ゲートキーパーの再生 その5 ~復活! ゲートキーパー~
シェオゴラスの依頼でゲートキーパーを再生するために、ザセルム砦に住むレルミナに会い、ゲートキーパーの再生には4つの素材が必要だと聞いた。
そこで骨肉の園に向かい、血のリキュール、骨中の髄、皮膚の膜、息吹のエッセンスという4つの素材を集めたところだ。
再びザセルム砦に住むレルミナの所へと戻る。
レルミナは、例のミニゲートキーパーが横たわっている部屋で待っていた。
「全ての素材を集めてきたのね?」
「たぶんこれで合っていると思うけど、一応確認してみて。書いてあったわけじゃなく、フィーリングで選んできたので自信がないから」
「結構、合ってます。あとは身体の部位を選ぶだけよ」
「部位とな?」
「こんなこともあろうかと、新しい身体を用意しておいたのよ」
「流石です……(。-`ω´-)」
いずれは自分でゲートキーパーを再生させるつもりだったのだろうな。
それが今、シェオゴラスに求められて動き出したわけだ。
俺たちは、レルミナの案内で、肉体の部位を保管してあった場所へと赴いた。
「さあ、ここから選ぶのよ」
「どれも同じじゃないのか?」
「それならわざわざこんなところに置きません。各パーツには、それぞれ異なるエンチャントが付与されているのよ」
「エンチャントか、あまり得意ではない分野だなぁ」
リリィさんならアイテム限定でプロフェッショナルだったけどね。
さて、部屋を見る限り、頭部と胴体、そして四肢に心臓を選べばよいらしい。
「まずは頭部か。ヘルメット有りの方がいいのかな?」
「力の兜は腕力の上昇、兜無し、すなわち怒れる精神は、気力を上昇させます」
「ん~、腕力だな」
ここでは力の兜を選んでおく。
守りに就かせるのなら、防御を固めた方がよかろう。
それに、ゲートキーパーは物理攻撃主体だ。
腕力が高い方が有能だと思える。
「次は心臓か……、違いが判らんぞ」
「傷分けの心臓は、物理ダメージを反射します。反呪の心臓は、魔法ダメージを反射します」
「ん~、両方を備えるのが理想だが、どちらかを選ぶなら――物理かな」
これは選択しなければならないのなら、どちらにしても一長一短がある。
ただ、もしもゲートキーパーが暴走して自ら再封印しなければならなくなったとき、俺のやりやすいようにしておくのも手だ。
魔法ダメージを反射されたら戦いにくいからね。
「次は胴体か。これもパッと見では区別がつかないな」
「命の胸は、体力を上昇させます。魔力の胸は、マジカを上昇させます」
「それだと命の胸一択だな」
ゲートキーパーにマジカを備えさせて何になる?
理想を言えば、緑娘の胸を再現させてみたい。
Lカップぐらいありそうだから、さぞかしセクシーなゲートキーパーに……、気色悪いだけだな却下(。-`ω´-)
「次は利き腕、攻撃用の腕か」
「斬撃の腕は、見た目通り斬りの威力を秘めます。殴打と八つ裂きは、叩く威力を秘めます」
「刀剣は一度退治したし、八つ裂きは珍品博物館に飾ってある。ここは新しい形として、殴打の腕にしておこう」
可能ならば、別に腕が二本である必要は無い。
デイゴンのように四本でも、カーリーのように六本でも問題ない。むしろその方が強そうだ。
ま、ゲートキーパーは頭が悪そうだから、斬るよりも叩く方がお似合いだろう。
それに、冒険者の主力は鎧を着ていることが多い。
硬い鎧相手には、叩く方が効果的なのだ。
「次は防御側の腕か。どれも変わらないな」
「火盾の腕、冷盾の腕、雷盾の腕。それぞれの属性を防ぎます」
「それじゃ、ゲートキーパーはアンデッドみたいなものだから、ここは炎耐性を付けておくか」
弱点を補う意味でも、この選択がいいよな?
どうせなら右手はさっきの三本、左手はこの三本全部付けたらいいのにね。
「最後は下半身か」
「敏捷の脚は文字通り素早さ、剛健の脚は持久力を得られます」
「スピードかな。通常でも耐久力ありそうだし」
長期戦を視野に入れるか、敵のヒットアンドアウェイ対策を講じるか。
どちらも一長一短だなぁ……
ま、ここはスピードを取って、敏捷の脚にしておこう。
「よし、パーツを選んだよ」
「それではフリンジにある彫像前へと向かいましょう。そこで儀式を行います」
「了解っ」
こうして、さらに荷物が増えた状態で、再びフリンジへと向かった。
彫像前と言えば、元々ゲートキーパーが居たところだ。
あの像はやっぱりシェオゴラスなのかね?
