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楽園 後編 ~対決! マンカー・キャモラン~
- 公開日:2020年7月10日
マンカー・キャモランの創造した楽園に飛び込み、エルダミルの助けを借りて禁断の小洞穴を突破したところからだ。
そこには、夕日を浴びて赤く輝くメイルーンズ・デイゴンの巨像が飾られている場所だった。
シロディールの大地には、なぜデイゴンの祭殿が無いのだろうね?
他のデイドラの祭殿はあるというのに、こいつのだけは何故か無かったりするのだ。
あまりにもマニアックすぎて、表向きに信仰していると言えば、他の人に「うわぁ……」とか言われるのかな?
シェオゴラスの祭殿前で下着姿になるのは平気な癖にね、よっぽどヤバいのだろうな。
そして俺達の前に、派手な装飾の神殿が姿を現したのだった。
あれがカラク・アガイアラとやらではないだろうか?
階段の上には、二人の信者が待ち構えている。
「また会えるとは思わなかったわ。 私の父はあなたが想像もできないほどの力を持っているのよ」
「申し訳ありませんが、どなたですか?」
俺は決して記憶力の良い方だとは言えないが、深遠の暁信者と落ち着いて会話をしたことは無い。
あるとすれば、今一緒にいるエルダミルぐらいだ。
「深遠の暁教団の祭壇であなたがやったことは忘れないわ」
「ああ、あのファイアーボールでやられちゃったのね、くすっ」
「くっ……、来なさい。父からの歓迎の言葉があります」
ルマ・キャモランと名乗ったマンカーの娘こと、悪いがよく覚えていない――というか、あの時の信徒達はまとめてファイアーボールでこんがり亭にしてしまったので、記憶に残るはずが無い。
もう一人の方は、レイヴン・キャモランと言って息子なのだそうだが、悪い、興味ない。
そしてこれが、カラク・アガイアラだ。
形だけ見れば、悪くないものだね。この神殿のセンスだけは、楽園に相応しいかもしれない。
ただし、神殿の中は殺風景。
アイレイドの遺跡風ではあるが、ウェルキンド・ストーンが無い分薄暗くて陰気な場所だ。
そして正面の玉座には、見覚えのある奴が居た。
「ずっと待っていたぞ、古きタムリエルの勇者よ」
すまん。俺はタムリエルに来てから、まだ半年経つか経たないかぐらいだ。
それ以前の記憶は、無い。
「お前は死にゆく時代の最後のあえぎ。お前が吸っているのは、偽りの希望という古びた空気なのだ」
これはあれか?
同じ空気は吸いたくないと暗示しているのか?
「お前は分かっておらん! デイゴン神を止めることはできない!」
マンカー・キャモランは、声高らかに宣言する。
そんなのやってみないと分からないのにね。
「皇帝は死んだ。王者のアミュレットも我が手中にある。セプティム一族との長きにわたる戦いは終わり、私が真の支配者となるのだ」
「確かにユリエル陛下は亡くなった。だがまだ負けたわけではないからな」
「ふっ――、かつてセプティム家に仕えていた随一の勇者から、今やクヴァッチの残党であるお坊さんに仕える唯一の勇者となった守り手よ、因縁の決着をつけようではないか!」
マンカー・キャモランがいろいろと突っ込みどころのある台詞を発した後、ルマとレイヴンが襲い掛かってきたのである。
こうして見ると、同じローブでキャモラン一党とエルダミルの区別が付かない。
そしてマンカー・キャモランは、玉座から戦いを眺めているだけだ。
「俺は別に昔からセプティム家に仕えていたわけではないぞ。アークメイジとしてならば否定しないが」
「そうか、ならば相手をしてやろうではないか」
何かと偉そうな物言いをするマンカーは、玉座から立ち上がると杖を振りかざしてきた。
するとその場に、突然ドレモラが現れたのであった。
「ふっ、自分の実力に自信が無い奴ほど、別の物を召喚して代わりに戦わせるものだ」
「それではお前は召喚術は使わないのかね?」
「俺が使うのは――」
「――破壊魔法だけである!(割と嘘)」
ルマとレイヴンは、エルダミルと混ざると区別が付かないので、一対二になってしまうが二人の子息はエルダミルに任せることにした。
俺はマンカーと一騎打ちである。といいながら、奴はドレモラを召喚してきているけどね。
俺も召喚魔法を学ぶべきか? 召喚術ならコロールで学べるぞ?
