ゼディリアンの遺跡にて ~オーダーの騎士の襲撃~
ゼディリアンの遺跡にて――
3つのフォーカス・クリスタルを判断の接続器に設置し直し、判断の減衰器を使って巨大な水晶の塊を調律して、ゼディリアンの遺跡を復旧した。
丁度その時、三人の冒険者が迷い込んできたのだ。
ゼディリアンの管理人であるキリバン・ニランディルに、殺すか狂わすかの二択を迫られ、殺すのは忍びないと、仕方なく狂わせて冒険者の侵入を阻んだのである。
キリバンからお礼に剣などを貰い、シャオゴラスの元へと報告に向かおうとして時――
歓迎の間を出たところ、突然地面から生えるようにクリスタルのようなものが出現したのだった。
「これは?」
「いかん!」
「いかん作戦?」
疑問に思って振り返ると、キリバンは妙に真剣な顔つきになっていた。
「こいつらを始末するんだ!」
「こいつら? ぬおっ?!」
そして、奥から三体の――クリスタルの騎士?
なんだか初めて見るような奴らが現れたのであった。
そしてキリバンは、そいつらに飛び掛かっていったのである。
あ、犬のチロジャルもな。
多少混戦になったが、三体が重なったところに霊峰の指改を撃ち込んで、終わりとするのであった。
なんか一体外れたような気もするが、そこはチロジャルとキリバンの活躍で、さっさと始末したのである。
「そんな非常識な、ありえんことだ!」
「なんだそんなに驚いて、こいつらは何?」
「君は伝説を知らないのか?」
戦いが終わると、キリバンは非常にうろたえた様な感じだった。
いや、俺もこんなの見たこと無いから驚いてはいるが、それでいちいち感情的になっていては冒険者は務まらぬ。
ん、俺はいっぱしの冒険者になりつつあるのだな。
キリバンの話では、奴らはナイト・オブ・オーダー、すなわちオーダーの騎士と呼ばれているものだ。
ちなみに俺は、ナイト・オブ・ナイン、九大神の騎士であると同時に、ブレイズの騎士、そして茨の騎士である。フラー!
オーダーの騎士とは魂のない悪魔で、島に点在しているオベリスクで出来ているそうな。
そのため、ゼディリアンの共鳴器へと引き寄せられたものだという。
「それはいったいどういう意味なんだ?」
「そういうことなんだよ。君は急いで、奴らが現れたことをシェオゴラス様に報告するんだ!」
「はいよ、わかったよ」
とりあえず敵だということは分かった。
共鳴器へ引き寄せられる理屈はわからんが、まぁそれは俺が気にしても仕方ないだろう。
「う~む、こいつらは一体何者なのか。久しぶりに考察タイムだ、君はどう思う?」
「よくわからないけど、この世界に侵入するものを排除する装置、それと同じ素材でできているから引き寄せられてしまうんじゃないかしら?」
「ちょっと違うな」
「何よ」
「この物質はエビリアル鉱石からできたエビルメタルで、魔王が人間どもの手に渡らぬように自分の声を吹き込んで送り込んできたのだ。だからこの鉱石に込められている魔王の声に導かれてこいつらはやってくるのだ」
「何そのエビルメタル。オベリスクで出来ているって言ってたじゃないのよ」
「むっ、オーダーの心臓発見」
「気持ち悪いわね」
何に使うのかは分からないが、一応錬金素材っぽいので持ち帰ることにした。
ちなみに、牢屋のように閉ざされた間では、先ほどの三人の冒険者が頭を抱えてうずくまっていた。
「戦士と魔術師と盗賊、バランスの取れたパーティだが、シェオゴラスの狂気には勝てず――か」
「あのパーティ、回復役が居ないじゃないのよ」
「うちのパーティも回復役居ないけどね」
「あたしが武闘家、チロジャルが戦士、あなたが回復役よ」
「ほーお、犬が武器を使っているようには見えぬが」
