無防備な軍団 その3 ~ブレラックの砦奪還作戦~

 
 セイドンの策略により、ゴールデン・セイントの聖域であるブレラックの砦は占拠されてしまった。
 そこで、俺たちは普通に奪還作戦を実行することとなった。
 さらに、捕らえられている指揮官のスターダを救出しなければならない。
 

 なるほど、セイントがやられている。
 前途多難だな……
 

 当然のごとく、砦の中ではオーダーの騎士が次々に襲い掛かってくる。
 ただし、起動しているオベリスクは見当たらない。
 やはり屋外にあったオベリスクから湧き出てきた騎士が、外部から侵入してきたのだろう。
 ということは、一体一体確実に仕留めていけば、その内全て居なくなるはずだ。
 

「これはなんぞ?」
「小さい人は、度量が狭かったり、小心であるものよ」
「博識なのか下品なのか分からん評論だな……(。-`ω´-)」
 
 オベリスクと同じ素材でできた扉といったところだろうか?
 しかし、開く手段は見つからない。
 
 

 オーダーの騎士が複数で襲い掛かってきた時は、串刺し攻撃が効果的だ。
 砦の内部はオベリスクでたくさん。
 途中でいきなり生えてくるものなどがあるが、起動している物があるかもしれないので、オーダーの心臓は回収しておく。
 
 
 そしてしばらく進んだ時である。
 

 例のケツの穴――じゃなくて、オベリスクでできた扉のようなものの中に、セイントが閉じ込められていたりする。
 
「いいところに来た、出してくれないか?」
「ひょっしとて指揮官のスターダ?」
「そうだ。こいつを破壊するんだ」
「どうやって?」
「貴公の力では無理だ。鐘を使え。この壁は、鐘の音で砕け散るんだ」
「鐘ですかー」
 
 鐘と言われても、それらしきものは見当たらない。
 鐘と言えば釣り鐘だよな、リーンゴーンの。
 

「あれじゃないのかしら?」
「サンドバッグにしか見えんが?」
「叩くだけ叩いてみなさいよ」
 

 普通にサンドバッグである。
 こんな細長い鐘など見たことない。
 しかし鐘らしきものを殴りつけてみると、それは光り輝き――
 

「ほら、壁が壊れたわ」
「どういう仕組みなのだろうねー」
 
 さて、閉じ込められていたスターダは、最初俺のことが何なのかわからんようであった。
 ディメンシア公爵についたことは、広まっているのか広まっているのかわからんね。
 一介の住民が知っていると思えば、指揮官ともあろう方が知らぬと言う。
 
「ゲートキーパーが退治されたり再生されたり、アリーナでグレイ・プリンスが倒されたとか知っていますか?」
「そんなことが起きているのか?」
「ほーお」
 
 意外とこの人が、まともなのかもしれないね。
 

 スターダは、俺にセイドンがどこに行ったか尋ねてきたりする。
 しかしまだ見かけてはいない。
 セイドンはスターダに、問題が発生したので人手が欲しいと兵を要求したらしい。
 そのための部隊編成を考えていたのだが、既にその時、セイドンはオーダーを砦の中に呼び寄せていたのだ。
 そして部隊は分断され、各個撃破されたと言う。
 
「シル公爵が死んで、セイドン公爵が裏切ったのを知らんのだよな」
「過ぎたことは仕方がない! 今重要なのは、源泉に向かうことです!」
「源泉とは何か? 確定申告でもするのか?」
「違う、オーリアルの源泉だ。我々とこの領域を結び、オブリビオンの海から現世へと戻すものだ」
「ん、了解した。よくわからんが了解した」
 
 どうやらオーダーにこの源泉を絶たれたら、セイント一族は全滅するらしい。
 こいつらは永命の者というが、そういう者に限って意外なところに弱点があるものだ。
 例えばヴァンパイアが陽の光を嫌い、ウェアウルフが銀を嫌い、フランケンが勘違いを嫌う等。
 フランケンは博士で、フランキーレインは歌手だからな。似ているけど間違えるなよ。
 いや、フランキーレインはプロレスラーだったっけ?
 あとウェアウルフは銀でなければ傷つかないからな。
 例え縛り付けて鉄の斧を振り下ろしても傷一つ付かないし、鉄の大槌を叩きつけても潰れないから気を付けよう。
 まあいいや。
 
 とにかく、ブレラック砦の中心にある、オーリアルの源泉を目指すこととなった。
 スターダも、俺に従いついてくるようだ。
 
「ところで、セイドンはどう思う?」
 

「民の女公爵が、オーダーの手勢に付くとは、憎き策士だ!」
「御しやすいと思っていたが、あれはあれで厄介な奴だった――じゃなくて、あいつ女公爵だったのか?!」
 
 ニュー・シェオスの宮殿では、百合な展開が繰り広げられていたのか……(。-`ω´-)
 狂ってやがる……って、狂気の世界だったか。
 いや待てよ、セクシャルマイノリティを否定してはいかんいかん。
 
 
 しかし、奥の間に突入した時に、それは発生した。
 

「ぐあっあ――」
「なんね? ――って、なんだぁ?!」
「石化しちゃったわ」
 
 いかんなー。
 オーリアルの源泉を絶やされてしまったらしい。
 源泉を復活させれば元に戻るのかどうかわからないが、
 

「奥に続く道は、オベリスクの壁で塞がれているな」
「そこの金を鳴らしなさいよ」
「はいよん」
 

 ふと思ったのだが、この金を鳴らしていた者は、そうとう大きな奴だったのかもしれない。
 俺の頭よりも高い場所が、何度も打ち付けられたかのように削れてしまっているのだから。
 それとも、飛び蹴りなどで鳴らすのが正解なのかな?
 
