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奇妙なノイズ 中編 ~渦中の神父~

 
 酔いどれトムが持ってきた、金鉱山で新たに発生した奇妙なノイズ事件。
 原因は、鉱山の奥に現れたゾンビだった。
 しかし鉱山に何故ゾンビが? 新たに発掘したトンネルの先に現れた古代の扉の正体とは?
 問題は、徐々に労働問題でなく、何か別の物を表すようになっていた。
 
 鉱夫ウィンストンの話では、古代の扉に関しては経営者のポーレではなく、現場監督のログクロスを頼ってくれと言ってきた。
 鉱夫達は経営者のことを良く思っていなくて、経営者にこき使われている彼らに同情的な監督に好意を持っているのださと。
 

「サー・ログクロス卿!」
「何だそれは、俺は現場監督であって、騎士ではない」
「いやぁ、オークの緑色の顔ですごまれると、どうしてもそう呼んでしまうのですよ」
「別に俺はすごんでいない。オークとはこういう顔をしているものだ」
「その通りであります、ログクロス卿」
「だから卿など要らん。どうしても敬称をつけたいなら監督だ」
 
 茶番劇終わり、俺はログクロスに、古代の扉をどうするか尋ねてみた。
 そこでなにやら扉の前は瓦礫だらけなので、何人か部下を送って整頓しようと言ってきた。
 ん、鉱山発掘隊が、遺跡発掘隊に早変わりだね。
 そしてログクロスも、この件に関しては経営者のポーレには内緒にしようと提案してきた。
 やはり労働者側と、経営者側で対立しているみたいだね。これは金鉱山獲得のワンチャンスあるで、へっへっ。
 
 次にログクロスが依頼してきたのは、アンブロギオ神父についてだった。
 神父は、礼拝堂の維持費に使う為に少量の金塊を受け取り、代わりに鉱夫側に薬や食料といった生活や仕事に必要な物を供給しているのだ。
 秘密のトンネルがあって、密かに礼拝堂と鉱山を行き来できるのだ。確かに神父の部屋に、鍵のかかった扉はあった。
 だがここ数日間、神父は鉱山の拠点に現れていない。
 ログクロスは、神父の身に何か問題が生じているのでは? と不安に思っていると言った。
 そこで、トンネルの鍵を預けるから、神父に何があったのか調べてきて欲しいと言ってきたのだ。
 
 昨日見た感じでは、普通に礼拝していたし、ジークの埋葬とか普通にやってくれたけどなぁ。
 あと、鉱夫達に必要な物を供給するのは、神父の仕事ではなくて経営者の仕事ではないのか?
 なんか自分の利益しか考えない、悪徳経営者のイメージが強くなってきた。こんな奴相手なら、いくらでも簒奪してやるものだけどね。マーティンは立派な人だと思うから、帝国は彼に任せていたらいいのだよ。
 
 

 さて、礼拝堂へ続く扉を鍵で開けて、トンネルを進んでいった。
 なんだか巨大なきのこが生えているねー。神父はきのこ派かな。ちなみにハシルドア伯爵はたけのこ派、俺はすぎのこ派。ん、意味分からんね。
 

 ログクロスの言ったとおり、トンネルの先は礼拝堂の地下室へと通じていた。
 しかし神父の姿は無い、礼拝中かな。
 
「ショール様、マーラ様、ディベラ様、キナレス様、アカトシュ様、とにかく神様、我々をお救いください」
 
 礼拝堂に上がると、神父は熱心にお祈り中だった。
 九大神と言うぐらいだから、全ての神に祈りを捧げなければならないのだね。
 八百万の神々様で済ませてもいいと思うが……
 

「メリン神父!」
「私はアンブロギオ神父だが? 悪魔祓いはやらないぞ」
「最近鉱山に顔を出さないので、ログクロス監督が心配してましたよ」
「ああ、それですか。いえ、私は問題ないのですが、大陸からの物資補給が遅れていて……。それだけなんです」
「それらそう伝えてあげてください」
「んや、あまり用も無いのに動くと、ポーレに怪しまれる。あなたに頼みましょう、ログクロスに『すべてがただナインだ』と伝えてくれ」
「ナイン? 九大神?」
「いや、ナインは暗号です」
「さいでっか」
 
