アミュレットを届けよ ~ウェイノン修道院のジョフリー~
ウェイノン修道院にて、バウルスの話ではここにジョフリーという者が居ることになっている。
ブレイズのグランドマスターだとか言うが、ひょっとして今回はブレイズを登り詰める展開になるのかな?
「どうしてここに寄るの?」
「俺は皇帝陛下直々に、極秘任務を授かったのだ」
「皇帝はあなたを後継者にしなかった?」
「していない……(。-`ω´-)」
緑娘は、どうしても俺に皇帝の座についてもらいたいようだ。
ひょっとしたらブレイズを登り詰めるのではなく、皇帝へと登り詰める展開もあるかも。
まぁ帝国の臣民が望むのなら、皇帝だろうが王様だろうがなってやる。しかし緑娘一人の望みで就くのは危険だ。
どうでもいいけど、羊はついてくるのな。
そんなわけで、ウェイノン修道院に乗り込んだ。
建物の中に入ると、すぐに僧侶がこちらへと向かってきた。
「何か御用ですか?」
「極秘任務だ」
「まあいいでしょう、なにやら目的を持ってここに来たようだし。私は読書に戻りましょう」
「あ、ちょっと待った。あなたがジョフリー?」
「いえ、私はマボレル修道院長。ジョフリーなら二階に居ます」
「ん、どうも」
マボレル修道院長は、独特な髪型だ。トンスラというらしいが、まあよい。僧侶の由緒正しき髪型なのだ。
入り口からすぐ正面に階段があり、途中で左右に分かれている。
左側は宿舎になっているようなので、右側へと向かってみた。
「そんな乞食の格好で会って大丈夫かしら?」
「大丈夫だ。敵を欺くには味方からとでも言うではないか」
「乞食、牢屋! ってなったらどうするの?」
「そんな乞食というだけで投獄されるような法案が発布されたら――って待てよ、盗賊ギルドの壊滅向けに発布するのも悪くないな」
盗賊ギルドでは、乞食を目や耳としていろいろな町に住ませている。
ギルドの仕事をする時は役に立ったが、こうして今、ギルドと無関係な存在となると無視できない。
まぁそんなことは後でも良いだろう。
「ジョフリーさんですか?」
「なんだ? 乞食がこんな所に何の用だ?」
「くっ――」
やっぱり緑娘の言うとおり、見た目をちゃんとしておこうか。
いちいち乞食と言われるのも癪だ。それに、ここで王者のアミュレットを届けたら、極秘任務とやらも終わるはずだ。
皇帝の最後の依頼は、ジョフリーにアミュレットを届けること。いや、隠し子も探せだったな。いや、破壊の君主をやつけてオブリビオンの門を閉じよか……。
「皇帝陛下より、あなたを探すよう言われてやってきました」
「ユリエル陛下が? 陛下の死について、何か知っているのか?」
「情報が早いな、ここは」
衛兵や魔術師大学では皇帝の暗殺については触れられてなかったが、ここには既に知らされていたようだ。
俺はここで、王者のアミュレットを皇帝から託されていることを語ってやった。
そしてアミュレットを見せてやる。一見したら、ただのひし形をした赤い宝石だけどね。
ジョフリーはそれを見るとたいそう驚き、皇帝暗殺についての顛末を訪ねてきた。
そこで俺は、隠し子のことや、破壊の君主、オブリビオンの門について、皇帝が最後に語ったことを伝えたのだ。
それを聞くと、ジョフリーは俺の事を信じたようだ。乞食の格好をしているけどね。
ただし、アークメイジだかどうかは言ってこない。そっちは良いけど、グレイ・フォックスとはもう関係ないからな。
「ところで、破壊の君主とは何でしょう?」
「それはメエルーンズ・デイゴンのことだ。魔界であるオブリビオンの支配者の一人だ」
「ではオブリビオンの門とは? 陛下は閉じろと言っていたが?」
「恐らく陛下は、オブリビオンから何かの脅威を感じていたのだろう。だが定説によれば、定命界は魔法の結界によってオブリビオンのデイドラから守られているのだ」
「待って、メエルーンズ・デイゴンってひょっとしてデイドラ?」
「そうだ」
またデイドラか。
さて、シェオゴラス、メファーラ、サングインという三大迷惑デイドラが居たが、そのデイゴンとやらは、加わって四大になるか? それとも大したことないやつか?
しかしジョフリーは、オブリビオンの脅威については知らないようだ。知っているのは皇帝ただ一人。
皇帝が、即位の儀式でアミュレットを使い、最高神の神殿に火を灯す。その灯火が、何らかの脅威から我々を守っていたのかもしれないと。
だがしかし、皇帝が死に、世継ぎも死んでしまった今、その竜の灯火が失われつつあるのだ。
「陛下は隠し子が居ると言っていましたが?」
「彼の存在なら、私を含めて数人しか知らないのだ。ブレイズの隊長を務めていたとき、陛下から赤子を隠すよう命じられたことがあるのだ」
「探し出すように言われました。どこの誰ですか?」
「彼の名前はマーティン。ここから南にあるクヴァッチという街の教会で、アカトシュに仕えている」
「やっと話題に出てきたか、クヴァッチ」
「どうかしたか?」
「いや、なんでもない」
今までに、戦士ギルドや魔術師ギルド、不本意ながら盗賊ギルドを渡り歩いてきたが、クヴァッチの名前は挙がることはなかった。
魔術師ギルドなどは、全ての街にあるギルド支部から推薦状をもらわなければならないのに、クヴァッチだけはなぜか推薦状を貰う話にならなかった。
戦士ギルドの支部も聞いたことないし、盗賊ギルドで訪れることも無かった。
これはひょっとして街ごと、皇帝の隠し子と共に隠されていたのだろうか……(。-`ω´-)
「ただちにクヴァッチへ向かい、彼を見つけるのだ。敵が彼の存在に気づいているなら、その命が危ない!」
「ただちに影響は?」
「ある! ただちにここまで無事に連れ帰るのだ!」
こうして、次の目的は決まった。
前人未到の地クヴァッチで、マーティンなる青年を探すのだ。
「そのマーティンってのが愚鈍なら、傀儡にして乗っ取っちゃいましょうよ」
緑娘は、まだこの国の支配の夢を捨てていないが、それは全部マーティン次第で考えることにしよう。
民衆がマーティンを認めるようなら、俺は動かない。
しかし民衆が俺の方を選ぶのなら、緑娘の願いも叶えてやろう。
前の話へ/目次に戻る/次の話へ