執着の分類法5 ~動物総覧5 グラマイト~
オーダー軍に奪われたブレラック砦を再奪取して、ニュー・シェオスへ戻る途中だ。
ちょっとハイクロスの様子を見てみようと立ち寄ったところ――
「遅い!」
「何が?!」
「公爵閣下! マイ・ヒーロー!」
「ダル=マみたいなこと言うな、ワ=マワーレだがランズ=イン=サークルだか知らんが!」
「掃除の邪魔をするな」
「おっさんいつ見ても掃いているのな! つーかこのトカゲの方が砂埃を立てまくってるぞ!」
怒られたり褒め称えられたり、やっぱり怒られたり。
人気者はこれだから困るよねー。
ここまで地域密着型の公爵は居ただろうか?
それともこの世界でも魔術師大学みたいな例に漏れず、使いっぱしり公爵ですか?!
「一人ずつ片づけよう――じゃなくて、何か用があるのはミリリさんぐらいですな。その他大勢――二人はシッシッ」
「なっ、なんつった? なんつった?!」
「アルゴニーニーアンは後回し、失せろ!」
「にーにーにーにーにーにーにーにー!」
やれやれだ……(。-`ω´-)
世界のどこかにあると噂の「知恵のしゃもじ」を手にすれば、一度に十人の言うことを同時に理解できると聞くが、そんなもの持っていないので一人ずつしか対応できないのだ。
さて、ミリリの話では、スケイロンの研究も終わって、そろそろ多少は知識を持ったモンスターを調査したいとのことだった。
「知識を持ったモンスター、あなたもわかりますよね?」
「グラマイトですか? ゲルマイトですか?」
「マニア訛りとディメンシア訛りの違いで、どちらも正解よ」
「しかしもう檻の中は一杯じゃないか?」
「あなたが戻ってくるまでに一ヶ所に移動させて開けておくから、早く連れ帰ってきて頂戴」
ということである。
つまり、今度はグラマイトを連れてこいというわけだ。
この戦慄の島では、これ以上他のモンスターは知らんし、いい加減これで最後だろうな。
「えっと、この錬金素材は?」
「ありがとう。ではグラマイトよろしくね」
もう生物にしか興味ないなこの人は。
研究熱心なミリリのことだから、そのうちオーダーの騎士も調査したいとか言い出すかもしれんな……
「というわけで、またここでお留守番な」
「何よ、グラマイトとどこかにしけこんで――」
「文句がワンパターンになっとるぞ。そっちもチロジャルと適当にしけこんでいろ」
そんなわけで、捕獲の邪魔をするチロジャルを村に置き、そのお守を緑娘に任せて、俺は街道に向かうのであった。
グラマイトはどこかの洞窟、もしくは街道をうろついているのだ。
しかし、主だった街道は既に厄介なモンスターは掃討済み。
グラマイトを探すには、脇道に逸れるしかないかな?
そこで向かったのは、ハイクロスから南に向かい、多段キノコの森に入る手前辺りだ。
右手側に連なっている崖の一角が、まるで獣道のように登りやすくなっていた。
何かのために作られた道なのかもしれないので、そちらへと向かってみる。
その道はそのまま山道となっていて、その頂上はこんな感じになっていた。
山の頂に祀られているトルソー?
遺跡や砦にはよくあるものだが、まさかこんなところにまで大きく飾られているとは思わなかった。
そもそもどこにでもあるものを頂上に飾る意味がわからないね。
道はそのまま、左右の切り立った崖の上に続いている。
途中でバリウォグとかハンガーが襲い掛かってくるけど、地形をうまく活用した戦い方でしのいでいく。
すなわち、元祖霊峰の指で、弾き飛ばして崖から落とすのだ。
たとえ一撃で倒せなくとも、戻ってくるには崖を登るか迂回してくるしかないからね。
山の上の道は、しばらく進むと下り道となって崖ではなくなる。
そしてその先に、砦かな? 石造りの建物が現れたのだ。
ここを目指すための、分かりにくい脇道への入り口と、切り立った崖の道だったのだろうか?
