ブラックルート・レアにて ~黒き根の穴~
ディメンシアの夜は、かなり陰気で暗い。
俺たちは、帰り道はマニアを通って帰ることにして、パスウォールの村があった方角へと進路を向けた。
その途中で、またしても同じような、木の洞が洞穴化した場所を見つけたのだった。
「またここにも入るの?」
「見かけた場所には、全部立ち寄ることにしたのだ」
「あなたも暇ねぇ」
「冒険者が暇なのは良いことさ」
「何故?」
とまぁ、この洞穴もグラマイト系だったわけで。
こいつらときたら、遺跡でも洞穴でもどこにでも住み着いているゴブリンみたいな奴だ。
シロディールだと、死霊術師系とか、デイドラ系、モンスター系といろいろなパターンがあったけど、ここは大抵グラマイトだな。
木製の居住区があったので、誰かが住んでいるのかな――と思った矢先にこれだから、もう期待できない。
それでもこいつらは、狂気の鉱石を持っていたり、各種鋳型を持っていたりするので、片っ端から始末していく価値はあるわけだ。
ここはあれと同じだね、不浄なる森って所と。
木の洞の中に、木製の小屋を建てたりして住み着いているのだ。
しかしこんな程度の文明で、何故祭殿にある石像を作れたのだろうか?
やはり、グラマイトを信仰する狂った奴が居るってことなのだろうか……
しかしこの洞穴が、他の場所と違うと感じる部分は、所々にナールを閉じ込めている事だった。
こいつを閉じ込めてどうするのだろうか?
琥珀を量産しているのかな?
グラマイトが琥珀を集めて、何の意味があるのか? という疑問も生まれるが……
洞穴を奥へと進むと、閉じ込められていないナールが居たりする。
そして、この洞穴のナールは、なぜか襲い掛かってこないのだ。
「なんだろう? 外では見かけたらすぐに襲い掛かってくるのに」
「なんだか大きいね。成熟したナールは、本当は賢いんじゃないかしら?」
「スプリガンみたいな奴だからな。スプリガンにも、表では敵対しているのばかりだったが、遺跡の奥などでは中立ってのも居たな」
だかその大人しいナールも、グラマイトとは仲が悪かったりするわけで。
「これはあれじゃないのか? 閉じ込められていたナールが脱走して、反乱を企てたとか」
「あなたはどちらの味方かしら?」
「襲い掛かってこない方の味方さ」
この洞穴に住み着いているグラマイトは襲い掛かってくる。
しかしナールは襲い掛かってこない。
それならば、どう行動すべきかは明らかだろう。
そしてこのナールが反乱を起こしていた広間には、珍しい物が入っているチェストがあったりする。
「ソウルトマト、魂のトマトかな?」
「食べ物? トマトなんて珍しくないじゃない」
「いや、こいつはソウル・ジェムのように、モンスターの魂を閉じ込められるみたいだ」
「トマトに閉じ込めて、どうするのよ」
「天の邪鬼が持っているトマホークとデスドラゴンが持っているデス・サイズが、とまとです」
「何それ意味わかんない!」
これも何だか珍品っぽいので、珍品博物館のウナに見せて反応を確かめよう。
「ところでトマトの歌って知っているか?」
「知らないわ」
「♪トーマトートマートトーマトートマートトー、マートトーマトートマートトーマトートマー、トートマートトーマトートマートトーマトー、トーマートートーマートートー。どうだ?」
「トマトとしか言ってない」
そんな感じに、グラマイトを始末して狂気の鉱石を集めたり、各種鋳型を入手したりして、奥へと進んでいった。
閉じ込められているナールはどうするか迷ったが、とりあえずこっちからは手出ししない。
脱出できたナールが、仲間を救出すればよいのだ。
あくまで中立の関係、ナールと共闘する予定は、無い。
「それで、何を手に入れたのかしら?」
「大量の狂気の鉱石と、狂気の鋳型だね。また装備を作ってもらったらレビューしてもらうぞ」
「どうせ似合わない癖に」
ひょっとして緑娘は、似合わないから頓珍漢なレビューをしているのだろうか?
まぁ、魔術師に重装備は似合わないだけうけどな。
手に入れた物は、こんな感じ。
やたらと狂気が多いが、気にしてはいけない。
この世界では、狂気が普通なのだから――
ぬ、キュイラスの鋳型が無いな。
まぁどうせ使わないから気にしない。
緑娘のレビューを聞いたら、保管庫行きだ。
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