………
……
…
レルミナに率いられて、フリンジへと逆戻り。
空は相変わらず白い雲で覆われている。
未来はまだ明けないのか――
「さて、ここで何をしますか?」
「儀式を始めますよ。まずはゲートキーパーの肉体を、実体化の泉に投げ入れるのよ」
「実体化の泉とは何か?」
「これよ」
レルミナが手を振りかざすと、広間の中央に大きな水たまりのような場所が現れた。
まるで、銀河系を上から見下ろしたような……
オリオンのベルトみたいなものかな?
「ぽぽいのぽいっと」
「あなたが落としたのは、金のゲートキーパー? それとも銀のゲートキーパー? それても肉のゲートキーパーかしら?」
「全部!」
「欲が深すぎ!」
とりあえず、金のゲートキーパーを指さすつもりが、間違えて肉のゲートキーパーを指さそう。
「はい、準備完了。次は?」
「肉は火と同じく、燃料を必要とする……」
燃料が何かよくわからんが、どうやら皮膚の膜らしい。
ぽいっと骨キノコを投げ込んでやる。
「血と栄養。それは存在という海岸に、命という真珠をもたらす大洋……」
「なんね? ホエールズ?」
「血のリキュールを投げ込みなさい」
「はいよん」
同じように、血だまりから集めてきた赤い液体を投げ込んだ。
「骨と髄は、身体と骨格を形どる……」
「骨中の髄ですね?」
「入れなさい」
今度は骨のオブジェクトから採集してきたものを投げ入れる。
「空気の所産である呼吸は、運動と脈動する魂の根源……」
最後に残った息吹のエッセンスを投げ込んでやった。
「これっ、私が言ってから入れなさい」
「タイミングとか関係あるん?」
「雰囲気を大切に!」
「なんでやねん」
しかし、四つの素材を投げ込むと、実体化の泉は大きく輝くのであった。
銀河系が準恒星状天体、すなわちクェーサーのようになったのだ。
「そして最後。魂の光源たる肉体の光……、すなわち、知覚、思考、記憶、想像……。我は汝を召喚する、肉の纏い手! 真の肉なる肉体よ! 汝が種を産みし、オブリビオンの海より!」
「やたらと肉が多いのぉ」
「祭壇に来たれ! この身体と結ばれよ! 肉体の元素が肉体の精髄と交わらん! 究極の生命、永命なる者が現世に繋がれん!」
「否定ばっかししてら」
そして、レルミナの声に合わせて、実体化の泉からゲートキーパーが立ち上がった。
ん? ゲートキーパーにしては、小さいような?
そういえば、パーツの大きさは、量産型ゲートキーパーと同じサイズだったような気がするぞ?
「名誉あるデイドラよ、零落を恐れることなかれ! 汝はこの神殿の聖者とならん! 戦慄の島の番人として、未来永劫、汝がアトロナックをこの身体に縛り付けん!」
すると巨大な光が実体化の泉を包み、量産型ゲートキーパーの姿を覆ったのであった。
そして――
目の前の光が消えた時、見覚えのある巨体が目の前に姿を現したのだ。
「私の坊や。あなたの定めを全うする時が来たのよ。この地を、シェオゴラス様の許可無く立ち入ろうとする者どもから守りなさい」
ここに、ゲートキーパーは再生したのであった。
俺は既にシェオゴラスから認められているので、目の前にいるこいつも大人しいものだ。
今の敵は、オーダーのみだろうね。
「早速敵がおいでなすったわ。殺しなさい! あなたの真の力を見せておやり!」
敵とは何かと思ったら、オーダーの騎士一団がここまで攻め込んできていた。
パスウォールの最終防衛ラインは突破されたのか?
それにしても、敵のオーダー・オブ・プリーストに見覚えが……?
「むっ、これはいかん!」
その見覚えのあるやつは、騎士が全てゲートキーパーに始末されるや否や、一目散に逃げだしたのであった。
この分だと、オーダー軍が狂気の門を通って戦慄の島に侵入するのは不可能になったっぽい。
ただし、島の内部にもオベリスクがあるから、そこから現れられたらどうしようもないけどね。
「で、なんしょん? フェラスやん、裏切ったん?」
「やっぱりシェオゴラス側に付くよ! ゲートキーパーが再生されるなんて計算外だ!」
「そんなに主義主張をコロコロ変えてええん?」
「主義主張など、生きるための方便に過ぎんよ! ゲートキーパーになんか勝ち目は無いよ!」
「ま、そうしたらそれでいいけどね。ただし、ゲートキーパーは、お前を敵とみなしているっぽい」
「ひえぇ!」
フェラスに神のご加護がありますよう、アーメン(^ω^)
こうして、フリンジは再びゲートキーパーを得た。
これで、オーダー軍に狂気の門を突破されることは無くなったわけだ。
骨の矢はもう作らせないし、レルミナも勝手に泣くなよ。
そして白い雲に覆われていた空は、気がつけば紫色っぽく輝いていた。
この空模様は、何を意味しているのだろうか――
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