丁度上手い具合にグラマイトが住み着いていたので、すぐに生物操作をかけて操ってやった。
建物の奥にはいくつかの壺が並んでいたが、めぼしいものと言えば魔力の込められた小手とか兜だけ。
どうせ持ち帰っても、緑娘に「むずがゆそう」とか「ぬめぬめしてそう」としか言われないと思うので、断腸の思いで放置していくのだった。
「さて、グラマイトは言葉を話せるのだったな」
「マサンジュシゴ、イハ」
「俺はグラマイトの言葉はわからん。ミリリに研究させて、会話できるようになってみようか」
「ネシリパッヤ、ドケタッモオト――」
「おっとも魔法が切れたか。生物操作ーっ!」
「マサンジュシゴ、イハ」
生物操作の魔法は30秒しか持たないので、定期的にかけなおす必要がある。
ま、襲い掛かってきたらカウンターで決めるだけ。
退治してしまったら任務失敗だから気を付けないとね。
だから犬のチロジャルは同行できないのだ。
緑娘は任務を理解してくれるが、犬はそこまで理解できずに、常に敵は全力で始末しかしないからね。
………
……
…
グラマイトを連れてハイクロスの村へと戻ってくると、檻に異変が生じていた。
なんとなく「ぎゅうぎゅう」のような?
マジで、バリウォグ、エリトラ、ナール、スケイロンを一ヶ所に集めていたりする。
こいつらよく喧嘩しないよな。
モンスターvs人間はあるが、モンスターvsモンスターはあまり見かけない。
唯一見かけたのは、グラマイトvsナール。あれはブラックルート・レア、黒き根の穴だったかな?
だからグラマイトだけ別の檻に入れるのか。
「ほら、連れて帰ったぞ。退治したら次は無いからな」
「だーめ、失敗したらまた行くのよ」
――とまぁ、ミリリはグラマイトを檻へと移動させたのであった。
報酬は575G、前回よりも5Gだけ上昇している。
ま、そんなところは気にしないけどね。
こうして、ミリリのグラマイト調査が始まった。
「グラマイト、もしくはゲルマイト。原始的文化を持つ生物。水を浴びると再生能力を発揮する――と」
「公爵閣下、公爵閣下、公爵閣下~っ!」
「なんぞ?!」
「ミリリの要求は終わったみたいだから、私の要求を聞きたい? 聞きたい? 聞きたい?」
「聞きたくない。あと公爵閣下は一度だけ」
「私を公爵の執事にして欲しいな、欲しいな、欲しいな」
「では問うが、俺への忠誠の証としてできることがあるのか?」
「あなたのためなら何でもするわ、何でもね。もう自分の子供だって食べるわ! 食べるわ! 食べるわ!」
「ワ=マワーレ、お前もか……(。-`ω´-)」
これだとセイドンの執事だったワイド=アイと同じじゃねーか。
いや、こいつら同じアルゴニアンか。アルゴニアンは忠誠の証として、自分の息子を捧げるのか? イサクの燔祭みたいに……
じゃなくて、こいつはアルゴニーニーアンだから違う。適当に言ってるだけだ、たぶん。
なんかセルフ残響音やってるし、るし、るし。
「あなたに付きまとう女が居たら、八つ裂きにしてやるんだから! から! から!」
「勝手に緑娘に喧嘩を売って、蹴り刺されてこい……(。-`ω´-)」
その緑娘だが、こいつが俺に抱きついてきても何も言わないのな。
やっぱりオークとかアルゴニアンは、端からライバル扱いしていない模様。
俺にアリーレやリリィが近寄ると文句ばっかり言うくせに、マゾーガ卿やダル=マが近づいても何も言わなかったもんな。
緑娘は知らんようだが、アルゴニアンって割と淫乱なところがあるのだぞ――という本を読んだことがある……(。-`ω´-)
いや待てよ?
ひょっとしてこいつの異常さから、ワ=マワーレを女だと思っていないのかもしれんなw
いや、異常だったら男だというのも偏見過ぎるが、グラアシアとか例のファンとかなぁ……
こうして、ミリリからの五度目の依頼をこなしたのであった。
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