三匹のヤギのがらがらさん ~ブルーライク橋で仁王立ちのトロール~
さて、今日はエルスウェア南東を探索してみるぞ。
ハンターギルドも良いが、争ってばかりだと心が荒んでしまう。
たまにはこうして、南の国を満喫するのがよい。というか、俺は気晴らし旅行に来たはずなのだ。
本来ならヤシノキが並ぶ南国の海岸で、トロピカルジュースでも飲みながら水着のねーちゃんに声をかけて――
とまぁ緑娘が怒るからなんでもないっと。
コリントの町から南東へと進むと、橋が見えてきた。
ただそれだけ、何の変哲の無い橋。ただし、エルスウェアでは初めて見る橋だと思う。
橋の傍まで行くと、どこからか声をかけられたりした。
「ちょいとちょいと、旅の旦那がた」
「何ぞ? アークメイジ兼グランドチャンピオンの俺を呼ぶのは誰だ?」
「おお、力強い英雄さんだ。どうかこのヤギ飼いさんを助けてくれないかな?」
なんだか橋の近くでカジートのヤギ飼いに呼び止められたぞ。
ララッサと名乗ったそのカジートは、どうやら湖に下りてヤギに草をやりたいのだが、トロールが橋に住み着いてしまって困っているらしい。
橋に住むなんて初めて聞くが、考えてみたら物乞いさんは橋の下に住んでいたりする。雨宿りには丁度いいからね。
「わかりもうした、トロールを退治して進ぜよう」
「おおっ、よろしく頼むよ。退治してくれたらちょっとしたお礼をやるからさっ」
ブルーライク橋。
全然青っぽくないが、この橋の名前はそんな名前らしい。
橋の下を捜査して、トロールを駆除して――
橋の上に住んでいた!
なんだよ、トロールのブルーライク橋仁王立ちか?
この橋を守ることに、戦略上何の価値が?
あ、ヤギ飼いにダメージを与えられるね。ヤギに草を食べさせられない、困った困った!
「んじゃいつもどおり、懲らしめてあげなさい」
結局戦闘をしているのであった……(。-`ω´-)
緑娘がすれ違い様に斬るといったかっこつけをやったところで、魔剣の魔力にてトロールは崩れ去った。
魔剣の魔力にてトロールは崩れ去った。
大事なことだから二回述べておいたぞ、緑娘の剣術が優れているわけでもないからな。俺でもできることだぞ、あの魔剣を使えばな。
「見てた見てた? あたしトロールを一刀両断したわぁ」
「だから退治した後も痛めつけるのはやめなさい(。-`ω´-)」
退治したトロールを調べてみたところ、トロールの鍵というものが出てきた。
ヤギの肉も出てきたということは、ララッサのヤギが何頭か犠牲になったってことだよな。
トロールの腹を掻っ捌いて肉を取り出す俺も、よく考えみたら猟奇的だが……(。-`ω´-)
「というわけで、トロールは退治したよ!」
「いやぁ嬉しいなぁ。ほれ、ララッサの特上ヤギ乳チーズだよ」
「この国の人は、報酬として食べ物をくれることが多いね。土産だらけだよ」
「ああ、それと橋の下を探してみたらいいさ。トロールはだいたい橋の下に物を隠すからね」
「橋の下で手紙を持ったまま浮かんでいたトロールも居たぞ」
はいっ、なんだか土産のチーズが増えてきた。
後でいろいろな種類のチーズを食べ比べしてみるのも面白そうだな。
ちなみにこのチーズには、マジカ回復と炎耐性の効果があるらしい。
チーズで炎耐性――?
すぐに溶けてしまいそうな気がするのは、気のせいだろうか?
再びブルーライト橋へ戻り、その下へと回り込んでみた。
うん、宝箱があるね。鍵がかかっているけど、さっき手に入れたトロールの鍵で開くようだ。
トロールって文字を書いたり鍵を使って持ち物を隠すとか、割と知性があるのではないだろうか?
箱の中には、お金や指輪と一緒に物騒な物が入っていた。
肉切り包丁は良いとして、血塗れって何だよ?
要するに、ブッチャーの使う道具って言いたいのだろう?
「どうだ! 俺はブッチャー! アブドーラ!」
「あなたはスペルスリンガーじゃなかったかしら?」
「ブッチャーにしようとしたのに無理矢理変更させたくせに」
「それは悪役の名前なの。あなたはベビーフェイスじゃないとダメだわ」
「赤ちゃんの顔か、ピークア・ブーとか?」
「ダメ!」
「なんやね……」
しかし橋が使えるようになったためか、ヤギが三匹渡っていたりする。
三匹のヤギのがらがらさんですか?
以上、結局戦うことになった、ある出来事でしたとさ。
戦いから開放される日はあるのだろうか……
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