無防備な軍団 その1 ~オーダー軍の襲撃?~
フリンジにて、ゲートキーパーの再生は果たした。
そこで、ニュー・シェオスに戻って、このことをシェオゴラスに報告しなければならない。
なんだかじじいの使いになっているが、とりあえず今の肩書は「シェオゴラスの使者」である。
この先展開がどう転がるかわからないが、戦慄の島を守るためにじじいの命に従ってやろう。
ゲートキーパーを再生して以来、空模様は紫の稲光のする荒れ模様だ。
今、戦慄の島は荒れている。
オーダーが勝ってグレイマーチが完了するか、シェオゴラスが勝って戦慄の島を守り切るか。
俺の動き次第で、全てが闇に消え去るか、思い通りの世の中になるか――
シェオゴラスに会う前に、宮殿で見落としていたオブジェクトを見ておこう。
まずはシルの心臓のレプリカ、でかいな。
俺はシル公爵を打倒し、その心臓を捧げることによってディメンシア公爵となった。
「りんごみたい」
「俺もそう思ったw」
もう一つは、ウルフリの兜。
アグノンの冷たき炎を持ち帰り、ニュー・シェオスに偉大なるかがり火を灯したのだ。
そして俺は、公爵になる権利を手に入れたのである。
ん、順序が逆だね。
――と、寄り道をしてからじじいに謁見である。
「新たなゲートキーパーだ! すばらしいぞ!」
「それほどでもない」
「やはりお前といると、何かとあるな。おかげで邪魔者も寄り付かん」
「ユーが嫌われているだけネ」
「だまらっしゃい。レルミナにも気に入られたようだな」
「そうなん?」
いや、俺が支配者になったらレルミナの研究は打ち切らせるつもりで、それに反抗したら処分するつもりなのだがね。
気に入られたのなら、ん~……
必要悪? いや、止めさせよう。
「いとしの公爵よ、気に入られたと言っても、アッチの意味ではないぞ」
「わかっております。そんなの緑娘が怖くてアッチはできません」
「あっ、またミドリムスメって言った!」
「こほん……(。-`ω´-)」
こうして、外部からのオーダー襲撃は防がれることとなった。
あとは、内部のオベリスクから生じたオーダーの始末を一つずつ――
「てーへんだーっ、てーへんだーっ!」
その時、ニュー・シェオスの宮殿に飛び込んでくるものが一人。
誰かと思えば、金色の方の衛兵、ゴールデン・セイントだ。
ディメンシア公爵となってからは、ダーク・セデューサーの方に慕われているので、とんとご無沙汰であったが、一体何事だ?
「シェオゴラス神! 非礼をお許しください。お力が必要なのです!」
「なんじゃい、言ってみい」
「ブレラックがオーダーの襲撃を受け、壊滅状態です!」
「さてさて、事態は急展開を迎えたわけだ。悪かろうが、新しいことはよい、実によいぞ」
さっそく始まったな、内部に巣くったオーダー軍の攻撃が。
外部からの増援は望めないので、内部の物を殲滅していけば、いずれはオーダー軍は瓦解する。
それをやるのは俺の仕事か?
それともいよいよじじい自らが陣頭に立つのか?
そう、あのマーティン・セプティムのように――
「おい、いとしの公爵よ」
「あんたは、いとさんでええ」
む、文法はあっているか?
いとしの否定はいとさんで。
「つれないことを言うな。これは、とりわけエキサイティングな急展開だと思わんかね?」
「俺の経験上、割とよくある展開だけどね」
例えば、ブルーマの魔術師ギルドが襲われて壊滅したり、ブラックウッド商会が暗躍したり、グレイフォックスがあっぱれだったり、エルスウェアでトゥルットゥーだったり、クヴァッチの英雄に祭り上げられたり、緑娘が闇の一党に――(。-`ω´-)
一つの拠点が襲撃を受けたから何だというのだ。
守りたければ増援を送れ、緊急に、しかも最大限の兵力をもってな。
もし奪われてから取り返したければ、扇動者を紛れ込ませて内部から崩壊させればよい。
さあ、じじいよ、どう出る?
