ハードスクラブル・キャンプ ~再会?~
さて、結局洞穴内で夜を明かすことには緑娘に反対されたということで、ディメンシアの地で夜の進軍となった。
まぁ俺もグラマイトの住処で寝ようとは思わないけどね。
グラマイトは始末したけど、朝起きたら中立のナールが隣で寝ていた、なんとことになったらびっくりするからな。
パスウォールの方向へ向かいながら街道を進んでいくと、誰かが誰かに攻撃していた。
相手はゼロットの様だから、こっち側から弓を放っているのは異端者ヘレティックか?
――と思ったけど、普通に鎧姿なので違うと見た。
それにヘレティックだったら、こっちにも襲い掛かってくるはずだ。
「やぁ、君はラムリーザ君じゃないか。ゲートキーパーは死んだ、もう俺たちの行き来を邪魔できないぜ」
「誰かと思えば氷血のジェイレッドさんじゃないですか」
そこで戦っていたのは、ゲートキーパーを退治するために共に戦ったジェイレッドだった。
そういえば狂気の門で、俺たちはマニアに、彼はディメンシアへと分かれて進んだっけな。
ということは、そろそろパスウォールが近いのかな?
「ジェイレッドさんはこんな所で何を?」
「ディメンシアはゼロットの住処になっていた。俺は奴らの仲間になるつもりはないので、片っ端からハントしてやってたぜ」
「それはそれでいいけど、この辺りに宿屋無い? パスウォールは近い?」
「この近く? 痩せ地キャンプならあるぜ」
キャンプか、丁度いいな。
今夜は一晩そこで明かすか。
俺たちは、ジェイレッドに案内させて、そのキャンプへと向かった。
暗くてよく分からないが、二つの建物を擁するキャンプ、ハードスクラブル・キャンプ――すなわち不毛な地、痩せ地キャンプだ。
「丁度三つ寝床がありますねー」
「この人と、チロジャルと、あたしたちの寝床ね」
「丁度三つ寝床がありますねー!」
「今夜も寝かせないわよ」
「丁度三つ寝床がありますねー!!」
緑娘は、他人が居てもベッタリしてくるらしい。
「どうだい? 君たちの旅は順調かな?」
「シェオゴラスに会っていろいろとねー」
「ほぉ、狂気の神に会ったのだな」
俺は、ジェイレッドにこれまでのいきさつを語った。
マニアの地を進み、アイシャン砦という牢獄、ヘイルの村で出会った茨の騎士団。
そしてスプリットの村での分裂騒動に、ハイクロスの村での生物植物調査。
ニュー・シェオスには、ブリスとクルーシブル、二つの地区がある事や、ファイトクラブ(だと思う)の話。
そして、俺たちがゲートキーパーを退治したことで、侵入者が激増したのでゼディリアンの罠を修復させたことだ。
ハイクロスのにーにーアルゴニアン、ブリスの壁怖い症候群やクルーシブルのカジート怖い症候群、暗殺の依頼(神風の仕業だからな!)の話、フェルムーアの村での王様と女王様の話は伏せておくことにした。
もちろんキャンプでの緑娘とのえっちなどは、語っていない。
今夜えっちすることも、無いはずである……(。-`ω´-)
反対にジェイレッド側は、彼の言った通り、この周辺でゼロット狩りをしていただけだと言う。
ゾンビ犬とかハンガーとか、とにかく狩りばかりしていたそうだ。
彼は冒険者というよりは、ハンターなのだろう。
とりあえず、敵が居たら狩る。単純な奴だ。
今夜はもう夜も遅いし、それほど積もる話も無いので、お互いに状況報告をし合った後で、すぐに寝ることにした。
「ねー、ほんとうにやらなくていいのかしら?」
「だから彼が居るだろう?」
「残念ねー、忘れられない夜にしてあげたのに。後悔するわよ」
「ほーお、君とは今夜一晩だけの関係だったのな」
「強がってる、強がってる」
――というか、今気がついた。
今後は二人きりでのキャンプは有りえないということに。
犬のチロジャルが、すぐ傍に寄り添ってきているということに。
まぁ緑娘なら、犬が居るだけで遊ばない――いや、違うな。
こいつこんな格好しているくせに、過去の出来事が嘘なのか、膜が再生したのか知らんが、ホープフル・キャンプでの夜が初めての証拠を示したのだ。
煽情的な格好は趣味なだけで、本当はすごく真面目な――でも陽動作戦ではすぐに「どちかん」だからなぁ……
とりあえず、寝る時はリボン外そうな。
………
……
…
たららら、らったんたーん♪
1なら、たららららったん、たららーん♪
ん、意味わからんね。
しかも二度目のネタだ。
翌朝、結局ディメンシアの朝は、全く清々しくない。
朝からどんよりどよどよ、これだと常人もすぐに沈み込んでしまうだろう。
ジェイレッドみたいに「狩りだー」などと張り切っていない限り、みんな病弱になったりしてしまうものだ。
そのジェイレッドはすでに起きていて、別の棟で食事中だったりする。
「これ全部食べるのですか?」
「グラマイトの卵焼きに、黒いヤニ、そしてフェルムーアの沼ワインだ」
「沼ワイン、飲むんだ」
あれは、確か下水に沈んだ壺から見つけたワインだった。
フェルムーアの沼ワインに、フェルムーアの胞子ワイン、飲む人居たんだ。
そう言えば、フェルムーアと言えば王様と女王様が居て、ウォータールートの種子を集めている村だった。
胞子ワインは、やっぱりそのウォータールートから醸造しているのだろうな。沼ワインは、あの水溜り……
やっぱり飲む気にならないけどなぁ……
「狩りに行かんとな、すぐにだ」
「朝から元気ですなぁ」
食事が終わるなり、ジェイレッドは早速狩りの準備を始めたのだ。
それなら俺たちも、マニアの地を目指して西への旅を再開しますか。
「そいじゃまた」
「またねー、ジェイレッドさぁん」
「またのーう」
「わんっ」
早く、こんなどんよりとした地から抜け出したいものだ。
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