「チロジャルは鋼のキバを装備しているのよ」
「その靴は武器じゃないのな」
よく考えたら、回復役は回復術を極めた魔術師なのだよね。
世の中では僧侶が回復役だと言われることも多々あるが、この世界では僧侶とはお坊さんの事を指す。
すなわちクヴァッチのお坊さんだった、マーティンの様な人を僧侶と言うのだよ。
回復魔法を極めて回復役、すなわちヒーラーを目指したい諸君。
各町にある聖堂に居る僧侶ではなく、魔術師ギルド、アンヴィル支部へと赴いて勉強したまへ――
ゼディリアンの遺跡を出ると、空はさらに薄暗くなっていた。
元々どんよりとしていたが、よりどんよりとしている。
つまり、日が暮れるとさらに陰気さが増すというのだ。
やっぱり嫌やだな、ディメンシア……
キャンプか村をを目指して戻っていると、湖の向こうに何かを祀っている祭殿のようなものを見つけたりした。
湖にはゲルマイトやバリウォグ、スケイロンがうろついているが、そいつらを蹴散らして祭殿へと向かう。
「はんにゃあはあらあ、はんにゃあはあらあ!」
「で、ここは何の祭殿なのかしら?」
「デイドラプリンス、ミドリムスメの祭殿であった」
「何を言ってんのよ」
くっそw
ただのグラマイトを讃えた祭殿だった。
なんでこんなのが神様のように祀られているんだよ。
絶対おかしいだろ?!
いや、狂気の世界だったか……(。-`ω´-)
「神への生贄とは、昔から若く美しい女性だと言われているのを知らんようだな」
「ふーん、美しいって認めているんだ」
「さて、もう一度聞いてみるが、どうかな? 俺に協力してくれるかな?」
「最初から協力しているじゃないのよ」
駄目だ。
もうこの世界の祭殿らしき場所には、期待しないことにしよう。
グラマイトがこんな石像を作る文明を持っているのか?
それともグラマイトを崇拝するといった狂った奴が居るのか?
いや、狂気の世界だったか……(。-`ω´-)
さて、一晩の宿を求めてフェルムーアの村まで戻ってきた。
三軒家があったようだが、宿屋は無いのかな?
「なんしょん?」
「シンダンウェの奴は、家の片づけにかかりっきり、俺たちは自由だひゃっほー!」
「あほだろう、先輩みたいな態度取りやがって」
「暴君打倒に感謝よ。でも私は女王として、この島の統治に忙しいのよ!」
「あほだろう、あひるのおもちゃで遊んでいるだけじゃないか」
「ねぇあなた、このあひるが欲しいわ」
「緑娘も狂気に囚われつつある……(。-`ω´-)」
やっぱこいつら自分たちが遊びたいだけで、農場の管理人シンダンウェを陥れただけだ。
そんでもって、随分とお気楽な王様と女王様が居たものだ。こいつらが治める島とやらは、速攻で滅亡するだろうな。
いや、最初からそんなの存在しないが……
存在しないから滅亡などしない。だから、永遠に繁栄し続けるのだ。
そう、「今日は負けないよ」と試合が無い日に言うように――
あれ? なんだかおかしな理論だな?
とにかく結局この村には宿も無く、まとめ役のシンダンウェも家を荒らされた後始末で大変で、旅人に宿を貸す余裕はないわけだ。
自業自得とはいえ、仕方がないのでこの村を後にする。
どこかにキャンプがあるはずだから、そこで一晩明かすとしよう。
「ルート変更! ディメンシア地方は迂回して、マニア地方を通って帰る」
「遠回りにならないかしら?」
「こんな陰鬱な地方はもう嫌だ。俺はマニアを支持する!」
「どうぞ、ご勝手に」
南に向かう前にあった分かれ道では、今度は西を選んで進むことにした。
ここから先へ進むと、パスウォールの村へ戻るような気がするけど、明日はマニアの明るい世界で過ごしたいのだから仕方がない。