「クヴァッチの英雄よ、平和と統一に対するそなたの抵抗は、道徳的に無益であるのみならず、戦術的には至難であり、戦略的には不可能であるぞ」
「破壊の神を祭り上げる狂信者に、道徳的についてあれこれ言われる筋合いは無いと思うぞ」
マンカーの言葉を聞いていたら腹が立つので、俺はとっさにジ=スカール先輩直伝の透明化の魔法を使って身を隠したのだ。
「逃げたか――? 結局は己の無力さを晒すだけだったな……」
得意げにつぶやくマンカーを尻目に、俺は神殿内部にある高台へと登っていった。
ここから一撃必殺となるとっておきの技を披露してあげようじゃないか。
唯一の勇者が、唯一の戦いでのみ披露した秘技を――
そして俺は、玉座の前に立ち尽くしているマンカー目掛けて、魔力の塊を放出した。
ファイアーボールちゃうで。
そんなんちょっと修行した魔術師なら、誰でも使う事ができる。
俺が使うのは、アークメイジならではの必殺技だ。
マンカー・キャモランの足元から出現したそれは高くそびえ立ち、激しく噴火したのであった。
グレイ・プリンス戦のみで見せた、奥義中の奥義、ボルケーノ!
ボルガノンでもいいけどね、名前なんて何でもいいのだ。吟遊詩人が勝手につけて広めてくれるのでも、よい。
火山の噴火の前では、さすがに教団の最高幹部でも歯が立たない。
この一撃で、マンカーの赤ら顔は、永遠にその身体とおさらばしたのだ。
マンカーが死ぬと、彼の手によって創造された楽園も崩壊が始まった。
俺は急いで駆け寄ると、その身体から王者のアミュレットを剥ぎ取ったのであった――
………
……
…
何がどうしてどうなったのか分からない。
気が付くと、クラウドルーラー神殿に戻ってきていた。
そして目の前にはマーティン陛下の姿が。
「おお、戻ってきたな。帰り道を見つけたのか。ということは――?」
「マンカー・キャモランなら退治したぞな、もし」
「やってくれると信じていたぞ、友よ。では手に入れたのだな、王者のアミュレットを」
「ここにありますよ」
俺は、マーティンに王者のアミュレットを差し出した。
マーティンが、本当にセプティム家の血を引くものなら、身に付けられるはずなのだ。
さあ陛下、アミュレットをお着けください。
果たしてマーティンは、王者のアミュレットを身に付けたのであった。
「やはりあなたは、ユリエル陛下のご子息でしたな」
「私は君がクヴァッチで最初に話してくれたとき、すでに真実だと分かっていたのだよ」
「またまたー。あそこまで疑っていたのに今更何を言うのですかー」
「しかし皇帝になることと、実際に皇帝たるというのは全然違う話なのだよ」
「あなたは皇帝です」
俺は恭しく膝をついて見せた。
友と呼んでくれたとしても、皇帝は皇帝。公私混同はよくないということなのだ。
俺はマーティンの友であると同時に、マーティン陛下の臣下であるのだからな。
マーティンに「お前は私の何だ?」などと問われたら、迷うことなく「私は陛下の忠実な臣下です」と答えなければならない一面もあるということを忘れてはならない。
だがマーティンは、まだやり残してあることがあると言ったのだ。
ドラゴンファイアに火を灯すまで、各地に開いたオブリビオン・ゲートは開いたまま。メイルーンズ・デイゴンの侵攻が終わったわけではないのだ。
「では、これからどうされますか?」
「皇帝となった今、帝都に居るオカトー大議長と連絡を取り合う必要があるだろう。彼は元老院の長として、皇帝が無き時代は彼らが帝国を治めていた。元老院が異議を唱えることは無いだろうが、彼らの権限も尊重しなければならない」
「必要な事があったら、またすぐにでも駆けつけますよ」
「ありがとう。頼りにしているよ」
こうして深遠の暁教団の支配者マンカー・キャモランは死んだ。
王者のアミュレットは我らの元へと戻ってきて、マーティンが真の皇帝であるということが証明された。
時代の風は、少しずつ我等の方へ吹き始めているようであった。
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