 九大神のナインと、無いんをかけた駄洒落でもかましているのか? ――と思ったけど、俺の取り越し苦労だったみたいだね。まぁ物資が無いという意味だろう。
 あと神父は、鉱山で起きた事件について尋ねてきたので、別に隠すことでもないし、新しいトンネルが古代の扉に通じていたよ、とだけ伝えておいた。
 それから再びトンネルへと戻り、ログクロス監督の所へ戻った。
 
 ………
 ……
 …
 
「すべてがただナインだ。神父が来ないのは、物資不足のようでしたよ」
「ナイン? それはいかん! ナインはトラブル発生っていう俺達の合言葉だ!」
 
 神父からの伝言を伝えると、監督はひどく慌てたような態度を見せ始めた。
 いや、物資補給が滞っていることは、トラブル発生とは言えるけどね。そんなに騒がなくても良いだろうに。
 
「ナインは俺達にはよくなかった、神父は相変わらず敬虔だどな」
「では九大神ナインではなくて、エイト、八大神にしてみたらどうですか?」
「どの神を省くのだ?」
「タロスです。タロスの名は英雄に相応しいが、神ではないのです」
「ならばタロスの代わりに、マラキャスを加えて九大神のままにしよう」
「このオークちゃんめ」
「では今度は、神父の所に戻って『死なんかナインだ』と言ってくれ。こんなことは誰も司祭には言わんだろう」
「やっぱ駄洒落じゃねーか!」
 
 なんで俺は、こいつらの駄洒落につき合わされなければならないのだろうか。
 暗号ならもっと暗号らしくしろよ。例えばトラトラトラとかニイタカヤマノボレとかな!
 
 ………
 ……
 …
 

「え~と、その~」
「なにカマトトぶってんのよ」
「どうしたのですかな、グランドチャンピオン殿。私はすべてがナインだと言いましたよ」
「アークメイジです。……死なんかナインだ! ぷは~っ……」
 
 もっとかっこいい暗号を使ってくれよ。
 例えば「7071-8782」とか、「3263827」とかね!
 ぬ、それは暗証番号か……
 
「神よありがとう。私はあなたがポーレのために仕事をしているのではないかと確認する必要がありました」
「ポーレ? 会った事も無いよ。利益しか考えていない悪徳経営者だって感じだけど、どうなのでしょう?」
「その通りです。ポーレは私が鉱夫に薬と食料を与えて援助していたことを知ったとき、すごく激怒したのです」
「それ、経営者か? 何を考えているんだ?」
「ポーレは、私がスパイ活動をしなかったら、礼拝堂を燃やすと言いました。あなたの言うとおり、彼は邪悪な男です」
  
 なんかここでポーレをぶっ倒しただけで、神父や鉱夫に感謝されて金鉱山は俺の物、って気がしてきたぞ。
 薬はともかく、食料も与えずに働かされるって、逆に鉱夫側はポーレになんか弱みを握られているのか?
 これってちょっと扇動するだけで、暴動物じゃないのかね?
 神父を脅してスパイに仕立て上げ、鉱夫内にスパイを送り込まないとダメなぐらい、ポーレ側も鉱夫達を信頼していない。いったいどんな奴なんだ……
 
「私は人々の安全の方が、利益よりもずっと重要だと考えています。古代の扉についても、誰にも言わないでしょう。さぁ、ログクロスに伝えるのです」
 
 こうして神父の信頼を得て、再び監督の所へと戻った。
 
 ………
 ……
 …
 
「かくかくしかじか」
「何? 神父が鉱夫に供給していた援助のことをポーレが知っていただって? そいつはまずいな……」
「どうです? ここで一気に暴発して、ポーレの悪逆なる支配から抜け出しませんか?」
「う、うむ……、まぁポーレへの交渉は神父に任せよう。俺はただの鉱山の監督だ」
 
 ん、気が弱いな。
 こういうところもポーレに利用されているのだろうな。
 
「まずはその古代の扉についての調査を終わらせよう。俺達はこの状況がこれ以上悪化しないようにしなければな」
「既にどん底だと思うけどのぉ……」
「さあ、古代の扉へ向かおうではないか」
 
 そう言うと、ログクロスは鉱山の奥へと向かっていった。
 これは何か、ポーレに弱みを握られているな。
 それとも俺の扇動がちょっと弱かったかな?
 
 
 とにかくこうして、古代の扉についての調査が始まったのであった――
 
 
 
 
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©発行年-2020 らむのゲーム日記