同志の裏切り 前編 ~俺は探偵じゃないんだけどな~

 
 さて、タムリエルという世界のシロディールという国、その中にあるブルーマの街で、俺は魔術師ギルドの一員として暮らしていくことにした。
 右も左も分からぬ状況だが、とりあえず何かの集団に属しているのはよいことだ。
 そこで、魔法の心得があった俺は、魔術師ギルドを選択したわけだが――
 

 さて、どうするかね?
 当ても無くブルーマの街をうろついていた所、興味深い家を見つけた。
 それがここだ、ブレイドン・リルリアンの家。
 

 ブレイドンってどこかで聞いた名前だなと思ったら、レイニルというヴァンパイアハンターに退治されたヴァンパイアの名前じゃないか。
 そういえばギルドマスターのジーヌスは、ヴァンパイアが街に紛れ込んでいたとか言っていたな、
 なんとなく興味がわいたので、家の中へ入ってみることにする。
 

 家の中には、ベッドに死体、それと二人の衛兵とおばさんが居た。
 
 衛兵とおばさんと話をしてみたところ、衛兵はこのブルーマで犯罪の捜査を担当しているカリウスで、おばさんはブレイドンの奥さんのエルリーネだそうだ。
 

 エルリーネの話では、主人はヴァンパイアではないのか? とのこと。
 まぁそうだろうな、俺の常識だとヴァンパイアが街にひっそりと隠れ住むことはあっても、奥さんを娶るとは思えない。
 もしもブレイドンがヴァンパイアなら、エルリーネもヴァンパイアであるかもしれないと疑わなければならないだろう。
 衛兵は、ヴァンパイアは人を欺く術に長けているというが、ならばエルリーネも問い詰めなくちゃならないね。
 そういうわけで、俺はなんとなくこのおばさんを助けてあげたいと思い始めていた。
 
 

 エルリーネは、地下室に乞食の遺体が見つかったと言うが、確かに地下には遺体がある。
 
 それと、レイニルというダンマーの男の話も聞いた。ダンマーとは何のことだかさっぱり思い出せん……。
 衛兵はレイニルのことを知っていたらしく、カリウスもブレイドンがヴァンパイアだということにすぐに納得したそうだ。
 いや、だからブレイドンがヴァンパイアだと思うならエルリーネも疑おうよ。
 しかし地下室の遺体と、ブレイドンは夜の仕事で昼間は寝ていたというから、状況はブレイドンに不利である。
 さっそく俺は、街で聞き込みを始めることにした。
 
 
 俺は探偵じゃないんだけどな……。
 
 
 まずは、この街に昔からある宿屋から聞き込みをしてみた。
 

 しかしこの主人、オラヴという奴は頑固者で、見知らぬ奴には話を聞かせないと言うのだ。
 まぁ、普通はそうだよな。
 そういうわけで、俺は魅惑の魔法を使うことにする。
 

 惚れ魔法ってわけじゃないけど、相手から警戒心を解くことは十分にできる。
 オラヴの表情がにこやかになったところで、再びレイニルについて尋ねてみる。
 すると、あっさりとレイニルが泊まっている部屋を教えてくれて、さらに部屋の鍵まで渡してくれたのだ。
 しかも、オラヴはブレイドンとエルリーネに対しても好意的で、ヴァンパイアだとは思っていないようだ。
 

 レイニルが泊まっているという奥の部屋を、鍵を使ってあけてみる。
 この鍵はもう必要ないようだ、捨てようかな――、とは思わない。なぜ必要がないって分かるんだよ、とかそういうことはどうでもいい。
 レイニルは外出中らしく、部屋の中には誰もいない。 
 

 部屋の中をじっくりと調べたところ、たんすの裏に隠したつもりなのか、不自然な形で本が置かれていた。
 その本以外は、とくにこれといったものは見つからない。
 

 何々? ゲレボーンの日誌? ゲレボーン? なんか汚い感じがする名前だな。
 えーと、日誌の内容は――。
 
 要約すれば、アイレイド遺跡の遺物探しについての話で、レイニル、ブレイドンとたぶんこの日誌を書いたゲレボーンの三人で探検していたようだ。
 それで、見つけ出した遺物は、ブルーマ近くの洞窟に隠し、三つの錠を備えた箱にしまいこみ、この三人がそれぞれ一つずつ鍵を持つことにしたのだと。
 つまり、この三人が揃わないと遺物は再び手にすることはできないのだ。
 
 ――という内容。
 ということは、遺物を独り占めしようとしたレイニルが、ブレイドンを殺して鍵を奪ったってことになるんじゃないかね?
 
 とりあえず宿屋の主人オラヴに、ゲレボーンについて聞いてみることにした。
 するとオラヴは、レイニルからゲレボーンという名前のヴァンパイアを始末したという話を聞いていたようだ。
 なるほどね、ゲレボーンもブレイドン同様、レイニルにヴァンパイアとして殺されていましたか……。
 
 あー、これは間違いなくレイニルって奴の遺物の独り占めだね。
 
 ここまで分かったことをカリウスに報告するために、再びエルリーネの家へと向かう。
 

 しかし、いつの間にか夜遅くになっていたようで、家は閉まっていた。
 うーむ、日誌をじっくりと読みすぎたか?
 
 まあいい。
 
 魔術師ギルドに泊まって、明日出直すことにしよう。
 
 
 

 俺が仮眠したベッドは、ジ=スカールで埋まっているなー。
 そういうわけで隣の部屋で、錬金術師のセレーナと相部屋にすることにした。
 どうでもいいが、このギルドにはベッドは五つしかない。
 もう一人ギルドに人が加わると、ベッドを早く確保しないと俺が寝るところがなくなってしまうなー。
 

 まあいいや、その時はその時考えよう。
 それでは、おやすみ。
 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