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死にゆく君に口づけを ~急転~

 
 ノルナルの遺跡にて――
 

 次の報酬と指令書は、ノルナルの遺跡という場所にあるらしい。
 その遺跡の場所は、地図で言えばヴァーミルナの祭殿よりも南、アルクヴェドの塔よりも少し南に行った所にあるアイレイドの遺跡だ。
 前回の指令書によれば、この遺跡の水没した場所に、水に沈んだ宝箱があり、その中に入っているというのだ。
 

 そして指令書は、遺跡に入ってすぐ右に行った場所にあったのだ。 
 第七の指令書によると、次の標的はブラヴィルの街に住むウンゴリムという名のウッドエルフ、グラアシア人だ。
 ウンゴリムは、ブラヴィルにある幸運の老婦人像としても知られる古代の像を訪れ、必死にある娘への愛を嘆願しているというのだ。
 しかしその娘は既に結婚しており、彼女の夫は妻に対するウンゴリムの執着を知った。
 そして争いを恐れた夫は、闇の一党を頼ってウンゴリムを消してしまおうと考えたわけだ。
 
 どうも痴情の縺れが多いな、結婚の話とか。
 夫婦関係が上手く行かなくなれば相方を殺してしまおうとか、寝取られるのを恐れるぐらいなら消してしまえとか。
 花嫁を裏切ったジ=ガスタ然り、奥さんを放置したアルヴァル然り、既婚者を寝取ろうと考えるウンゴリム然り。
 
 まあいいか、俺は任務を黙々とこなすだけだ。
 
 さてウンゴリムだが、彼はブラヴィルに家を構えている。
 しかし指令書では、家の中では殺さずに、夜の六時から一時までの間に幸運の老婦人像の前に居るところを抹殺することを勧めてきた。
 寝こみを襲う方が楽なのだが、始末方法を指定してくるのは何か意味があるのだろう。
 例えば以前の任務だが、例えば直接始末するのではなくて事故と見せかけたり、薬を毒薬にすり替えて毒殺されたようにしろと始末方法を指定してきたことがあった。
 その類の事なのだろうね。
 

 ちなみにノルナルの遺跡。
 ちょっと奥を覗いてみたが、野盗の住処となっていた。
 めんどくさいので、引き返して任務を遂行することにする。
 緑娘と一緒に遺跡探検なら喜んでやるが、わざわざ一人で無用なことをやろうとは思わない。
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
 ブラヴィルにて――
 

 夜を待って幸運の老婦人像の場所を覗いてみると、一人のグラアシア人が前に立ち尽くしていた。
 幸運の老婦人像が何かはわからなかったが、ブラヴィルにある像といえばこれである。おそらくあれが幸運の老婦人像なのだろう。
 

 指令書によれば、ウンゴリムは恐るべき射手であり、敵に対して恐れを知らぬ者らしい。
 まともに正面からやり合えば、魔法と矢の打ち合いになること必至だ。
 

 だから俺は、奴に気取られることないようにある程度距離を置き、遠距離攻撃で始末することにした。
 
 問題は衛兵だ。
 あいつらは反乱者を自分で殺しておきながら「問題でもありましたか」と他人事みたいな態度を取る。
 しかし俺がパンの一つでも他人から奪えば、顔を真っ赤にして逮捕しに来る困った奴だ。
 当然ここでウンゴリム殺害を行えば、十中八九怒鳴り込んでくるだろう。
 
 だから俺は、衛兵の巡回航路を確認して、幸運の老婦人像の近くに誰も居ないタイミングを計った。
 そして使う魔法も選別する。
 霊峰の指改はドーンとうるさいので、さらに高圧縮してプラズマ状となったものを使用する。
 これで衛兵に見つかることも無く、確実にウンゴリムをしとめる事ができるだろう。
 

 恐るべき射手ウンゴリム、デリート完了!
 衛兵にも、ばれていな――
 
「しまった! くそ、遅すぎたか!」
「何もしてませんっ!」
 

 衛兵に見つかったのかと思って、思わずビックリして言い逃れをしようとしてしまう。
 しかし振り返った場所に居たのは、ルシエン・ラシャンス?
 
「ここに間に合うんじゃないかと、お前を止められるのではないかと考えていたが!」
 
 ルシエンは、かなり切羽詰ったような表情で、俺に詰め寄ってくる。
 これまでに見た、ふてぶてしいまでの落ち着いた態度はどこに行った?
 
