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復讐の旅の始まり ~闇の一党とは?~

 
 かつては賑やかだった、魔術師大学。
 黙々と研究に励む者、金塊集めに精を出す者、遺跡の調査をする者。
 わいわいと騒がしい感じではなかったが、みんな一生懸命な熱気は伝わってきていた。
 しかし、今はその熱気も俺には伝わらない。
 

 緑娘ソニアは、俺の中でものすごく大きな存在になっていたんだな……
 彼女が居なくなっただけで、なんにもやる気が出ない。
 ジ=スカール先輩も、黙ったままだ。どう声をかけたらいいのか分からないのだろう。
 だがそれでいい。ほっといてくれ。
 

 一方リリィさんは、何やら熱心に調べ物をしている。
 緑娘を殺害した犯人は、ブラックウッド商会の者ではなかった。
 それでは一体何者なのだ?
 そこで、最高神の神殿に残された、緑娘殺害犯の装備。それだけを頼りに、犯人捜しに取り組んでいるのだった。
 
 リリィさんとジ=スカール先輩は、先日までのオブリビオンの動乱でいろいろと功績を立ててくれた。その貢献を評価して、魔術師大学の新たなる評議会を再建させて、そのメンバーに選んだのだ。
 元々先代アークメイジハンニバルの下では、カランヤとアーラヴがその任についていたが、その後任と言った感じである。
 
 
「ダーク・ブラザーフッド、闇の一党は実在するのかしら」
 
 この日、リリィさんは調査の途中でポロリと口に出した言葉がこれである。
 ダーク・ブラザーフッド? 闇の一党?
 
「この衣装、そして行動。最近帝都で流行のナイト・マザー儀式、暗殺者。帝国軍も問題視しているらしいわ」
「その闇の一党というものが、ソニアを殺したのか?」
「考えられるのはそれぐらいなのよ。ジ=スカールさん、あなた調べてみますか?」
「いや、ジ=スカールはそんな恐ろしい集団に近寄りたくない」
「まぁそうよね」
 

 なにやら向こうで、リリィさんと先輩が話し合っている。
 暗殺者集団というものが、このシロディールに存在するのか?
 そして緑娘は、その毒牙に捕らえられたということなのか?
 復讐する相手は、ブラックウッド商会ではなくて、ダーク・ブラザーフッド、闇の一党?
 
「確証は取れないけど、可能性としては一番高いわ。事情を探るには潜入するのが手っ取り早いけど――」
「ラムリーザ、どうするのだ? ジ=スカールは復讐するべきだと考えている」
「ただし相手は暗殺者集団。前みたいな盗賊ギルドとはわけが違います」
「ちょっと考えさせてくれ」
 
 俺は席を立ち、二人から離れた。そして、アークメイジの私室へと向かう。そこには――
 

「あ……」
 
 そこにはずっと眠ったままの緑娘に寄り添うように立つミーシャの姿が。
 

「ソニアお姉ちゃん、ごめんね。ミーシャがもっと強かったら、お姉ちゃんを守ってあげられたのに」
 
 緑娘の遺体の傍で泣きじゃくるミーシャ。
 そうだったな、ミーシャの一番の友達だったもんな、緑娘は。
 
 悲しむミーシャの姿だけで、俺は十分に決意した。
 緑娘が死んで悲しんでいるのは俺だけじゃない。
 我慢せずに復讐しろ、当事者以外は黙っているべきだと言ってくれるジ=スカール先輩。
 俺のためにいろいろと調べてくれたリリィさん。
 まだ詳細は伝えていないが、皇帝を失った帝国と同じように、マスターを失った戦士ギルドも困ることになるだろう。
 
 闇の一党とやらがどんな組織なのかよくわからないが、これだけ迷惑をかける存在は、許しておけないからな。
 こんな存在を必要とする人間は、例えば自分の母親すら売るような卑劣な奴ぐらいだろう。
 まぁ流石にそこまでのクズは居ないと思うが……
 
 

「リリィさん、俺やりますよ」
「ただし、その闇の一党というものがほんとうにあるのか謎とされています」
「どうやったら彼らと接触できますか?」
「これはあくまで噂なのですが、罪も無き人間を殺せば、彼らの方から接触してくるかもしれません」
「そんな簡単なことなのですか?」
「簡単でしょうか? あなたにできますか? 死霊術師や山賊退治とはわけが違います。無実の人間を殺せますか?」
「…………やりますよ」
 
