遺物を探す旅 ~聖騎士の遺物~
「ラムさん! 勝ちましたよ!」
「おお、勝ったか。よいよい」
「それで、アミエル卿が我々を呼んでいます!」
「ん、行ってみよう」
どうやらマシウも九大神の騎士団の試練に打ち勝ったようだ。
相手は騎士団と言っても、聖騎士の遺物探しを途中で挫折した連中だ。
彼らに勝てずして、遺物探しの旅を完遂させることなどできるものかという話だ。
まぁマシウも暗殺者として、時には派手な戦いも命じられたこともあるのだろう。
例えばアンヴィルの船乗りを全滅させるほどの実力を持っていた。
ここで俺は、アミエル卿にいろいろと聞いてみることにした。
唐突に始まった巡礼の旅から、聖騎士の遺物探しの旅。
胡散臭い予言者に言われるままに行動してきたが、ここらで一つ、話を整理しておこう。
「九大神の騎士団とは何か?」
「この集団が設立された最初の目的は、聖騎士の遺物を管理することだった」
「ではここに遺物が全て揃っているのか?」
「いや、生前の我々は、その任務を全うできなかった。ここにあるのは、唯一守る事ができたキュイラスだけなのだ」
「ヘルメットは見つけたが?」
「うむ、そなたは私が成し遂げられなかった探求を完遂した。そなたのおかげで、私の旅も役に立ったと分かり嬉しく思う」
「では、残る遺物はどこにあるのだ?」
「それは他の騎士達に聞いてみるがよかろう」
えっと、アンヴィルの教会を襲撃したウマリルを倒すには、聖騎士の力が必要。
そのために聖騎士の遺物を探し出して、聖騎士を誕生させようという話で間違いないよな?
そして現在手元にあるのは、兜とキュイラス。
遺跡で見つけた盾は、アミエル卿が持っていたもので聖騎士の遺物ではない。
「そうだ騎士よ」
「俺魔導師、騎士はこっちのマシウ」
俺は、アミエル卿の問いかけをマシウに振る。
この物語は、マシウに頑張ってもらうことに決めたのだ。なぜなら俺は魔導師、アークメイジだからだ。兼任は、めんどくさい。
それに一段落着いたら、俺はシロディールを去るつもりなのだから。
「えっ? 僕が騎士?」
「お前が聖騎士になれ。大丈夫、闇の一党での罪は、巡礼の旅で消えたことになっている」
「僕になれるかなぁ……」
「今の所、俺と同じ試練はこなしている」
「でも聖騎士だなんて、ラムさんも目指してくださいよ。僕がメインでよいから」
「ん、手伝ってやる」
マシウとの話がついたところで、アミエル卿へと振り返る。
「それて何だ?」
「キュイラスもそうだったが、他の聖騎士の遺物も二つずつあるのだ」
「ではどうしろというのだ?」
「聖騎士の遺物を探す旅は、一人でやらねばならぬ。この先二人は、別々に行動して遺物を集めるのだ」
「あー、そういうことね」
これはよい話だ。
マシウが一人で遺物を探せるかどうかを見極める事ができる。
それに付き添う形で、俺も別個に遺物探しをすればよいだけだ。
残る遺物は五つ、剣、メイス、盾、篭手、グリーブ、ブーツ。六つだった。
アミエルの話ではそれぞれ二箇所、遺物は12箇所に散らばっているという。
その場所を知っているのは、この広間に集まっている騎士達だ。
俺とマシウは話を理解し、それぞれ思うままに騎士を一人ずつ選んで話しかけることにしたのだ。
そして俺は反時計回りに、マシウは時計回りに相手を選んだ。
「こんにちは、えーと――」
「私はカシミール、ラムリーザ卿よ」
「卿、いまいち馴染めないな。それで、聖騎士の遺物はどこへ?」
「私は聖戦士の篭手の在り処を知っている。それを失くしたのは私だから」
「おっちょこちょいめ」
カシミール卿は、聖戦士の篭手を回収する前に、果たすべきことがあると言ってきた。
篭手の運命を知れというのだ。装備に運命もなにもないと思うが……
まさかコッズアイテムのように、敵として立ち塞がるのか?
昔々、カシミール卿はビーリッチ卿に従い、聖騎士の篭手を携えて戦場に向かったそうな。
そして終戦後、彼はシロディールに帰還した。
彼は再びナインに仕えようとしたが、戦争によって心は荒み、弱者に対する同情も、病人への哀れみも忘れてしまっていた。後の優生学のなれそめである。違うか。
その結果、彼は教会を救うのではなく汚していたのだ。
ある日、毎日施しを求めて教会にやってきた一人の物乞いに、我慢の限界に達していた彼は殴りつけてしまったのだ。
気にするな、物乞いは全部盗賊ギルドの斥候だから。あと施し受けなくても、少しの金や食料なら、町にある樽や袋を漁れば合法的にいくらでも手に入る。物乞いはその程度の労力も放棄して、人にたかるだけ。殴られるに値する存在だ。というか盗賊ギルドの斥候だ。大事なことだから二回(ry
しかし、彼の一撃は想像以上に強く、床に崩れ落ちた物乞いは死んでしまったのだ。それはアカンわ……。こいつの元にも、ルシエンは現れたのかな? ――って300年以上も昔の話か。
その事件が元で、彼は引き篭もりになってしまったのだとさ。まぁわかる。いくら物乞いでも、殺したらあかん。いや、盗賊ギルド殲滅のためなら致し方ないが、それでは闇の一党と同じだ。盗賊ギルドも、法で裁くべきだ。
俺がグレイ・フォックスとして逮捕されたようにな……(。-`ω´-)
「それで篭手は?」
「ああそうだった。物乞いを殴ったときに、篭手は私の手から床へと滑り落ちたのだ」
「殴った勢いで外れただけだろ?」
「いや、それが違うのだ。まるで石のように重くなり、動かせなくなったのだ。そして誰一人として持ち上げられなかった。だからまだあの場所にあるはずだ」
「どこかな?」
「コロールの教会に!」
あそこか……
嫌な奴の顔がちらつく。
フランソワ・モティエール。自分の身を守るため、母親の命を闇の一党に捧げたゲス野郎だ。
「君は今一度、篭手を持ち上げるに相応しい人物であることをステンダールに示さなければならない。コロールの神官たちの元を訪ねるんだ」
なんかいろいろ読めたぞ。
ここに居る騎士達は八人。つまり、一人一人が八大神に関連があるに違いない。
一人足りない? タロスは英雄の名に相応しいが神ではない……(。-`ω´-)
というわけで、聖騎士の篭手の在り処はわかった。
とりあえずここから始めるか――
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