「わが王国で最もピチピチ、かつ唯一の貴族様にピッタリのお仕事だ!」
「喜べピチピチギャルのミド――テフラよ。狂神はそなたの戦力を欲しておるぞ」
「なによそのピチピチギャルって!」
「知らんのか? じじいが転職してでもなりたがる、至高の職業だぞ」
なんだかまた俺に丸投げしそうな展開なので、緑娘に丸投げしてみるテスト。
「貴族と言えばおぬしだけじゃろが」
「だからテフラをマニア公爵にしたらええやん」
「それでもよいが忘れたのか? マニアの統治者が替わる際、前公爵はグリーンモートを摂取し、新公爵がその生き血を祭壇に注がなければならないということを」
「あー、あー、そんなしきたりもありましたねー」
仕方がないな!
俺が行ってやるよ!
それこそ、俺の存在自体が最大限の兵力となりうるのだからな。
「では、どうしろと言うのだ?」
「わが砦にオーダーが攻め入ったということは、事態が悪化したことじゃ」
「そのぐらいわかります」
「つまり、オーダーは策を試みたわけだ。得意でもないのにな!」
「いや、どこかの砦を奪い取って拠点とするのは、常套手段だと思うぞ」
オーダー軍は、フリンジという絶対的な拠点を失ったのだ。
そうなると、新たな拠点をどこかに定めなければならない。
それがたまたま何だっけ? ブレラックだっけ? そこが選ばれただけだ。
別にこれまでに訪れたことのある、アイシャン砦でも、サイラーンの砦でもどこでもよかったはずだ。
どちらかといえば、そのことを予測せずに、砦の防衛を怠ったじじい側の失策というものだ……。
「伝令から詳細を聞いてみるのじゃ。まだ聞いてないならな。まだだろう?」
「傍でずっと見ていたくせに、嫌味じじいだなーっ」
「――というわけで、俺が増援として赴くことになった。状況説明してみい」
「公爵どの、大変です! 直ちに来援を!」
「だからそう言っておる。――ってか、マニア側の衛兵も俺のことを公爵とみなすのな」
これは意外だった。
ディメンシア公爵となったのに、マニア側のゴールデン・セイントも首を垂れる。
おそらくセイドンが裏切ったので、俺が双方を兼任している状況なのだろう。
ならばこの立場を利用して、マニアとディメンシアの融合を果たすか? 聖魔融合じゃないけど。
この伝令は、イスミという者に送られてきた者らしい。
ブレラックは今もなお攻撃を受けているので、すぐにでも援軍を送ってほしいと。
「オーダーの軍勢が占拠してしまいました! 砦を奪還せねばなりません!」
「なんや! 防衛線はもう負けていて、奪還戦なのかよ!」
防衛のための援軍と、奪還作戦とでは意味合いが違うではないか。
やだなー、その砦には、要塞砲とか備えられてないだろうな?
「ところでイスミとは?」
「残り僅かな軍を指揮している者です。ブレラックの外で貴方をお待ちしております。どうかお急ぎを、時間がありません!」
「慌てるな、もう奪われたのなら、急いでも遅れてもそれほど戦況に影響は出ない。で、ブレラックとは?」
「我々の本拠地、つまり戦慄の島における聖域です!」
「なるほど、衛兵の本拠地から奪う。オーダー軍も考えたな」
末端の砦を占拠した所で、局地的な戦況しか変わらない。
だが本拠地を奪えば、指揮系統を乱されて、他の砦も落ちやすくなるというものだ。
これはのんびりしてられないな。
遅れたら遅れるほど、次々に砦を落とされるだろう。
「ブレラックの聖域を失えば、わが一族は滅びます」
「もう占拠されとるんやん。まあいいや、作戦だが帝国軍の軍服と、帝国の船を一隻」
「帝国軍、シロディールですか?」
「おっと違った、砦の場所を教えてくれ」
伝令に教えてもらった砦の場所は、ここである。
戦慄の島最北端かな? マニア地域だね。だからゴールデン・セイントの本拠地だったわけか。
砦の奪還が終われば、またミリリを訪ねてみるか。
「風のように発ち、自体を解決し……偉業を成せ!」