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手がかりを辿って 前編 ~似た者同士~

 
 アンヴィルにて――
 

 次の報酬と指令書は、アンヴィルにある人魚像を飾っている池、その裏側にある樽に隠されているらしい。
 確かに像の奥、城壁の傍に樽が一つある。あの中に、指令書が入っているはずだ。
 

 第八の指令書によると、次の標的はアルクェンという名のハイエルフの売春婦。七つの大罪のうち一つ、肉欲を罰せよということだろうか。
 居場所は不明だが、コロールのグレイ・メア亭か、シェイディンハルの橋という宿で聞き込みをすればよいらしい。
 そしてそのアルクェンという者は熟練した戦士であり、容易には抹殺できないというのだ。売春婦のくせに熟練した戦士とはいかに?
 
 そうだろうな……
 

 これは偽の指令書である。
 前回の依頼を済ませた後に現れたルシエンは、我々が罠に嵌められていて、途中から闇の一党の幹部を始末して回っていたということに気づかされた。
 そこでルシエンより、待ち伏せをしてその偽の契約書を置いた者と対峙するよう命じられているのである。
 
 そして俺は待った――
 
 昨夜早くにウンゴリムをしとめてから、大急ぎでアンヴィルへと向かい、指令書を受け取ってからずっと待っていた。
 これまでは指令書を受け取ると、すぐに行動を起こしていたものだ。
 しかしその指令を無視してこうしてのんびりとしていると、ひょっとしたら依頼主が様子を見にくるかもしれない。
 
 だがどうだろうか?
 依頼主は、ルシエンになりきっているつもりだ。
 そう簡単に俺の前に姿を現すのだろうか?
 向こうに焦りが生まれたら、なんらかのリアクションは返ってくると思うのだが……
 
 だから俺は、待ち続けた。根競べだ。
 もしも動かなければ、指令書の偽造がばれたのかもと思い、証拠隠滅のために俺を消しにくる可能性もある。
 なんでもいいのだ。何か起これば、あとは高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処してやる自信はあるのだ。
 
 
 ………
 ……
 …
 
 

 結局夜が明けてしまったよ。
 俺は一晩中、池の中にそびえたつ人魚像の前で過ごしたことになる。
 やはり誰も現れないのか――
 
「もし、ルシエンの使いのものだが、指令書は受け取ったのかね?」
 

 来た――!
 
「受け取ったが、ちょっと気が乗らないのでこうして気分転換しているのだよ。その気になったらすぐにコロールで情報収集をするさ。ルシエンにはそう伝えておいてくれ、問題なんてナインだと」
「そうか、それを聞いて安心したぞ。それでは――ってお、お前は――っ」
「なんぞ?」
「アークメイジのラムリーザ! シロディールの英雄ラムリーザじゃないか!」
 
 しまった、身元がバレた!
 というより、待っている間フードがうっとうしくて取っていたのを忘れていた。
 こいつは俺の顔を、いや、シロディールの住民なら、たいていの者は俺の顔を知っている。
 
「ばれてしまったのなら仕方が無いな、申し訳ないが口封じをさせてもらう。まだ闇の一党に俺の素性を知られるわけにはいかんのでな」
 

「まっ、待ってくれ!」
「それに俺は知っているのだよ、君が闇の一党の裏切り者であることを――」
「くっ――」
 
 否定しないということは、こいつが裏切り者で当たりということだろう。
 ということは、俺の仲間になる可能性を秘めた奴でもあるということだ。
 だから俺は、情けをかけてやることにした。
 
「殺すのはいつでもできる。ただ何故裏切ったのか、それだけは聞いてやろう。内容次第では命だけは助けてやってもよいぞ。それとも俺をやつけてこの窮地を乗り切るかな?」
「む、無理だ。アークメイジでシロディールの英雄に僕が敵うはずがない」
「ならば答えろ、なぜ闇の一党を裏切った!」
 
 少し語気を強めに脅してやると、その裏切り者は自分の境遇をベラベラと語りだしたのだ。
 こいつの言い分は、簡単に言えば復讐だった。
 闇の一党に母親を殺されたことを恨んで、その復讐を遂げる為に闇の一党に潜入したのだと。ナイト・マザーとやらが誰であるのかを見つけ出して、闇の一党に復讐するために。
 それからはいろいろと功績を積んで、今の俺と同じサイレンサーまで登り詰めたのだ。
 そこから、この裏切り者も復讐に本格的に乗り出した。マリア、ブランチャードという者を始末したまではよいが、そこでルシエンに裏切り者の存在を感づかれてしまい、身動きが取れなくなったと。
 そこでこいつは別の手段にでたのだ。
 丁度その頃、闇の一党にかなりの野心家が現れた。彼はどんどんと任務をこなし、あっという間にサイレンサーまで駆け上がった。つまり、俺のことだ。
 それからは、俺が実際に体験して来たことだ。
 こいつは偽の指令書をすり替えることで、俺に闇の一党の幹部を殺しに向かわせることに成功したのだ。
 
 全ては、母親を殺したルシエンに復讐する為に――
 
「そうか、それは気の毒なこったな」
「お前らが悪いんだ……。お前らは僕の母を殺し、僕の人生を破滅させた! だからお前らの全てを破壊してやりたかったよ! ナイト・マザーもな!」
 
 俺は何も答えなかった。
 こいつの境遇は、俺とそっくりじゃないか。
 愛する者を理不尽にも奪われたとき、人は正気を保っていられるだろうか?
 復讐では全ては解決しない。しかし復讐を企てるのは間違っていると言えるだろうか?
 平和で暢気に暮らしている奴は、犠牲者は復讐など望んでいない、と奇麗事を言うだろう。
 一度愛する者を理不尽に殺されてからも、それが言えるか? というものだ。
 
