い掛かってきた!
 こいつの手助けをしてしまったようだが、こいつの骨があるかぎり屋敷の平穏は得られない。

 この際、禍根を断つために、ここでやっつけてけりをつけようじゃないか。
 ローグレンが骨を召喚したり、アリーレさんが骨を召喚したり、骨が骨で骨だらけで骨骨ロックだが、ここで負けるわけにはいかない!

 最後に勝つ、そして「お掃除」の仕上げも頂き! 必殺霊峰の指!
 
 というわけで、ローグレンの野望を打ち砕き、これにてベニラス邸は呪いから開放されたのだった。
 
 
「顛末をベルウィンに話すべき――」
「――とベルウィンが言っていますか?」
「そうね、いってらっしゃい」

 アリーレさんに送り出されて、俺はベルウィンの居るカウンツ・アームズの宿屋へと向かった。
 ベルウィンは、逃げ出してしまったことを詫び、屋敷から呪いが解けたことを喜んでくれた。
「あの屋敷が君に末永い幸福を与えてくれますように」
 そう言い残して、ベルウィンは帝都へと旅立ってしまった。
 
 めでたしめで――
 
 

「屋敷の掃除はしておいたわ、これでこの屋敷は私のものね」
「…………(。-`ω´-)」
 
 ――たしでいいよもう。やる、この屋敷。
 
 
 アンヴィルクエスト 霊魂が宿りし場所 ~完~
 
 
 
 




 
 
 前の話へ目次に戻る次の話へ

Posted by ラムリーザ