home > 投稿 > > 皇帝無き世にて ~仇は誰だ?~

皇帝無き世にて ~仇は誰だ?~

 
 深遠の暁教団が、オブリビオン・ゲートを使ってメエルーンズ・デイゴンを呼び出し、タムリエルを支配しようとした戦いがあった。
 皇帝ユリエルの暗殺から始まった動乱は、やがてシロディール中を巻き込んだ争いへと発展していく。
 ついには帝都にデイゴンが降臨し、帝国は完全に滅亡寸前まで持っていかれたのである。
 しかし、皇帝の隠し子であるマーテイン・セプティムの活躍により、この動乱は終焉を迎える。
 マーティンは、王者のアミュレットを使い、自らをアカトシュの化身とし、デイゴンをオブリビオンの世界へと追いやったのだ。
 
 この戦いを、人はオブリビオンの動乱と呼んだ――
 
 
 自らを犠牲にすることで、タムリエルを救ったマーティン。
 しかし残されたのは、皇帝無き世であった。
 
 帝国の元老院議長であるオカトー大議長は、この苦難の時代を切り抜くべく、新たな後継者を考えていた。
 セプティムの血は途絶えてしまったが、帝国を存続させるには、皆が納得する者を担ぎ上げていかなければならない。
 
 オカトー大議長は、その候補としてシロディールの守護者と呼ばれるものを挙げた。
 その者は、クヴァッチの英雄にしてマーティンの友。彼ならシロディールの臣民も納得するはずであった。
 もっともその者は、グレイ・プリンスを打倒したグランドチャンピオンとしての名声が強かったりするのだが、それはそれでよい。
 臣民は、クヴァッチに再建されたアリーナの新チャンピオンの存在も知っていて、その二人が戦う二冠統一戦を待ち望んでいたりした。
 
 しかし彼は、オカトーの要望を断わると、白金の塔から姿を消してしまった。
 
「俺にはまだやるべきことがある」
 
 そう言い残して――
 
 
 
 

第五章 前編 ダーク・ブラザーフッド

 
 
 
 俺の名前はラムリーザ、人はシロディールの守護者と呼ぶ。
 先程オカトー大議長に白金の塔にある元老院の大会議場に呼ばれ、マーティン無き帝国を代わりに守って欲しい。そして導いて欲しいと願われた。
 しかし、俺はその依頼を拒否した。皇帝の座など、俺の肩には重過ぎる。
 そして何よりも、自分の愛する者すら守れないような奴が、大きな国など守れるはずがないからな。
 
 

 俺は、オブリビオンの動乱から数日過ぎ気持ちが落ち着いてきたところで行動に出た。
 向かう先は、レヤウィンにあるブラックウッド商会。
 かつて戦士ギルドの商売敵として卑劣なことをやっていたこの商会を、壊滅させたことがあった。
 しかし、その残党がしぶとく残っていて、俺達に復讐してきたのだ。相変わらず卑劣な手で。
 
 だから俺は、今のうちに残党狩りをして徹底的につぶしておくことにした。
 別に誰かに頼まれたわけではない。
 ただの仇討ちなのだ。
 

 ブラックウッド商会の建物に飛び込み、魔力を高める。
 奴らは俺の姿を見るなり容赦なく襲い掛かってくると思われるから、先制攻撃で叩いてやるのだ。
 
 しかし、建物の中には人が住み着いているような気配は無かった。
 

 多少焦げ臭い匂いがするのは、地下にあるヒストの木を焼いた名残だろうか?
 しかしそれ以外には何も無い。
 壁には蜘蛛の巣だらけ、床は誇りが積もっていて、人が住んでいるような感じはしなかった。
 あの日、ブラックウッド商会へ最後の戦いを挑んだ日から、この建物の中は時間が止まっているようでもあった。
 
「ここには何も無いぞ」
 
 ふいに、部屋の奥から声が聞こえた。
 やはり残党は残っていたか。
 

 そいつは、薄暗い部屋の中で一人酒を飲んでいた。
 
「お前はブラックウッド商会の者だな?」
「ああ、かつては商会の者だった。だが今は、違う」
「何を言っているのだ? 戦士ギルドに復讐戦を仕掛けてきたのだろ?」
「そんな力は残っていない。頭目のリザカールは死んだ、副長のジャファジールも死んだ。商会の力の源であったヒストを守るポエマーズも死に、ヒストも焼き払われた。元商会に居たもので、生き残っているのは俺だけだ」
「そうか、ならばお前にも死んでもらおう」
 

 俺はここに残っていた男に、裁きの鉄槌を下すことにした。
 もう遅いが、最後の一人であるこいつを倒せば、今後二度とブラックウッド商会が襲い掛かってくることはない。
 しかしその男は立ち上がって、振り返って言った。
 
