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崩れる目覚め ~壁怖い症候群~

 
 えーと、シェオゴラスに『めっ』するためにニュー・シェオスに向かい、マニック派地区ブリスに到着したところだ。
 難癖乞食亭で一休みしたところで、再び町に出て人々の話に耳を傾けることにした。
 

 なんか妙なのが居るな。
 いや、この妙さがこの世界では普通なのだがな。
 その男は、何かに怯えるように身をかがめているのであった。
 
「なんしょん?」
「やぁ……、気にしないで。壁が危険で、家で眠れないんだ」
「壁が危険? デモンズ・ウォールでも出たか?」
「そうなんだよ、クラッシュダウンで――じゃなくて! 気付かない? 気付けないの? よく平然と歩いてられるね!」
「なら外で寝たらいいじゃないか。町から外に出て、好きなところで寝るがよい」
「それは名案だ! でもどこで寝ればいいの? 寝床が要るよ」
「適当にどっかのキャンプで――ってヘレティックに襲われるか」
 
 なんだかよくわからないが、アミアブルと名乗った男から、壁が近くに無い安全な寝床を探してくれと頼まれてしまった。
 街道を歩けば、キャンプ場とかいろいろあるけど、どうせこの人の場合、モンスターやヘレティックに襲われたら勝てないのだろうな。
 そこで、安全な外の寝床を見つけて欲しいということになったのだ。
 

「オーリンサル殿、安全な外の寝床はご存知ですか?」
「んん? ここから近くだと、ランオフ・キャンプかね? ニュー・シェオスの外、西側に行った場所にあるぞ」
「ん~、元暗殺者だから、そんな場所に行っても平気なのだろうが……」
「それよりもだ! 俺の左腕は、実は右腕より1インチ長いって知っているか?」
「ぎっちょなんだね」
「それが重要になるかはわからんがな」
「俺も知らんわ。ボクサーにでも――って、1インチのリーチで劇的に有利になるもんかね?」
 
 オーリンサルに聞いても、もっともではあるが、非戦闘員にとっては無理のある答えしか返ってこなかった。
 
 
「ん~、君はどう思う? 外で寝るなんて――ってキャンプで一緒に寝た仲か」
 
 緑娘にも聞いてみたが、彼女とはホープフル・キャンプで甘い夜を過ごした仲だ。
 オーリンサルと同じ意見だろうな。
 
「なによそれ、物乞いみたい」
「俺と君の初夜は物乞いの住居だったのな。――ってそれも手だな」
 
 それぞれの町には、盗賊ギルドの斥候という名の物乞いが住み着いている。
 この世界にも盗賊ギルドが存在するのかわからんし、グレイ・フォックスは既に伝説となった後だからどうでもいいことだが、俺たちはブリスで乞食を探すのであった。
 

 そこで俺は、ウンゴルと名乗った物乞いに、南の門近くで出会ったのであった。
 なんでも彼は、ベッドで寝たがっているらしい。物乞いのくせに生意気な奴だ。
 だったら、こいつとアミアブルとで寝床を交換したらよいのでは?
 
「君の寝床を教えてくれないかな?」
「なんであんたに教えなくちゃならんのだ?」
「もっともな質問だ……(。-`ω´-)」
 
 世の中には、寝室を見られるのを嫌がる人も居る。
 無理に他人の寝室を見ようとするのは、失礼に値するかもしれないから気を付けような。
 

 もう一人の物乞いも居るようだ。
 フィミオンという名前らしいが、代わりに彼に頼むとするか。
 
「どうだろう、外で寝るための寝床を知っているかな?」
「それならいい考えがあるアルよ。でもまずは、フィミオンにスイートロールを。スイートロールをフィミオンに。そしたらアイデアは君の物アルよ。すうぃーとるぉぉるぅ!」
 
 何が巻き舌でスイートロールだ。
 しかしどうやら、スイートロールを持ってこないと、情報を教えてくれないそうだ。
 しょうがないな、宿屋か雑貨屋で買ってくるか。
 
 

 俺は、コモン・トレジャーの店で、スイートロールを売っているのをみつけたのであった。
 
「このスイートロールをくれ」
「はい、1Gよ」
「1Gのお菓子も買えないとは、いよいよ物乞いだな……(。-`ω´-)」
 
 何度も言うが、そもそも数Gなどは、町中の樽にでも時々入っているのだ。
 それを集めるだけでも、食べ物など何でも買えるはずなのだ。
 その程度の労力さえ惜しむから、物乞いは物乞いなのだよ。
 
 ――いや、物乞いと言うのは世を欺く姿で、その実態は盗賊ギルドの斥候か。
 しかしシロディールならともかく、こっちの世界でそれってどうなのだ?
 
