一家の末路 後編 ~ドラコニス一家の始末~
ルシエンからの二つ目の指令を達成するため、ドラコニス一家を捜し求めている。
既に母親のペレニアと、帝都に住むマティアスは片付けた。
残るは三人、シビラ、アンドレアス、シーリアだ。
三人ともシロディールの東方に住んでいるので、北から順に始末していくこととした。
まずは一番北に住んでいる、シビラだ。
シビラの住んでいる場所は、ヴァーミルナの祭殿から少し西に行った辺りにある泥渓谷洞窟。
シビラはほとんど野生化して、動物と一緒に住んでいるらしい。
ジャングル・ブックかな? どうぶつの森――、いや、どうぶつの洞窟かな?
洞窟の中は、マウンテン・ライオンとネズミのうろつく魔境となっていた(大袈裟)
要するに、ライオンの群れと生活しているということだね。
そして洞窟の奥で、シビラらしき人物を発見した。
オオカミ少女かな? アマラとカマラの仲間かな?
別に何でもいいけどね。
ドラコニス一家三人目、シビラ・ドラコニスをデリート。
洞窟の中なので、遠慮なく本気で挑ませてもらう。こっちの方が手っ取り早いし、本職だからやりやすい。
闇の一党壊滅のための礎となれ、あーめん。
時々俺は不安になる。
今の俺は、善の心を持ったラムリーザと、悪の心を持ったレイジィの二面性を持っている。
さしずめ彷魔が刻、ラムリーザ英雄とレイジィ氏と言った具合だ。
その内悪の心に支配されて、レイジィから戻れなくなるのではないかと……
平気で罪も無い人々を殺すそれは、狂気に取り付かれたと言っても過言ではないのかもしれない……
だがそれでも良い。
だから狂気の神シェオゴラスに祈ったのだ。
狂気の世界でも構わないから、緑娘ともう一度暮らさせてくれ――、と。
さて、次はアンドレアスの始末だ。
場所はアタタールの遺跡近辺にある酔いどれ竜亭という宿屋。
そこで宿屋の主人をやっているという話だ。
こんにちは! といった具合に宿屋に飛び込んでみて困った。
そこには帝国軍の衛兵が泊まっていたのだ。
衛兵が立ち去るまで待ってみたが、全然立ち去る気配が無い。
仕方が無いので、部屋を借りて一泊してみた。
それでもまだ衛兵は居座っているのであった……
「メエルーンズ・デイゴンに対する勝利の話で持ちきりです! あのオブリビオンの動乱が終結しただなんて、にわかには信じがたい!」
――などと話し合っている。
この衛兵は、相当のサボりらしい。
まぁしかし、末端なんてこんなもんだよな。
だから俺は、闇の一党の核心に近づく為にこうして苦難の時を過ごしているのだ。
末端の構成員だった聖域の住民は、全て始末した。
しかしこうして闇の一党がまだ機能しているところを見ると、いかに末端を始末したところで意味がないということがわかるだろう。
話が逸れたが、このままではらちがあかないので、アンドレアスと衛兵の雑談に割り込むことにした。
「この俺がオブリビオンの動乱を終結に導いた英雄だと言ったら驚くかね?」
「はっはっはっ、何を言うのだ。英雄はアークメイジのラムリーザと、アカトシュの血を引くマーティン・セプティムの二人だろうが」
「ふっふっふっ、俺はマーティンの親友なんだぜ、へっへっへっ」
「面白いことを言うやつだな! お前みたいな得体の知れない奴がそんなわけないだろ、お客さん飲む前から酔ってるな、はっはっはっ」
「なんだとこのすっとこどっこい! お前の母親はブタみたいに血を流したぜ。ペレニアだったかな、へっへっへっ」
「貴様! 私の母に何をした?! 何てことだ! 殺してやる! あがぁ!」
「なんだとこら――って何をするんだ! やめてくれ助けてくれ!」
さあ、衛兵はどう出る?
所詮末端だから、見て見ぬフリをして放置するか?
「スターーーーーップ!! 民衆を攻撃するな! 罰金か血で購え!」
お、働くか?
珍しいこともあるものだな。
俺は発狂したアンドレアスから逃げ回り、彼は俺を追いかけ、衛兵は彼を串刺しにした。
なんだかよくわからんけど、上手く行ったということにしておこう。
口八丁手八丁という言葉もあるが、口だけでアンドレアスを始末したのだ。
ドラコニス一家四人目、アンドレアス・ドラコニスをデリート。(衛兵が)
「いやぁさすが衛兵ですね。助かりましたよ、ちょっと憎まれ口を利いただけで発狂するなんて、こいつヤバイ奴だったのですね」
……何もなかったことにして立ち去ろう。
やっぱりこの国の衛兵はちょっとおかしい。
今回はたまたま役に立ったが、普段はあまり当てにしないよう心がけておこう。
たぶんその棚にあるコップを手に取ったりしたら、顔を真っ赤にして逮捕しに来るのだろうな。
衛兵って人間か?
ひょっとしたら、プログラムされた任務のみを忠実にこなすだけの、人造人間みたいな物ではないだろうか?
……そんなわけないか。
いよいよ最後の一人、シーリアを始末するときが来た。
彼女はレヤウィンの衛兵だそうだから、厄介な相手だ。
果たして秘密裏に始末する事ができるのだろうか……
レヤウィンの町に入って、まずは城に向かい衛兵の詰め所を訪れる。
そこでシーリアという衛兵について尋ねてみるのだった。
すると、今は三姉妹の宿という場所に待機しているはずだという情報を得たので、そこに向かってみることにした。
レヤウィンの宿屋、三姉妹の宿。
宿の前では二人のアルゴニアンが話し合い中。二人は何やらニュミーンという女性と、マハイという男性のようだ。
聞き耳頭巾なわけではないが、勝手に耳に飛び込んできた会話を聞くと、こんな具合だ。
ニュミーンは夫のマハイを探している最中で、誰それ構わず夫の居場所を尋ねているようだ。
マハイの方は、口うるさい妻に見つかりたくないので逃げ回っているのだと愚痴をこぼしている。
意味が分からんな。
この町にはニュミーンとマハイは二人ずつ居るのだろうか?
ニュミーンは夫のマハイの居場所をマハイという者に尋ね、マハイは妻のニュミーンから逃げているんだとニュミーンという者に愚痴っている。
やっぱり意味が分からん。
気にせずに、宿屋の中へ入ることにしよう。
衛兵シーリアは、二階の個室で一人待機していた。
「ペレニアという者を知っていますか?」
「母のことですか? 母は素敵な人よ、もっと頻繁に訪ねてあげなくちゃ!」
「そうか……」
ドラコニス一家最後の一人、シーリア・ドラコニスをデリート。
結局の所、この一家に恨みを持つ者とは一体誰だったのだろうか?
ルシエンの話では、特別な任務以外では、基本的に依頼があって契約が下ると言っていた。
ということは、この家族全員に恨みを持つ者が居るはずなのだ。
抹殺対象は母親とその子供達……
ひょっとして依頼主は、父親かな?
夫婦喧嘩の末離婚したが、怒りは収まらず自分を除く家族全員を抹殺しようと考えたとか。
もしそうなら、子供にまで手をかけるとか結構ヤバイ奴だよな……
あくまで、仮定の話だけどな。
こうして、ルシエンからの二つ目の指令を遂行完了したのであった。
あとどれだけ罪も無い人を殺せば、闇の一党の核心へと迫れるのだろうか……
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