 少し迷ったが、緑娘の居ないこの世界に遠慮する必要は無い。
 元々オブリビオンの動乱が終われば、俺達は元の世界に帰る方法を探して戻るつもりだった。
 それを許してくれなかったのだから、シロディールの民にも責任を取らせよう。
 もしも俺のやろうとしていることが許されないことなのならば、闇の一党とやらに復讐が成就できた時にその責任を被ろうではないか。
 
 
 こうして、俺の新しい旅が始まった。
 これまでとは違い、陰湿で陰鬱な旅が――
 

「あら、私のかわいいラムリーザや」
 

「あらあら?」
 

「アリーレさん、ちょっと彼はそっとしといてやってください」
「彼に何か起きたのですか?」
「まだ一部の者にしか知らされていないのですが――」
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
 ――と、大学から出発したわけだが、どうすればよいべきか?
 やることは決まっている、罪の無い人間を殺すこと。
 しかし、言葉では「やる」と言ったものの、いざ実行に移すとなると、これまでの任務とは違う大変さを感じる。
 盗みとはわけが違う。俺にそんなことができるのか?
 

 そんなことを思いながら、帝都南東にある橋を渡っていた時に、橋の上で争っている二人に出くわした。
 あれは追いはぎと、マグリール?
 

 見ているうちに、マグリールは追いはぎを斬り伏せていた。
 どうしようもない奴だが、マグリールもあれでも戦士ギルドの一員として働いていた時期がある。
 剣士の腕では、それなりのてだれなのだ。
 

「おおっ、ラムリーザではないか。奇遇だな!」
「マグリールさん、今日はどちらへ?」
「俺はやはり戦士ギルドに入りなおすことにする。君の口ぞえが無いのが残念だが、コロールの本部に向かって、そこからまた一からやり直すよ」
「それは殊勝な心がけですね。もう裏切らないで下さいよ」
「ああ、俺は心を入れ替えるんだ」
 
 
 その時俺は、よからぬことが閃いた。
 こいつだ、こいつをやってしまおう。
 闇の一党と接触するには罪の無い人間、つまり心を入れ替えて善人となったマグリールは、その条件に一致する。
 このマグリールを殺せば、何らかの動きがあるかもしれない。
 
 もしも俺のやることが間違いであるならば、いずれは天罰を受けることだろう。
 その時は、死刑でも何でも甘んじて罰を受け入れる。
 緑娘の居ないこの世界に、未練は無いからな――
 
「実はマスターのソニアに君のことを話したところ――」
「おおっ、話してくれたのかっ。それで、それで彼女は?!」
「すごく怒っていたよ。裏切者を加えるわけにはいかないと」
「やはりそうだったか……」
 
 力なくうなだれるマグリール。
 俺の言うことを信用している証拠だ。
 
「だがもう一度チャンスを与えると言ってくれたよ」
「ほっ、ほんとうかっ?!」
「ただし、特別な任務がある。君には職務怠慢の前科があるから、ちゃんと任務をこなせるかテストするそうだ」
「もう投げ出したりはしない。それは何だ?」
「――ダイビングロックの恐怖についての調査だ。不動なるアグナーの手記が現場に残されているので、それの回収を命じてきたよ。できるかな?」
「そりゃあもう!」
 

 マグリールは、俺の言うことを信じてダイビングロックへ向かって駆け出した。
 そしておもむろに振り返ると――
 
「マスターのソニアは強かったよ! 商会の本部で戦った時は、死を覚悟したさ!」
 
 そう言い残して駆け去っていった。
 ニードルヒールの蹴りを食らってよく耐えたものだ。さすが戦士ギルドのてだれ、とだけ言っておこう。
 
 しかし、すまんな。
 君を利用させてもらうよ。
 もしも不服があるなら、俺もいずれは殺されるだろうからその時に死後の世界で謝るさ。
 死後の世界か、そこで緑娘と再会できるならば――
 

 俺もダイビングロックへ向かうが、その前に準備だ。
 俺の普段着は、シロディールやブルーマの英雄として祀られて、帝国の臣民に知れ渡りすぎている。
 ここは再び物乞いへと戻るべきであろう。
 

 こうしておくだけで、ごく一部の者しか俺のことを認識しないからな。
 よーく顔を知った者以外はな……
 
 
 こうして俺の、復讐の旅が今始まった――
 
 
 
 
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©発行年-2020 らむのゲーム日記