「待ってくれ、俺はもう商会とは関係ない。機能していないし、もう辞めたんだ」
「そんなことを言っても騙されないぞ。戦士ギルドのマスターに暗殺を仕掛けてきたではないか」
「違う、そんなことはしていない」
「往生際が悪いぞ、大人しく覚悟しろ」
「頼む、もう一度だけチャンスをくれ。君とは一度戦士ギルドで働いたじゃないか」
「俺にはウッドエルフの知り合いは居ない。このグラアシア人め」
「忘れたのか? ちょっと待っていてくれ」
 
 そういうと、そのウッドエルフの男は俺から少し離れると、持参していたのか装備を整え始めた。
 鉄製の防具を身にまとうと、そのまま戻ってきて言った。
 
「なぁ、もう一度戦士ギルドでやり直したいんだ。あんたの女だろ、戦士ギルドのマスターになったんだろ? あんたから口ぞえしてくれよ、今度は裏切ったりしない。もう一度戦士ギルドとして雇ってくれ」
「悪いがそれはできなくなった」
「頼むよ、俺は戦うことでしか身を立てられないんだ。緑色の髪をした、あんたの女に会わせてくれよ。名前も知っているぞ、ソニアだろ?」
「ソニアは、死んだよ――」
 
 
 ………
 ……
 …
 
 

 オブリビオンの動乱終結時、俺は幼馴染で婚約者であった緑娘を失った。
 マーティンの協力をしていくうちに、いつの頃からかブラックウッド商会の残党が奇襲を仕掛けてくるようになったのだ。
 執拗に戦士ギルドマスターの緑娘、ソニアの命を狙ってきた。
 

 そして最後の瞬間、マーティンが竜の石像となったとき、油断をしていた緑娘は奴らに喉を掻っ切られてしまったのであった。
 
 ヒストを使うような、半分狂気に走ったような集団だ。
 こうなることも、予測できてもよかったはずだ。
 しかし悔やんだところでどうしようもない。
 

 緑娘は死んだんだよ。
 二度と立ち上がることは、無い……
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
「ラムリーザ、気分は落ち着いたか?」
「落ち着くわけねーよ、先輩」
 

「ジ=スカールはブラックウッド商会にこちらからも復讐戦を挑むべきだと考える」
「復讐して何が生まれる? もうソニアは戻ってこないのだぞ」
「人は復讐など望んでいないなどと言うが、それは身内がやられたことのない者の言う奇麗事に過ぎない」
「先輩……」
「ひょっとしたらソニアは復讐を望んでいないかもしれない。だがお前が望むのなら、思いのままに戦うべきだ」
「…………」
「ラムリーザの潰れている姿を見るぐらいなら、復讐の鬼として燃えている姿を見る方が良い」
「わかったよ、ブラックウッド商会は潰す。その先のことはそれから考えよう」
「ん。ジ=スカールは、ラムリーザが復讐を遂げて凱旋することを願っている」
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
 そう意気込んで、レヤウィンにあるブラックウッド商会本部へとやってきたわけだが、戦士ギルドとの戦いで既に抵抗不可能なほど壊滅していたとはな。
 残っていたのは、ウッドエルフの戦士が一人だけだった。
 

「戦士ギルドマスターを打倒できたから気が済んだのじゃないか?」
「違うよ、俺はソニアが死んだなんてしらなかったし、そりゃあ商会を潰されたときは憎かったさ。でも一人になってしまってからよく考えたら、あの商会はよくなかった。俺は心を入れ替えたんだ、だから戦士ギルドに」
「だからマスターが死んだのだって。今はそんなこと考えられないよ。戦士ギルドに入りたければ勝手に入って戦士ギルドですと名乗っておけばよいんだ。オレインさんにでも話を通してさ」
「オレイン……、奴は俺のこと嫌っているだろうから」
「何も知らずに嫌うわけないだろ? お前誰だよ、何をやったんだよ?」
「俺だよ俺、マグリールだよ」
「――ああ、そんな奴も居たっけな」
 
 そっか、オレインの命令を無視して職務怠慢をやったり、戦士ギルドを裏切って商会へ駆け込んだウッドエルフが居たっけな。
 彼の言っている一緒に働いたというのは、アンヴィルでの出来事を言っているのだろうな。
 
 俺は、マグリールには「今は何も考えられない」とだけ言い残してこの場を立ち去った。 
 
 
 
 

 緑娘とミーシャが遊んだレヤウィンの小島も、オブリビオン・ゲートに荒らされてこの様だ。
 
 これで予定がいろいろと狂ってしまった。
 ブラックウッド商会が相手ではないというのなら、緑娘に奇襲を仕掛けてきて殺した奴は、一体何者なのだ?
 
 いったいどの組織が復讐を挑んできたというのだ――?
 
 
 
 
Sponsored Links



 
 
 前の話へ目次に戻る次の話へ

return to page top

©発行年-2020 らむのゲーム日記