相変わらず羊と一緒の緑娘
シロディールの皇帝ユリエルは、亡くなる前に俺に最後の依頼を残していった。
王者のアミュレットという物を、コロルの郊外にあるウェイノン修道院に住むジョフリーへ届けろと。
そんなわけで、帝都を出発してコロルへと向かっているところだ。
「こらっ、物乞いだな? 怪しい奴め、誰から馬を盗んだのだ?」
「愚か者! 俺の顔を良く見てみろ!」
「おおっ、アークメイジ! これは失礼した! しかしなぜそんな格好を?」
「任務があるのだ、極秘のな……」
「極秘任務だと? それは何だ?」
「極秘だ……(。-`ω´-)」
相変わらず衛兵は、役に立っているのか立っていないのかわかりにくい。
この分だと、既に皇帝が暗殺されたということも知らないのだろうな。
それだけではないのだ。
俺は、皇帝が死の間際に語っていたことを思い返していた。
破壊の君主に立ち向かえ――
皇帝ユリエルは、確かにそう言った。
なんでも破壊の君主とやらが目覚め、血と炎の中で生まれ変わるというのだ。
そして皇帝の暗殺計画は、その手先になった人間の仕業とも。まさか緑娘が絡んでいるわけではないだろうな?
コロルへの道は、帝都から北西へ向かっている。この坂道を乗り越えた先だ。
皇帝はもう一つ願いを残していった。オブリビオンの門を閉じてくれ、と。
王者のアミュレットをジョフリーに届け、皇帝に残された最後の一人を見つけ出さなければならない。竜の血族、最後の末裔に渡さなければならない。決して破壊の使徒どもには渡してはならないのだ。
その一人の居場所を、ジョフリーなら知っているというのだ。
そして、この災厄を止める唯一の希望がこの俺だ、ということになっている。
オブリビオンという名前は、実は初耳ではない。
以前デイドラの一人、ボエシアの依頼をこなしている時に、オブリビオンという言葉を聞いたことがある。
その世界は地獄と表現してよいものか、溶岩に囲まれた赤い世界だった。
また、これもデイドラの一つだがペライトの依頼でも、オブリビオンと呼ばれる世界に、信者の魂を救いに向かったことがある。
だが、いずれの場合も、開いた門というものは目にしていない。
オブリビオンの門とは何だろうか?
上記の仕事でオブリビオンに赴いた後で、元の世界に戻る為に開いていた青白い光り輝く門のことだろうか?
そんなことを考えていたら、かなり初期にゴブリン退治の依頼を引き受けたヴァルス・オディールの農場へと辿りついていた。
コロルまであとわずかだね。
というわけで、コロルに到着。
門番に聞くと、ウェイノン修道院はコロルの郊外、つまりすぐ傍にある建物がそうだというのだ。
「はぁ~い、次はブルーマに行くよ。ちゃんとついて来てねっ」
何も考えずに修道院へと向かっていると、なんだか懐かしい声が聞こえてきたような――
…………(。-`ω´-)
何をやっておるのだ?
うん、ジ=スカール先輩の言うことは正しい。相変わらずの、扇情的な格好だ。
あんな格好をしておきながら、陽動作戦を依頼すると決まって「ドチカン」である。
扇情的な格好をしている女が悪いのか、それを嫌らしい目で見る男が悪いのか、緑娘に限って言えば、前者である可能性がかなり高い。
なぜ羊を連れまわしているのかとか、いろいろと突っ込みたいところはあるが、ここは任務優先。
まぁ緑娘が、破壊の君主の手先となった人間に組していないということがわかっただけでもよいとしよう。
ああそうそう、こいつが緑娘で通称テフラ。ん、逆か?
なぜ緑娘と呼んでいるのかは、その風貌を見れば一目瞭然だと思う。
とりあえず俺の許婚で、現在戦士ギルドのマスターだ。許婚になった記憶は、このタムリエルに来る前のものだから覚えていないけどね。
ダ=ルマやマゾーガ卿と違って、普通に美女である。ん、比較対象が違う? 知らんな。
「ちょっと待って! なんで物乞いがラムリーザのユニコーンに乗っているのよ!」
「愚か者! 俺の顔を良く見てみろ!」
「あっ! どこに行っていたのよ!」
どいつもこいつも、身なりだけで物乞いと決め付ける奴だ。まぁ仕方ないけどね。
確かに俺は、身なりをあえて貧しくして、極秘任務を遂行している。
「ちょっと下りてきなさいよ!」
「なんか怒ってないか?」
「怒ってるわよ!」
「なら、なんか怖いから下りずに素通りしよう」
「待ってよ!」
「しょうがないなぁ、ミド――テフラは……」
…………(。-`ω´-)
ユニコーンから下りると、突然飛びついてきやがった。
そうなると、自然に緑娘の巨大なおっぱいに包まれてしまうわけで。
おっぱいがいっぱい、奇麗だな、大好きさ。
「もう、どこに行ってたのよ! また別の世界に行ってしまったのかと思ったじゃないのよ!」
「この数週間の境遇を思えば、その方がマシだったかもしれないけどな……(。-`ω´-)」
一通り抱擁が終わると、緑娘はじっと俺の方を見つめてきた。なんだかやっぱり怒っているようにも見えるが?
「なんね?」
「ん~、やっぱりその格好嫌い」
「極秘任務中だ、隠密でな」
「いつも着ていた服はどこにいったのよ?」
「牢獄に入れられる前に私物を取り上げられて、このボロを着せられただけ」
「えっ? 音信不通になっていたけど、あなたは牢屋に入れられていたの?」
「――違う。山奥に篭って修行をしていたのだ……(。-`ω´-)」
かっこ悪い過去は、黒歴史として抹消するべき――なんか以前も語ったような?
「要するに、羊羹甘い~よ~、である」
「全然意味がわかんない! とにかく、前の格好に戻って!」
「しょうがないなぁ……。ま、それにしても安心したな。皇帝陛下を暗殺するために送り込まれた部隊は、ひょっとしたら君が操っていたのかと思ったりしたんだよね」
「えっ?! 皇帝が死んだ?!」
しまった、よけいなことを吹き込んでしまった。
急いで話題を転換させよう。
「で、なんで羊を連れまわしているのだ?」
「コロルで買った。ところで皇帝が死んだって、これチャンスじゃない?」
「買ってどうするんだよ。金はどうした?」
「戦士ギルドの仕事した。あなたが皇帝に成り代わるチャンスよ、こんなところでグズグズしている場合じゃないわ」
「ブルーマに行くんじゃないのか?」
「あなたを探して国中ぐるりとまわっていたのよ。ねぇ、帝都に戻りましょうよ」
ダメだ、俺の振る話題には一応返事はするが、緑娘の頭の中は帝位簒奪でいっぱいになってしまっている。
ここは適当に受け流しながら、任務を遂行するしかないな。
まずはここまで来た事だし、ウェイノン修道院へ入るか。
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