「シシスの名において、お前は何をやった? どんな狂気がお前を求めたというのだ? お前は私を裏切った、闇の一党を裏切ったのだ! 一体なぜだ?!」
 
 寝耳に水とはまさにこのことだ。
 俺は指令書に従って行動していたはずだ。
 なぜそれが裏切りに繋がるのだ?
 やはり最初からこの復讐計画はバレていて、俺はハメられていたのか?!
 
「そもそもそのローブをお前に与えていない。なぜ着ている!」
「指令に従ってジ=ガスタを始末したとき、奴が戦利品として持っていたのを奪い取っただけだ」
「それが違うと言うのだ!」
「話が見えんぞ、いったい何の話なんだ?!」
「最初の秘密の指令書に従い、お前はセレデインを始末した。それからお前は、ドラコニス一家を始末した、命令どおりにな」
「そうですよ、それのどこに問題があるのですか?」
 
 俺も饒舌になったものだ。
 しかし闇の一党内部でなにかとんでもないことが起こり始めているのがわかっていたため、気分が高揚しているのかもしれない。
 気味の悪い違和感、その原因が何であるのか――
 
「裏切りはその後からだ! 指令の隠し場所にお前は来なくなり、標的は無視されたままとなった。それに代わって、お前は計画的にブラックハンドの全てのメンバーを殺害し続けたのだ!」
 

 ――やはりそうか。
 指令書の紙質が変わったという細かいところ、始末対象のターゲットが闇の一党五教義やローブを所持していたこと。
 違和感の正体は、やはりそういうことであったか。
 
 どうやら生き残りのブラックハンドのメンバー達は、俺がただ命令に従っていたという事を知っているらしい。
 だから彼らが裏切り者だと思い込んだのは、このルシエンのことらしい。
 なんだかよくわからないが、面白いことになってきたぞ。これからどう出る、闇の一党よ。
 俺はまくし立てるルシエンの姿を、何も話さずに他人事のように聞いていた。
 
 裏切り者は、何らかの方法でルシエンからの指令書をすり替えて、偽の隠し場所へと俺を向かわせていたのだ。
 ルシエンにしたら一杯食わされたという感じだろうが、俺にとっては仲間に疑われること無く闇の一党幹部をこの手で始末し続けられたということだ、良い事です。
 それに裏切者が居るという事がこれではっきりとした。
 その裏切り者は果たして俺の味方となってくれるのだろうか?
 闇の一党を壊滅させたいという利害だけは一致しているが……
 
「聞いているのかサイレンサー・レイジィよ! この背信行為の背後に誰が居るのか突き止めねばならん!」
「もっともなことです」
「だが我々にはあまり時間が無い……、私は昼夜問わずブラックハンドから追われている。奴らは私を亡き者にせんと欲しているのだ」
 
 俺も実はあんたを亡き者にせんと欲しています。
 このまま放置して内部抗争に発展して、闇の一党を自滅させるのも手だ。
 しかしこの一件に関しては他人任せにはしたくない。緑娘の仇は、俺自身の手で打ちたいものだ。
 だから俺は、もう少しルシエンに付いてみせることにした。
 
「では、俺はいったい何をすれば良いのですか?」
「お前は今すぐに次の連絡の隠し場所へ行くのだ。そして待ち伏せをしてその偽の契約書を置いた者と対峙するのだ!」
「裏切り者の正体を突き止めるのですね」
「そうだ。相手がわかれば私に伝えに来るのだ。ファラガット砦はもはや安全ではない、アップルウォッチでお前を待つ」
「わかりました」
「我々全ての者に、シシスの加護があらんことを!」
 
 そう言うと、ルシエンはものすごい勢いでこの場を立ち去った。
 後に残されたのは――
 

 ――勝利の日が近いことを確信して、ほくそ笑む復讐者のみであった。
 
 裏切り者の次に指定した場所は、アンヴィルの町。
 いったいどんな奴が裏切り者なのか。
 何度も言うが、面白いことになってきたぞ。
 

 幸運の老婦人像よ、願わくば俺の進む道を照らしたまへ。
 そして願わくば、可能なら裏切り者と呼ばれるものと平和的に会えることを――
 
 
 
 
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