タロスの祝福 ~ペリナル・ホワイトストレークの化身~
聖剣を手に入れて、これで剣、メイス、キュイラス、兜、篭手、グリーブ、ブーツと七つの聖騎士の遺物を入手したことになる。
まだ遺物があるとしたら、アクセサリーぐらいかな。
というわけで、再び九大神修道院へと戻ってきた。
ん、まだら馬とかと比べたら、やっぱりユニコーンの方が立派な感じだね。
野郎を乗せているから、似非一角獣っぽいけど気にしない。
「騎士殿!」
「違う!」
「アークメイジ殿!」
「そうだ! 何だ!」
俺を出迎えたのは、セドレット卿だった。
騎士と呼ばれるよりは、アークメイジと呼ぶべきなのだ。
俺は剣の腕前はイマイチ。騎士団など似合わない。
「預言者がお越しです! たった今到着されたばかりです!」
「予言者? ああ、アンヴィルの予言者か」
「彼はまるであなたの到着を知っているようでした。彼にあなたの迎えに出るよう言われていました!」
「それはご苦労様」
セドレット卿は、俺を修道院の脇にある教会へと案内した。
なにやら予言者は、教会に集めた騎士達に教えを説いているところらしい。
アンヴィルで会った時は胡散臭いじじいだったが、実は本物だったというのだろうか……
教会に入ると、まるでそこは学校の授業を彷彿させるような……
そして、久々にマシウに会ったような気がする。
「あっ、アークメイジ殿も戻ってきたのですね」
「ん、お前も遺物探しは終わったのか?」
「もうばっちりですよ」
「頼むぞ。俺は魔導師だから、騎士はお前にしっかりやってもらうのだからな」
「こりゃ、アークメイジにしてシロディールの英雄殿、こっちゃこい!」
マシウと雑談していたら、予言者に呼ばれてしまった。
グランド・チャンピオンと呼ばなかったことを評価して、素直に従ってやることにする。
あの台詞を発した瞬間、予言者の称号は認めずに熱狂的なファンとみなしてやるのだ。
「なんぞ?」
「汝は名も無き影たちの中から、伝説の舞台へと躍り出た! これまで汝が成してきた全ての偉業も、今の姿の前には色褪せて見える!」
「佞言断つべし!」
やっぱりこいつは、胡散臭いじじい決定。
なんぼなんでも、ただの遺物集めの旅が、メエルーンズ・デイゴンの侵略からタムリエルを救った偉業を超えるわけなかろう。
ただの遺物集めが、死霊術師の長マニマルコの野望を食い止めたことに勝るわけがなかろう。
どろぼうさんや暗殺稼業に比べて優れているという点は、否定しないけどね。
とりあえずじじいの佞言は遮断して――
「汝は羽根を失いしウマリルの災い、ペリナル・ホワイトストレークの化身となったのだ!」
「だから佞言!」
「今こそ汝の運命を全うする時! ウマリルはガーラス・マラタールという古代神殿に身を隠した! 汝はそこに向かい、かの者を滅ぼさねばならない!」
「…………(。-`ω´-)」
すごいなこのじじい。
どんどん話を進めちゃっているよ。
「ではその神殿に行って、ウマリルを退治したらよいのですね」
「まだ早い! ウマリルと対峙したところで、ペリナルの二の舞は避けられぬ!」
「では、どうしろというのだ?」
「かつてのエイトに、さらなるワンが加わり、ナインとなった!」
「意味わからんわ!」
つまり人間より千倍優秀なスーパーロボットに、世界のホームラン王が加わり、ナイン……、ナイン――、ナンバーナイン、ナンバーナイン、前衛音楽になった?
やっぱり意味がわからん!
「タロスだよタロス! タイバー・セプティムの神格化により、神の顔ぶれも変容した。つまりエイトがナインになったのだ!」
「タロスは英雄の名にふさわしいが、神ではない! 色っぽいメリディアを加えたらいいんだ!」
「にゃんじゃとこのデイドラ信徒の罰当たりがーっ!」
なんか悔しいので、八大神で通してやった。
腹が立ったので、ついでに帝国の将来、タロスが神から外される呪いをかけてやった。
その時になって後悔するなよ!
つまらぬ諍いは置いといて、ウマリルを仕留めるにはタロスの祝福が必要だと言う。
俺は、この世界の守護者であり稀代の戦士たる証として、その祝福を授かったのだ。
つまり、エイトによる古の賜物である遺物と、ワンによる新たな賜物が揃ったとき、ウマリルと対峙する準備ができたと言うのだ。
このタロスの祝福には、死んだウマリルを霊界まで追い払うことができるらしい。
そうすることによって、ウマリルの肉体と魂を完全に滅ぼす事ができるのだ。
まずはウマリルの生きた肉体を滅ぼし、その後にタロスの祝福を使い体から離れたウマリルの霊魂を追いかけ、魂を滅ぼせということだ。
あと予言者に聞いたところ、ウマリルはデイドラと融合したとのことだった。
それでオーロランとか言う手先は、デイドラの心臓を持っていたのだね。
「汝の騎士団は、ガーラス・マラタールに集まるのだ! 全ては汝と汝らにかかっておる!」
「おおっ!」
予言者の演説は終わり、騎士団は掛け声一つ、一斉に教会から駆け出していった。
そして予言者は、騎士団の勝利を神に祈るのであった。
「というわけで、最終決戦らしい」
「そのようですね」
「先程言ったとおり、俺は魔導師だから、騎士は任せる。聖騎士の装備を身に付けて戦うんだ」
「わ、わかりました」
「霊魂を滅ぼすのはお前には荷が重いと思うから、俺がやってやるけどね」
「よろしく頼みます!」
というわけで、ペリナル・ホワイトストレークの化身は俺ではなくマシウということにしておいた。
まあいいんでないの、剣で戦うことに限って言えば、マシウは俺よりも腕は上だ。
だから騎士はマシウにやらせた方が都合がよいわけだ。
たぶん装備が重要なのであって、中身は誰でもいいはずだ。たぶんね。
教会から出てみると、騎士団はどこか目掛けて走り去っていくところだった。
行き先はわかっておる、最終決戦地だ。
目指すはガーラス・マラタール。アイレイド帝国の最西端前哨地。
唐突に巡礼の旅から始まった騎士団の物語は、ついに最終章を迎えたのであった。
前の話へ/目次に戻る/次の話へ