巡礼の旅 ~九つの祠~
俺の名前はラムリーザ、巡礼の道を歩む巡礼者。
そして連れはマシウ・ベラモント。共に巡礼の道を歩んでいる。
アンヴィルの教会を襲撃した者は、太古のアイレイド魔術王である羽根を失いしウマリル。
奴を打倒するには、ペリナル・ホワイトストレークという者が残した聖なる遺物が必要だと言うのだ。
そしてその遺物の探求を臨む騎士たちは、伝統的に巡礼者の道を歩んできたということらしい。
そこで俺達は伝統に従い、巡礼の旅に出発したのだ。
巡礼とは具体的に何をすればよいのかと言うと、九大神の祠を回ってそれぞれの神に祈りを捧げ、探求への力添えを願うというものだった。
要はお遍路さんをやれということだね。どこぞの国では88箇所を回らなければならないが、この国では9箇所でいいから随分と楽なものだ。
そして予言者の爺さんは、九大神の祠がある場所を示した地図を渡してくれたのである。
これに従って、祠を回ればいいのか。近くから順に巡礼していこう。
近くといえば、クヴァッチから少し西にあるアーケイの祠だ。そこに行ってみよう。
神々の御前で自らを清めよと言われたが、どうすればよいのか?
デイドラのように、語りかけてくるというのか?
とりあえずは、祠を見てから考えよう。祭殿と祠の違いは、わからん。
「というわけで、地図に従ってアーケイの祠に来てみたわけだが」
「とりあえず祈ればよいのでしょう」
「祈り、か」
これでいいのかな?
『神の許しを得る為に更なる懺悔の旅を行うがよい』
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、ラムさんが言ったのでは?」
なんだかよくわからないが、空耳かな? 確かに何か聞こえたのだが。
アーケイが俺に語りかけたのかな?
巡礼はこれで合っているのかどうか分からないが、ひとまずはこの形で進めてみよう。
軽くアーケイについて勉強、生と死、および輪廻を司る神だとさ。
俺にとってはナミラに依頼されて赴いた遺跡で、松明を消されてナミラ信徒にタコ殴りにされた司祭しか思いつかないけどね。
予言者から戴いた地図を頼りに、今度はマーラの祠へと向かった。
マーラの祠は、スキングラード西の街道からコロールへ向かう道の間にある水辺にあった。
同じように祈ってみると、やはり『神の許しを得る為に更なる懺悔の旅を行うがよい』と聞こえたりする。
確かに悪いことをいろいろやってきたのは認めるので、懺悔をすることは拒まない。
願わくば神よ、×を示して水を降らせずに、○を示して紙吹雪を降らせてくれ。
俺とマシウの、ひょうきん懺悔――九大神への懺悔の旅は続く。
あ、ちなみにマーラは愛を司る神ね、この機会に九大神について少しだけでも勉強しよう。
九大神を語れと言われた時、デイドラが混じっておるとよく突っ込まれるからな……(。-`ω´-)
次に訪れたのは、ディベラの祠。
コロールの少し南にある森の外れにその祠は佇んでいた。
ディベラは芸術など美に関する物を司っている。あと性交等、げふんげふん――
マーラとディベラをうまくミックスさせれば、男女の関係は問題ない、のかな?
緑娘は九大神から一つ選べと言ったら、ディベラを選んだだろうなぁ……
次はアカトシュの祠、ブルーマの町から南、コロールへ向かう街道近くに祠はあった。
アカトシュといえば、一番馴染みが深いかもしれない。
マーティンは、アカトシュと融合してデイゴンをオブリビオンの世界に追い払ったのだ。
見た目はドラゴン、竜王、王の中の王といったところか。
いや、神の中の神、九大神の頂点に君臨する主神と呼ばれているのだ。
次の祠に行く前に、ちょっと寄り道。
この世界には九大神だけでなく、デイドラという神も存在する。
たいていは厄介な相手なのだが、利用しようと思えば有用なのもあるのだ。
「これはヴァーミルナ? どうしてこんなところに?」
「俺はこの夢を司る神に願ったのだ。せめて夢の中だけでも緑娘に会わせてくれと」
「ミドリムスメ?」
「最近緑色が目立つ娘は見なかったか?」
「あっ――」
マシウは俺の言おうとしている事がわかったのか、ヴァーミルナへ祈りを捧げるのだった。
ん、お前も夢の中では母さんと幸せにな。
次はジュリアノスの祠。
帝都南東部へと延びる道、クロップスフォードの少し北西、街道のちょっと北に祠はあった。
ジュリアノスは知恵と論理の神というのもあって、魔術師ギルドのメンバーの中で信仰している者が多い。
これのデイドラ版が、ハルメアス・モラな。あっちも知識を司っている神だ。
次に訪れたのは、キナレスの祠。
