聖騎士の剣 ~浄化の儀式~
さて、アンデルパル洞穴にベリック卿の墓があり、そこでベリック卿の霊が聖剣を使用していたという情報が入った。
そこで俺は、早速その洞窟へと向かってみることにしたわけだ。
洞窟の場所は、レイソン卿が教えてくれることになっている。
「そのアンデルパル洞穴とやらは、どこにあるのかな?」
「それは私が案内致します。騎士殿は、どんと構えていてくだされ」
「レイソンに問う。騎士と魔術師はどっちが偉い?」
「魔術師は全ての魔力が使用できますが、物理攻撃は苦手です。騎士は物理攻撃では全ての武器を装備できて、法力を半分だけ使用できます」
「んんん?」
なんだかよくわからんが、それってどちらが偉いのかな?
「問いを改める。聖騎士とアークメイジはどっちが偉い?」
「帝国の視点で見ればアークメイジ、神の視点で見れば聖騎士ですぞ」
「なるほどね」
こちらはなんとなく納得できた。
エイドラに仕える聖騎士、デイドラに仕える暗黒騎士とでもしておこう。
俺のように、デイドラの祭殿もエイドラの祠も極めた者は、暗黒聖騎士という究極の存在なのだ。
ん、意味わからんね。
餡子臭い騎士ということで。
「騎士殿、ここがアンデルパル洞穴ですぞ」
レイソン卿の案内で訪れた場所は、ブルーマとコロールを繋ぐ街道の中央辺りから北に少し道を外れた場所にあった。
傍には墓があったりして、これまで見てきた洞窟と少しばかり雰囲気が違う。
レヤウィン近くにあったアメリオンの墓のような場所なのだろう。
「よし、あとは俺に任せて君はここで待機な」
「騎士殿一人で大丈夫ですか?」
「むしろ一人の方が安心」
俺は乱戦状態にならないほうが戦いやすいのだ。
それにレイソンはここへロドリク卿と二人でやってきて、ベリック卿の霊に敗北して戻ってきたわけだ。
戦力として当てになるか? と問われると、俺としては自信を持って答えることはできない。
というわけで、俺は単身アンデルパル洞穴へと挑んだ。
洞窟の中は、広間になっていてそこにはいくつもの墓と砦のようなものが。
砦の脇には、ブルワーク砦で見かけたガーディアンの像が立っている。
この像があると言うことは、ここが騎士に纏わる場所である、ということだ。
砦は立派なものであり、入り口の門も割りと新しい物であった。
ところでここには枯れ木が立っているけど、木が立っているということは、昔はここは洞窟ではなかったのかな?
それが何かの地殻変動で埋もれてしまい、その結果木は地下に閉じ込められて枯れてしまったと。
砦の中には、罠なのか何なのかよくわからないものがあったりした。
橋の床には感圧板のようなものが敷かれていて、上から鉄球がぶら下がっている。
もしも罠なら、鉄球は天井近くに仕掛けられていて、感圧板を踏んだら落ちてくるといった仕掛けで無ければならないはずだ。
そこで俺は思いだした。
ここは既にロドリク卿とレイソン卿がすでに探索していたのだと。
しっかりと全部の罠に引っかかってか、一つずつ解除してかして進んでいったのだろう。
だが骨はそのまま残っていた。
倒しても倒しても、一定期間が過ぎれば復活するのか、他の場所から迷い込んできたのか。
もしもベリック卿の霊がリッチのようなものならば、改めて召喚しなおしたとも考えられる。
しかしリッチは死霊術師の成れの果て、騎士を目指した者がなるとは思えないけどね。
そして奥の部屋にはリッチの姿が。
骨が沸いていた原因は、こいつにあり。
リッチの居た部屋には、一人の騎士の遺体が。ロドリク卿だ。
これが野盗とかなら追いはぎするところだが、騎士の遺体には敬意を払ってそのままにしておく。
本当は連れて帰って埋葬してあげるべきなのだろうが、ここも一応墓場だからここで我慢してくれということで。
そして部屋の中央には、大きな棺が。これはベリック卿の墓だろう。
ということは、ロドリク卿はさっきのリッチにやられたということか?
