クヴァッチ城の戦い 前編 ~城奪還作戦開始~
クヴァッチの街へ向かうのを塞いでいたオブリビオン・ゲートは消え去った。
いよいよ街へ乗り込んで、お坊さん――いや、マーティンを救い出さなければならない。
もともと暗殺者集団、リリィさんが言うには深遠の暁らしいが、そいつらから守るべく動いていたが、まさかデイドラに襲われているとは予想していなかった。
気が付くと、マティウス隊長とその仲間達も集まっていた。ゲート内で助けたイレンドも居るね。
クヴァッチ軍団はアブラハムと関係があるのかな? 一人はのっぽであとはチビだね。
「君ならできると思っていたよ! 今こそ反撃の好機だ!」
「反撃に出るのを現地点に定めた理由は何ですか?」
「戦いには機というものがあるのだ。ぜひ我らと共に来て欲しい。私の部下よりも、君の方が遥かに多くの実戦経験がある。力を貸してくれ!」
「元老院オカトーの発布により、魔術師大学はこの混乱に積極的に立ち向かうということになっているので手伝うけど、丸投げだけはやめてね」
「よし行くぞ! クヴァッチのために!」
おやおや、調子付いて突撃しちゃったよ。
人間は、一つ勝利すると、貪欲に次の勝利を求めるようになるものだ。
まあいいか、クヴァッチを救うこととマーティンを救うこと、お互いの利害は一致している。
それに先ほど言ったとおり、この破壊の君主絡みの事件は、元老院オカトーの発布により、魔術師大学はこの混乱に積極的に立ち向かうということになっている。
共に戦ってやろうではないか。
遅ればせながらもクヴァッチの街へと突入する。
これが長い間謎に包まれていた街だ。といっても今はほぼ廃墟で、教会ぐらいしか建物はまともに残ってない。
所々に赤黒い塊が積みあがっている場所がある。それがゲートの残骸か?
相変わらずのズィヴィライだらけ、こいつらばかりだね。
誤爆しないように、良いタイミングで放つのだ。
かつて俺は東部連峰で、もっと巨大なズィヴィライと戦ったことがある。今更数が多いぐらいで驚いてはいられないのだ。
「よし、これで教会から生存者を出しても大丈夫だ。中に入って彼らの無事を確認しよう」
今更ながら、クヴァッチ軍団の面々な。
右から、ゲートで救出したイレンド、緑娘は飛ばして奥に居るのがジェサン。そして鉢巻がマティウス隊長、左端ののっぽがメランディルな。
精鋭の四人か、それとも生き残った四人か……、後者っぽいな。
こうして教会前の広間をうろついていたデイドラ軍は始末したのである。
教会の中に入ると、そこに留まっていた人たちが待っていたりした。
中には留まることを拒否した者もいるらしいが、結局出て行って全滅したとの事だ。
ん、やはりクヴァッチ軍は、生き残りの四人だな。
どうやら隊長と話をしているティエラという者が、生存者を引き連れてキャンプへと避難することになったらしい。
そして気がつけば、教会の中にはクヴァッチ軍の兵士しか居なくなってしまっていた。マーティンは?
「よし、集まったな。これから城を奪還して伯爵を救い出すのだ。準備はいいな?」
「なんか一人増えてませんか?」
「ベリヒ・イニアンであります、鍵担当であります!」
「まあいいや、突撃してもいいよ」
「よし、目的地は城の城門だ! 離れず、周囲に気を配ってくれ。では行くぞ!」
なんだか流れでクヴァッチの城も奪還することになったらしい。
マーティンは? ――と思ったが、先ほどティエラといいう者に率いられて、一緒にキャンプまで避難してしまったのか、ここにはもう居なかった。
ひょっとして隊長がマーティンというオチでは?
サヴリアン・マティウスという名だが、マティウスとはマーティンのクヴァッチ訛りとか?
教会から出て城のほうへと向かうと、既にそこは戦場だった。
麻痺食らって倒れている兵士もいるが、がんばってくれたまへ。
俺はこういった乱戦は苦手だから手は出さない。兵士なら兵士らしく戦え、そして帝国のためにその身を捧げるがよかろう。
次から次へと現れるデイドラやドレモラを蹴散らして先へ進み、目的の城門前へと辿りついた。
城は敵に完全に制圧されているようで、城壁の上から矢や魔法が飛んでくる。
どうやら門も固く閉ざされていて、侵入は不可能だ。
そこにマティウス隊長が駆けつけてきた。
「門がロックされている。門は操作室の中からしか開門できない!」
「衝車を用意しますか?」
「そんな暇はない、鍵を持っているベリヒと共に衛兵詰め所に向かい、内側に入り込んで門を開けてくれ!」
「わかりました、ベリヒさん行きましょう!」
いや、今そんなこと言ってなくていいから……(。-`ω´-)
この国は、よっぽど他の娯楽が無いのだな。
何週間も前の出来事を、まるで昨日起きたことのようにみんな騒いでいる。
そんなどうでもいいことは置いといて、俺はベリヒと共に一旦教会へ戻り、別の通路から場内へと侵入することになった。
その過程で、帝国軍の兵士が合流してきたけど、妙なところで加勢してくるものだ。
どうせお前らは、グレイ・フォックスを信じていないのだろ?
グレイ・フォックスは俺だ。そして永遠にその存在は、無くなった。
ついでにグレイ・プリンスも、もう居ないのだ。
戦いは続く――
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