「そ……、それで……、なぜアークメイジで英雄の君が闇の一党なんかに――?」
 
 俺が黙ったままで居ると、その裏切り者は俺に問いかけてきた。
 
「聞きたいか?」
「僕はもう覚悟はできた。だが最後に聞かせてくれ、僕も語ったんだ」
「それならまずはフードを取って顔を見せろ。そして名を名乗れ」
 

「ぼ、僕はマシウ・ベラモントだ」
「ほう、マシウね」
「なぜ英雄の君が、闇の一党に手を貸しているんだ?!」
「好きで手を貸していると思うか?」
「えっ?」
 
 マシウの顔をじっと睨みつけると、彼は一瞬怯みあがる。
 覚悟はしているが、やはり自分が殺されるとなると怖いのだろう。
 
「君は戦士ギルドのマスターを知っているか?」
「き、聞いたことはある。ヴィレナ・ドントンだったが、最近は代替わりしてソニア・ルミナスという者がついているはずだ。妙に扇情的で目のやり場に困ったような……」
「それなら話は早いな」
「でも彼女は、いつもアークメイジの傍に――。あれ? 彼女は何処だ? 一緒に居ないのか?」
「ここには居ないよ」
「彼女も一緒に闇の一党に加わったのか?」
「違うな。彼女は、闇の一党に殺された――」
 
 この事実に言葉を失うマシウ。
 二人の間に、少しの間沈黙の風が吹いていた。
 
「俺は彼女を愛していた。その彼女を無残にも殺した闇の一党が許せない。だから潜入して登り詰めて、頂点から潰すことにしたんだ」
 
 マシウは何も言わない。
 驚いたような顔で、じっと俺の顔を見ていた。
 
「末端構成員を殺しても意味が無いからな。だからルシエンから信頼を得て、闇の一党の全貌を知ろうとしているのだ」
「ぼっ、僕は知っているよ! 幹部にあと誰が残っているか」
「丁度いいな、伺おうか」
 
 そしてマシウは、闇の一党の幹部について語りだした。
 まずはリスナー、聞こえし者のウンゴリム。彼がナイト・マザーからの依頼を聞き届ける。
 そして五人のスピーカー、伝えし者がルシエン、アルクェン、ジ=ガスタ、アルヴァル、ベリサリアスの五人。リスナーが聞いた内容を、サイレンサーに伝える。
 そして五人のサイレンサー、奪いし者がベイナス、シャリーズ、ハヴィルステイン、そしてここにいるマシウと俺の五人。暗殺の実行者だ。
 
 既に五人は俺の手によって始末されたので、残っているのはマシウと俺を除いてルシエン、アルクェン、ベリサリアス、ベイナスの四人だけだ。
 奴らを始末できれば、タムリエルから闇の一党は姿を消してしまうことになるわけだ。
 あとはナイト・マザーとシシスの二人。こいつらに関しては、存在が曖昧である。
 
 全てがわかったところで、俺はマシウに提案を持ちかけてみた。
 情報をつかんだので、もはや闇の一党壊滅に向けてこいつは必要ではない。
 だが――
 
「俺は恋人を殺されたから、闇の一党に復讐を誓った。君は母親を殺されたから、闇の一党に復讐を誓った」
「うん……」
「俺たちは、似た者同士だと思わないかい?」
 
 俺の言葉を聞いたとき、明らかにマシウの顔がぱあっと輝いたように見えた。
 うまくいきそうか? もう一押ししてみるか?
 
「俺たち、違った出会い方をしていたら、友人になれたかな?」
「アークメイジよ! 僕にも手伝わせてくれ! 僕も闇の一党なんか壊滅してしまえと思っているんだ!」
「声がでかい」
「あっ――、ごめんよ」
 
 あっさりと落ちたな、マシウも寂しかったのかもしれないね。
 やはり裏切り者は仲間だった。敵の敵は味方とよく言うではないか。
 でも仲間が居るのと居ないのとでは全然違う。
 
「それで、マシウ――、呼びにくいからマシューと呼ぶぞ。マシューはこれからどうするんだ?」
「僕はルシエンだけは自分の手で始末したいと思っているんだ。でも奴はファラガット砦から消えてしまった。どうやら疑いを持たれたのに感づいて、身を潜めてしまったようなんだ」
「奴ならアップルウォッチに潜んでいるぞ。俺はお前を始末して、そこに報告に向かうのが本来の任務だったんだからな」
「お、脅かさないでくださいよ。アップルウォッチに奴が居るのですね」
「そうだ。それでどうする?」
「僕はみんなにそれを伝えて奴を始末しに向かう。だから君も、アルクェンの始末に向かってくれ。奴にだけは僕は声を掛けない、うまくいけば敵はあと二人になるんだ。アルクェンはそのぉ、一番強くて……」
「つまり、偽の指令書に従えということだな」
「頼むよ、闇の一党壊滅のために」
「そうだな、闇の一党壊滅のために」
 
 俺はマシウと握りこぶしをぶつけ合った。
 闇の一党が壊滅するまで同盟を誓う、そういうことだ。
 

 そしてマシウは、アップルウォッチ目指して駆け出した。
 去り際に、ルシエン・ラシャンスは死ねとだけ言い残して――
 
 
 ルシエンよ、これでさらばだな。
 もしもマシウがルシエンに返り討ちにされるのなら、その時は同盟破棄だ。
 俺に頼らずに幹部の一人を始末できないような奴と組んでも、何の益も無いからな。
 いや待てよ、あいつはみんなに伝えるとか言っていたな。一人で挑む気はないのか。
 まあいいや。
 
 
 物語は新たな展開を迎えようとしている!
 
 
 
 
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©発行年-2020 らむのゲーム日記