俺はリッチの死骸を探ってみたが、聖剣らしきものを持っている風には見えなかった。
リッチはたいてい杖を持っている。そしてこのリッチも、例に漏れずに杖を所持しているだけだった。
ただ、この部屋からさらに奥へと通じる扉があったりする。
真打ちは、この奥に――?
そこに居たのは、白く輝く幽霊。こんな幽霊にはお目にかかった事が無い。
これまでに遭遇した幽霊は、九大神修道院の地下二階に居るような、半透明の騎士団。そういうのは、善良な幽霊に多い。
そしてもう一つが、赤黒かったりするローブを纏った幽霊。物理攻撃が効かず、魔力で戦うしかない悪い幽霊。
しかしこいつは、そのどちらでもない。
ちょっと近寄って様子を見てみるか。
ノーライフキングって奴かな?
剣を持った霊、あの剣がひょっとしたら聖剣かもしれない。
ロドリク卿とレイソン卿は、こいつと戦って敗北したのだ。
それではこちらは最高の破壊力を誇る魔法をぶっ放してあげよう。
霊峰の指最終形、プラズマ状のエネルギーをぶつけるプラズマ・ストリームだ。
これを食らって立っている事が出来たのは、メエルーンズ・デイゴンぐらいである。
流石に神には通用しなかったが、幽霊ごときはこれ一発で十分なので、ある。
早速手に入れた聖剣を装備してみる。
すると、その瞬間悪寒が駆け巡り、身体の力が抜けてしまった。
どうやら呪われた聖剣だったようだ。レイソン卿も言っていた、「剣が悪に転化したのではないか」と。
もしそうならば、彼の言っていたようにアーケイの祭壇で浄化させなければならない。
俺は聖剣を片手に、洞窟の来た道を戻って外に出た。
「おおっ、それは聖剣! ロドリク卿の仇は討たれた! 私は修道院に居る仲間達の元へ、この朗報を伝えに戻ります!」
「ちょっと待て、アーケイの祭壇はどこにあるのだ?」
「シェイディンハルにありますよ」
「ん、わかった」
シェイディンハルにあるのが、アーケイの聖堂というわけか。
一度どの町の聖堂が、どの神に対応しているのかまとめた方がよいかもしれない。
いや、別に突然敬虔なエイドラ信徒になるつもりはないけどね。
………
……
…
というわけで、シェイディンハルのアーケイ聖堂である。
アーケイと聞いて何を連想するか?
俺は何故か古代種の海亀を連想する。アーケロンとか居なかったか?
まぁ特にどうでもいいことだけどね。
――アーケイの聖堂では、今まさに襲撃が起きているところだった!
またあの黄金の鎧を身にまとったデイドラの心臓を持つ者が暴れているではないか。
祭壇の周りには、アンヴィルの時と同じような血文字が描かれている。
ひょっとして全部の聖堂に襲い掛かるつもりなのだろうか、ウマリルは。
とまぁ、ギリギリの所で駆けつけた俺のおかげで、アーケイの聖堂は破壊されることなく守れたのであった。
「アーケイの聖堂があの穢れた化け物どもに冒涜されるのを防いでくれてありがとうございます! 貴方には借りが出来ました」
「いんえー、気にしなくて良いぞよ」
「それでは私の気がすみません。話術のトレーニングをしてあげましょう」
こうして俺は、司祭のグリアンド・ガラナから話術のトレーニングを受けることとなった。
これで話術があがるとは何だろうか? 口八丁になれるということかな?
別に交渉なんて、魅了の魔法があればどうとでもなるのだけどね。
「しかしこいつは一体……」
「ウマリルの手先、オーロランという奴です」
「占星術師ですか?」
「いえ、それはオーランです」
まあいいか、それよりも聖剣の浄化が先だ。
「アーケーイ! アーケ、アーケーイ! プロテクミアーケ、アーケーイ! 剣を清めたまえー!」
ちょっと噛み噛みになってしまったが、とりあえずアーケイに祈りを捧げて――浄化できたかな?
もう一度装備しなおしてみたが、特に問題は無いようだ。
こうして俺は、聖剣を浄化して奪い返したのであった。
これで装備は全部かな?
前の話へ/目次に戻る/次の話へ