 それと、ついでに見慣れない錬金素材も売ってあったので、それも購入しておく。
 とにかくスイートロールを買って雑貨屋を出たところ――
 

「当ててやろうか? 誰かにスイート・ロールを持ってこいと言われたかな?」
「知らんよ、知らんよ」
「いいことを教えてやろう、定命の者よ。シェオゴラス様のお創りになられたワバジャックには、稀に対象をスイートロールに変えると聞く」
「は、はあ……」
 
 何だよ、妙にスイートロールを気にする衛兵(戦慄の島版)だなぁ……
 俺は衛兵にスイートロールを盗まれていないか、手元を再確認するのであった。
 そう言えばシェオゴラスにそそのかされて村に災厄を引き起こした報酬が、ワバジャックという杖だったかな。
 
 
「フィミオンにスイートロール! ごちそうさま! それじゃあ悩みを聞いてあげるアルよ。フィミオン悩み相談室アルよ」
「んじゃ、安全な外の寝床を教えてちょ」
「ウンゴルだねー。正常と自称している、でも異常。ウンゴル去れば、彼は眠れるアルよ。でも本当に出ていくとは思えないアル」
「そのぐらい思いついたが、奴は教えてくれないんだよ」
「この『幸運のぶどう』無いと、彼動かないアル。これ食べられない、彼に返してくるアルよ」
「話が見えんぞ」
「それでも駄目なら、炎の魔法で丸焼きにするアルよ。ビッグなスイートロール食べられるアルよ。すうぃーとるぉぉるぅ!」
 
 フィミオンはウンゴルのことを異常と言うが、こいつ自体も異常であると言える。
 俺は安全な外の寝床を要求したのに、手にあるのは幸運のぶどうと称するガラス製のブドウが一房のみ。
 どうしてこうなった――?(。-`ω´-)
 

「それで、これが幸運のぶどうアルよ」
「ふ~ん、あまり美しくないね。ウンゴルにあげちゃいなさいよ、それで教えてもらうのよ」
「そうするアルか」
「何か変なしゃべり方になってる」
「……(。-`ω´-)」
 
 俺は流行に流されやすいという性質は無いアルよ。
 無い有るよ、どっちやねん!
 

「ほらウンゴリム! 幸運のぶどうをやるから安全な外の寝床を提供するんだ」
「オラはウンゴルな」
 
 おっと、ウンゴリムは闇の一党のリスナーだったな。
 俺がマシウの偽の指令所に従って始末した。
 
 ウンゴルは、幸運のぶどうが戻ってきたのをすごく喜んでくれた。
 どうやらフィミオンが食べようとして盗んだと疑っていたのだが、確証が取れなくて追及できなかったそうだ。
 すっかり気をよくしたウンゴルは、俺の提案したアミアブルとの寝床交換に、快く応じてくれた。
 こいつは乞食のくせに野宿はもうこりごりだと言ってきた。だから喜んで寝床を交換すると。
 
 

「こら、アミアブル」
 
 ツッパリ二人組がカツアゲしている場面ちゃうで。
 こいつが勝手に壁を恐れて丸まっているだけだ。
 
「あっ、安全な寝床は見つかったのですか?!」
「物乞いのウンゴルと寝床を交換したらよかろう。奴は、安全な場所でいつも野宿しているぞ」
「ほんと? 安全なんだね?! でもいい考えだ、完璧だよ!」
 
 まぁ蓼食う虫も好き好きという言葉がある。
 野宿を進んでやりたいと言うなら、好きなだけ野宿をさせてやろう。
 妙な奴だなと思うが、この世界ではこれが普通なのだ。
 いちいち驚いていては身が持たないというのである。
 
 
 こうして、壁が怖くて夜も眠れぬと言う変わった奴を助けてやったのであった。
 ちなみにお礼として、腕力と耐久力と防御力が大幅に増幅する魔術が込められた巻物をお礼にもらったりする。
 なんでも、壁が壊れて生き埋めになった時に使うつもりだったのさ。
 
 
 ――ってかよく考えたら、こいつもパラノイアの一種じゃねーのか?!(。-`ω´-)
 
 
 
 
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©発行年-2021 らむのゲーム日記