 さて、しつこいオーダーの騎士を始末しつつ、オベリスクでできた棺から「重荷知らずのブーツ」を見なかったことにして戻したりして奥に進んでいったところ――
 

 砦の奥は広間になっていて、その中央に白く輝くピラミッド状の物体が。

「なんだろう、テントかしら?」
「壁がオベリスクっぽいから、これがオーリアルの源泉――いや、この中にそれがあるんじゃないかな?」
「それじゃ、早く壁を取っ払いなさいよ」
「鐘はどこじゃ?」
 

 調べたところ、広間の四隅に鐘がそれぞれ設置されていた。
 これはあれだな、四つ全部叩いて回れってことだろう。
 
「よっし、回るぞチロジャル!」
「わんっ!」
 
 俺は、チロジャルに追いかけられながら、広間をぐるりと回り、その都度鐘を蹴とばしていくのだった。
 年末にはこれを108回もやらなければならないから大変だと聞く。
 この部屋で実行しようとしたら、27周しなければダメだである。
 
 

「あっ、覆いが取れて中身が出てきたよー」
「何に見える?」
「銅を流してみた噴水。なんだか公害が起きそう」
「なんやそれ?」
 
 しかし、緑娘の言うように、銅のような色をしたドロドロが流れていて、底にもタップリと溜まっている。
 これがスターダの言っていた、オブリビオンの海から流れてきている物だろうか?
 俺の知っているオブリビオンの海は、ただのマグマ溜まりだったけどね。
 ひょっとして、セイントはこのドロドロを主食としているのかな?
 
「公爵殿! 源泉を復活させてくれましたな!」
 

「びっくりさせるな、復活したのな」
 
 オーリアルの源泉が復活したおかげか、司令官スターダをはじめとして、イスミやその他大勢が集まってきた。
 つくづくこいつらはアマゾネス軍団だよな。
 これはシェオゴラスの趣味なのか?
 
「貴方は恩人です。我々一同、永遠の感謝を捧げます」
「よいぞ、くるしゅうない」
「必要な時に我らを呼び出せるよう、この呪文を差し上げましょう」
 
 これで、ダーク・セデューサーに引き続き、ゴールデン・セイントも呼び出せるようになったわけだ。
 でも召喚魔法って、いまいち使いどころが思いつかないのだよね。
 普通に緑娘がガンガンやっつけてくれるし、なまじ乱戦にしてしまうと、俺の攻撃で誤爆が発生しかねないからな。
 完全に俺が指揮官立場で戦ってよいのならどんどん召喚させるけど、俺が戦う方がサクッと終わるし……
 
 ま、寂しい時に、おしゃべり相手に――なるのかな?
 
「ところでこの砦にセイドンは居なかったのだが?」
「奴の足取りは不明です。我々は総力を挙げて奴を追跡し、相応しい罰を与えるべくシェオゴラス神へ引き渡してやります!」
 
 裏切り者は裁かれねばならんと言うが、これは完全にシェオゴラスの手落ちだろうな。
 俺がシェオゴラスなら、セイドンがわざわざ裏切り宣言をしてきた場面でバッサリやっている。
 つまり、シェオゴラスは教会でセイドンを始末すべきだったのだ。
 
 セイントたちにブレラック砦の掃討作戦を任せて、俺はシェオゴラスへ奪還したことを報告しに向かった。
 この源泉を死守しておれば、オーダーとの戦いにセイントは負けない――と思いたい。
 
 どうも魔術師ギルドの連中が死霊術師に対して非力だったという記憶があるので、味方の戦力を信用できなくなっているのだよなぁ……
 
 
 
 砦から出ると、空模様は明るい以前のマニアへと戻っていた。
 これは、事態が好転していると見るべきかな。
 どうもここのところ、天候がこちらの情勢を現しているように見えてならん。
 
「ところで、だ!」
「何かしら?」
 

「ゴールデン・セイントの装備を頂いたのだが、どうだ? かっこいいか?」
「セブンセンシズに目覚めた成金聖闘士みたい」
「…………(。-`ω´-)」
 
 ま、そう見えんでもないから、ここは大人しく受け入れよう。
 とりあえず、「わしの名はラムリーザ! クリスタルは誰にもわたさん!」とでも言っていたらいいのかな?
 クリスタルを取られるぐらいならどうするかだって?
 クルーシブルの何でも屋、アージャズダに倣うとするさ。
 
 

「ダーク・セデューサーだけでなく、ゴールデン・セイントにも忠誠を誓われたよ」
「ね、バランスよく貢献したのが良い方向に動いているでしょ?」
「コウモリ外交に見えるが、戦慄の島という広い目で見ると、双方とも味方のはずだからな」
「あのシェオゴラスだって、両方を従えてるじゃないのよ」
「そうだな」
 
 戦慄の島、北の果てにて――
 島一つない水平線を眺め、誓いを立てる。
 
「今度は最後まで二人で完走するぞ」
「チロジャルも入れてあげてね」
 
 オーダー軍を殲滅したら、そこで勝利なのか?
 ジャガラクというものは、一体何なのか?
 
 今はまだ、依頼される仕事を一つ一つ片づけるしかできない。
 すべて片付いたとき、どうなっているかな?
 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