地図上では道なき辺境にあるように見えるが、東部連峰への道を知るものにとっては、その道に沿って進めばすぐに見つけられるのだ。
この祠の周りだけ、やたらと花で彩られている。それもそうだろう。
キナレスとは、大気、天候、自然を司る女神。神の力でこの周辺だけ美しい自然が創られたのであろう。
ここから一旦帝都側に戻って、街道沿いにレヤウィン方面に向かえば残りの祠に辿りつけるようになっている。
次に訪れたのは、タロスの祠。タロスは英雄の名に相応しいが、神ではない――いや、なんでもないよ、なんでもないよ。
祠はハルケイン・グローブと呼ばれる薄暗い森の中に佇んでいる。この森は、ハーシーンの依頼でユニコーン狩りに向かった森だ。
あ、そういえばユニコーンはずっと放置しているなぁ……
緑娘が居なくなってから乗る気がしない、結局あのベタベタ二人乗り、気に入っていたんだな……
えっと、タロスは帝国の皇帝だったタイバー・セプティムが死後に神格化されたもの。
ハイエルフ達は、過去にタロスに征服された歴史を持ち、この神に否定的な者が多いと聞く。
もしもハイエルフが歴史の主導を握ることになれば、真っ先にこの神を信仰することは廃止されるだろうなぁ……
俺に言わせたら、タロスなど引き摺り下ろして、代わりにマーティンを神格化すべきだと思うけどね。
タイバーがタロスなら、マーティンはマロスとでもしてさ。
タロスは英雄の名に相応しいかもしれんが知らん。新しき世を求めるものならマロスを九番目の神として称えるべきである。
俺、マロスの宣教師にでもなろうかな?
めんどくさいからならんけどね。
ちなみにジロスという弟は居ない。タロスとジロスを扱った南極物語というストーリーも無い。
次に訪れたのは、ゼニタールの祠。
ブラヴィルから街道に沿って北に進めば、すぐに見つける事ができるだろう。
ゼニタールは、銭足ーるだけあってお金の神かなと思ったら、普通に商売や交易を司る神だった。労働や仕事を司る神でもあるらしい。
スタークの暗号じゃないが、どうも九大神には一部ダジャレを扱っているものがあるらしい。
さあ、これであと一つだ。
その前に、もう一度寄り道ね。
「シェオゴラス――ですか?」
「俺は狂気によって世界の道理を狂わせても構わないから、緑娘ともう一度会わせてくれと祈った」
「さすがラムさんは頭がいいですね! デイドラすら使いこなす!」
「未練がましいだけだよ……(。-`ω´-)」
「僕も同じお願いをしよう」
文字通りの同じじゃないだろうな?
こいつ緑娘の姿を見たときに心移りしたようなそぶりを見せたから油断できない。
最後に訪れたのは、ステンダールの祠。
普通にブラヴィルからレヤウィンへの街道を通っていれば、そのすぐ脇に見つける事ができる。
そしてステンダールは、慈悲を司る神。
慈悲とは何だろうか? 癒しの神かな? 符水を飲ませることで病を治したり的な……
「さて、これで九大神全ての祠を回ったわけだが?」
「巡礼の旅は、これで終わりでしょうか?」
「何か変わったことはあるか?」
「さぁ……」
『歓迎しよう、騎士よ! そなたこそ相応しき心で我が遺物を求めし者!』
突然頭の中で大声が響いたかと思うと、身体がふわりと浮き上がったような錯覚に囚われ――
気がついたらシロディールの遥か上空に浮き上がっていた。
まさか俺も昇天か?
『そなたの祈りは、私を終わり無き夢より呼び覚ました。あるいは、お前が私の夢の中に入ってきただけかも知れぬ――』
そして目の前には、鎧兜で身を包んだ騎士のような姿をした霊体が。
霊体はウマリルが復活したことを嘆き、遺物を探すよう祭壇の場所を教えてくれた。
ふと気がついたら、マシウも俺の背後に控えている。一緒に巡礼したから、同じく昇天したのかな。
『達者でな、騎士達よ。神々よ、私に代わりウマリルを完全に打ち滅ぼす力を、この者達に与えたまえ』
霊体はそういい残すと、何処かへ姿を消した。
そして俺達は、気がついたら最後に訪れたステンダールの祠の傍に佇んでいた。
「騎士? 僕達は騎士になったの?」
「騎士かぁ。俺は白馬の騎士団とか茨の騎士団とか、ブレイズ騎士団とか掛け持ちしているから、今更騎士と言われてもなぁ……」
「ラムさん聞きたいです! 英雄の所属する騎士団について!」
「簡単に言えばブレイズは皇帝の親衛隊、白馬はオークの女戦士とのコンビ、茨はフラーだ」
「フラー?」
「フラー」
こうして俺達は巡礼と旅を終え、騎士として相応しき身分になった。
そしてこれから、ペリナル・ホワイトストレークの遺物を探す旅が始まるのであった――
前の話へ/目次に戻る/次の話へ