ウェルケにて ~冒険者ミーシャ~
「んーとね、んーとね、ミーシャ行きたい所があるのー」
アレッシア・カロの指輪を手に入れるためには、夜になってからレヤウィンの城に忍び込む必要がある。
そこで、緑娘やミーシャの待つ場所で夜まで時間を潰そうかと思ったら、なにやら出かけることになってしまった。
ここは豹の口から少し奥へ行ったところ。
ブラヴィルの幽霊騒動で、グランサムの宝を探したりしたときに行った場所だ。
「この川を進んだ所に遺跡があるの。そこに珍しい遺物があるって聞いたんだ」
「ほう、遺跡か。ミーシャは危ないから町に戻っていたほうがよくないか?」
「ミーシャ平気だもん」
「まあいいかテフラ、ミーシャの御守は任せたぞ」
「それよりも、川の真ん中に浮かんでいるアレは何かしら?」
緑娘に言われてみると、確かに何かが浮かんでいる。
見に行ったらトロールだった。無駄足!
でも何故かこのトロール、乱雑に走り書きされたメモを持っていたりする。
トロールの恋文か?
えっと、いろいろと突っ込みどころが多いものだな。
それは良いとして、トロールも一応字が書けたのだな。
酔っ払って自殺したトロールは置いておいて、川を進んでいくことにした。
ミーシャの案内で、どんどん進む。
途中川が分岐していて、以前グランサムの宝を見つけた場所とは逆の方角へ進むことになった。
遺跡と言うぐらいだから、アイレイドの遺跡だろう。そしてその中で、珍しい遺物がある遺跡となると限られるのであろうか?
「ほらっ、ミーシャの言ったとおり遺跡があったよ」
「やはりアイレイドの遺跡か」
ミーシャの言う珍しい遺物は、ウェルキンド・ストーンのことだろうな。
「ここはウェルケって遺跡。奥には他の遺跡には無い珍しい遺物があるんだ」
「それをどこで知ったのだ?」
「魔術師ギルドにあった本に書いてあったよ」
そういえばミーシャはいつも町の外に居るが、普段は魔術師ギルドに泊まっているのだったな。
たしかギルドメンバーの遠縁に当たるとか。誰の遠縁かはわからんが……
というわけで、ミーシャの御守をしながら遺跡の中へと進んでいく。
基本的に俺か緑娘が交代で先行して、安全を確認してから進むようにしたのだ。
アイレイドの遺跡は、ゾンビや幽霊、そして吸血鬼、一番厄介なのは死霊術師などが住み着いているからな。
「ミーシャあの石が欲しいの!」
「ウェルキンド・ストーンだな。遺物とはこれのことかな?」
「ううん、これはアイレイドの遺跡ならどこにでもあるんだ」
「詳しいな」
書物だけでここまで知識を得られるものなのか?
本の虫か、実は冒険しまくっているか、どっちかだな。
でもぬいぐるみどろぼうにはアッサリとやられていたしなぁ……
そしてこの遺跡には、骨や幽霊の住み着く廃墟だった。
ミーシャは一生懸命短刀を振り回し緑娘も飛び掛っていくが、実はこいつには物理攻撃は通用しないのだよなぁ
緑娘の飛び蹴りが、幽霊をすり抜けるの図。
ミーシャにいい所を見せようとして猪突して失敗したな、とw
危険が広がらないように、たとえ「塩」と言われようが、速攻で倒しておく。
二人を囮にして幽霊の注意をそちらに向かわせ、狙い定めて霊峰の指改を撃ち込むのだ。
「うわ~、ラムのお兄ちゃんすごいー」
「えっほん」
「あたしを囮にしたわね?!」
「知らんな(。-`ω´-)」
ミーシャは、幽霊の残骸を漁っている。
「エクトプラズム、電撃のダメージや解呪、マジカ上昇、体力減退のポーションを作る原料になる」
「なるほど、勉強になります(。-`ω´-)」
いかんな、やるやると言っておきながら、全然錬金術を学んでいない。
もう錬金術はミーシャに任せるか?
適所適材、要はその人材を見極める目が重要なのだ。
遺跡の中にはプールのように水が溜まった場所があったりする。
アイレイドのダムを思い出すなぁ。
「ここまでは、これまでに何度も見てきたアイレイドの遺跡と同じだな」
「奥にまだ部屋があるはずなのー」
ミーシャは部屋内をうろうろと探して回る。
幽霊や骨は全部退治してあるはずだから大丈夫だろう。
そしてこの部屋の奥に、さらに遺跡の奥へと続く扉を発見したのだった。
その奥は祭壇のようになっていて、その中央にはなんだかよくわからない置物がおいてあったりした。
「あった、これがアイレイドの彫像」
「なんかどこかで見たことがある気がするな……」
「ミーシャちゃん、これが何になるのかしら?」
「これを10個集めたら、何でも願いが叶うんだって」
「アイレイドの噂話は、そんなのばっかしだな……(。-`ω´-)」
「でもあんまり奇麗じゃないこの彫像、ミーシャ要らない」
「では貰っておくか」
これでアイレイドの彫像は二つになった。
一つ目はどこだっけ? 帝都の近くにあった遺跡にあった気がする。
確か奥に死霊術師が隠れ住んで居たような……
「ミーシャあれが欲しいの!」
ミーシャの指差す方を見ると、やはりウェルキンド・ストーンだった。
確かにあっちの方が宝石らしいので欲しがるのもわかる。
だがあっちは千個集める必要があるのだが、まあよい。
高い場所にある宝石は、魔法を放つとその衝撃で落ちてくるのだ。
ノーマルの霊峰の指で吹っ飛ばすと、石は弾き飛ばされてこちらに転がってきた。
「わ~いの~! この部屋にあるウェルキンド・ストーン、全部打ち落として~」
「しょうがないなぁ……」
こうして、ウェルキンド・ストーンを集めて回るのだった――
遺跡で宝石を集めてレヤウィンに戻った時、既に日も暮れていた。
丁度いい時間つぶしができたということにしておこうか。
前の話へ/目次に戻る/次の話へ