アーダルジの家宝 後編 ~盗人猛々しいとはこのことだな~
ウェルケというアイレイドの遺跡から戻ってきたとき、既に夜になっていた。
ミーシャを魔術師ギルドに送り、緑娘をレヤウィンの自宅に待機させて、いよいよアーダルジの家宝――アレッシア・カロの指輪を盗んだものだが――を取りに行くことになった。
しかし指輪はレヤウィンの伯爵夫人アレッシア・カロのもの。元々の所有者の場所に戻ったのだが、再び盗み出さないとならなくなってしまった。
いつも身に付けていて手放さないとのことだが、入浴と就寝の時には宝石箱に入れているらしい。
伯爵夫人の部屋へと通じる通路は警備が厳しいが、地下室と私室を結ぶ秘密の通路かあるという話だ。
そこで早速城に入り地下室を探し出し、秘密の通路経由で伯爵夫人の部屋へと忍び込みますか。
マリアス・カロ伯爵は食堂で食事中だった。夫人の方は見当たらない、入浴かな?
しかしこの部屋は嫌な思い出がある。
くれぐれも言っておくが、悪いのはサングインだからな!
レヤウィンの城には、大広間から繋がる扉がそれほど多くないので、地下室はすぐに見つかった。
倉庫になっているようだが、ここに秘密の通路があるというのだろうか?
アンヴィルの自宅にあったような魔方陣は無い。壁を叩いて回るが、それらしき所も無い。
しかし樽の中に、怪しげなレバーがあるのを発見した。
樽の中にレバーを片付けているのか、それともレバーを樽で隠しているのか……
どっちにせよ動かせば解るね。
レバーを動かしてみると、すぐ傍の壁が開いたのだった。
なるほど、これぞ隠し通路だね。存在は伯爵夫人アレッシアしか知らないのかな?
しかし、この隠し通路を進んでいくと、かなりヤバイ場所に出くわしてしまったのだ。
これってもしや?
これが噂の拷問部屋か?
机には血がべっとり、周囲には観客席のようなものもある。
伯爵夫人アレッシアは裏でこんなことをやっているのか? 悪趣味だな……
拷問部屋を通り過ぎて進んでいくと、今度は別の地下倉庫へと繋がっていた。
伯爵夫人の部屋へ入ったのかな?
ここからは慎重に行動だ。
地下倉庫から出ると、そこは大きな部屋だった。伯爵夫人の部屋の部屋だろうな。
部屋の中は人気は無い、衛兵も部屋の中まで警備していないわけだ。
しかし伯爵夫人が居るかもしれないので、こっそりと移動する。
まぁいざとなったら透明化の魔法で隠れるけどねっ
寝室へ到着。
誰も居ないと言うことは、伯爵夫人は今は入浴中か。
指輪は宝石箱のなかに入れてあると聞いていたので、宝石箱を探すことにした。
そして、それらしきものはベッドの傍においてあった。
かなり頑丈な鍵がかかっているが、不壊のピックがあるからあまり問題はない。
ん、指輪発見。どろぼうさん完了。
しかし一緒に入っていた古代の巻物の予言というものも気になる。
少し読んでみよう。
エルダースクロール?
古代の巻物、言われてみたらそうとも読めるな。星霜の書とも呼ぶらしいが、俺は知らない。
とりあえず気にせず引き返すか。伯爵夫人が戻ってくるところと鉢合わせしても困るからな。
あ、緑仮面被ってきたらよかった。それなら悪い奴は緑仮面だということに、なる。
……ならんか(。-`ω´-)
まあいいや、あとはアーダルジに指輪を渡して終了だ。
しかしいかんな、これは本格的などろぼうさんになっとる。
でも仕方ないよな?! な?!
グレイ・フォックスに近づくための手段なのだ、仕方ない仕方ない。
………
……
…
「指輪持ってきたよ」
「あたしの指輪! クラン・マザーの爪のおかげだよ、取り戻してくれたんだね」
「いや、それはあんたのじゃなくて伯爵夫人のもの……(。-`ω´-)」
「あの汚らわしいアルゴニアンは死んだ?」
「死んだよ(ということにしておこうw)」
「これが報酬の200Gだよ。盗賊ギルドはあたしの最愛の夫にいつも良くしてくれたね。あの人のしたことが未だに称えられていることに感謝、感謝」
「まぁいずれ全員一網打尽で逮捕――っとなんでもないよ、なんでもない」
盗人猛々しいとはまさにこのことだね。
明らかに伯爵夫人の指輪なのに、こいつは「あたしの指輪」などとほざいている。
まあよい。
グレイ・フォックスを見つけ出して捕まえたら、お前もついでに逮捕してやるよっと。
………
……
…
レヤウィンの自宅に戻ってみると、そこでは不思議な光景が繰り広げられていた。
「えっと、なんぞ?」
「ミーシャちゃんに教えてもらった遊びよ。こうして三つのリンゴをクルクルと――」
「器用なのか何なのかよくわからんな(。-`ω´-)」
緑娘は、三つのリンゴを代わる代わるに放り投げて、クルクル回している。
なんだかよく分からないが、暇つぶしにはなるのだそうな。楽しそうなこって、よいことです。