妄執 第二幕 ~トーティウスの調査~
スキングラードの三日目の朝も、監視の監視というよくわからない展開から始まった。
この街で出会ったグラアシアは、誰かに監視されていると言っていた。そこで今回は、トーティウス・セクスティウスから調べるという話になったのだ。
朝早くから張り込んで監視。たぶん一番怪しいのは俺だと思う。
頭頂部がちょっと寂しい衛兵のディオンも、あさから巡回ご苦労様です。
グラアシアが手におえない依頼をしてきたら、お世話になる予定なのでその時はよろしくお頼み申す。
朝の八時ごろ、目標を補足!
家から出てきたトーティウスは、スキングラードの東門へと向かっていった。
その途中でグラアシアと鉢合わせ。お前狙って現れていないか?
なんかほんまにたまたま出会う人に監視されていると思っているだけなんじゃないか?
その後、グラアシアは道端でほーっと立っているだけ、お前が怪しいわ!
それでも万が一、という話もありうるので、トーティウスについていくことにした。やはり俺が怪しい……
その途中、トーティウスは道端で出会った人と雑談を始めたりしている。
うん、なんか俺もそんな気がしてきた。
グラアシアは、自分がスパイか何かだと思い込んでいるに違いない。
実体は、道端でぼーっと突っ立っているだけだけどね。
スキングラードは都会だけあって、城の規模もすげーな。
ついでに、すれ違った人の顔色もすげーな!
たぶん光合成ができるから、水を飲むだけで生きていける人に違いない。
トーティウスは城で何をしているのかわからないが、広間をうろうろしているだけだ。
そこで、彼自身に聞き込みをしてみることにした。
トーティウスは、昔から代々スキングラードに住んでいて、父と伯爵とは親しい間柄だった。
肝心のグラアシアについてだが、彼は街の中をぶらついているウッド・エルフなのか? といった程度の認識しか無いようだ。
ウッド・エルフ? あいつは妖精なのか? イメージ沸かないなぁ。
グラアシアとは話したことはないが、毎朝城へ行く途中に、門の辺りでよく見かけると言った。うん、確かに今朝もそんな感じだったね。
やはりこの人も、別にグラアシアのことを監視しているわけではなさそうだ。
現に今、グラアシアとは何も関係ない場所に居るじゃないか。
昼下がり、トーティウスは城から出て行ったので、俺も一緒に出て行く。
グラアシアよ、監視をするとかされるとか言うのは、こんな感じの状態のことを言うんだぞ。
そしてそのまま自宅へと戻ってしまった。
うん、今のところは全然グラアシアと関係ないね。
念のために、夜になるまで監視を続ける。監視というのは、こういったものだ。
衛兵のディオンに俺が怪しまれたら見も蓋もないな……、などと思いながら、俺はじっと家の側で待ち続けていた。
………
……
…
夕方「ひとななまるまる」、目標は家を出て西へと向かった。
目標は街の通りを抜け、そのまま西門から外へと出て行った。
ん、ぶどう畑にでも行くのかな?
などと思っていたら――
野原に放してあった馬に乗ってしまった。
む、馬で移動されたら監視は大変だぞ?
と思ったけど、トーティウスはどこに向かうでもなく、馬に乗ったまま周辺をゆっくりと移動するだけだった。
日も沈みかけた頃、トーティウスはずっと張り付いている俺を不審そうな目で見てくるが、気にしないでくれ。
………
……
…
そして、結局日が暮れるまで、トーティウスは馬に乗ったまま周辺をうろうろしているだけだった。
これは乗馬を楽しんでいるとみるべきか、不審な行動と見るべきか。
結局夜の九時を過ぎるまで、トーティウスは乗馬を楽しんでいるだけだった。
この仕事、かなり疲れるわ。
そしてそのまま、自宅へと帰っていった。
トーティウスの密着取材、とくになにも面白いことはなく終了。
教会裏へと言ってみると、グラアシアは待っているねぇ。
なんだか徐々に、彼に会うのが怖くなってきたよ。
グラアシアには、トーティウスはとくにあなたを監視しているわけではないと答えてあげた。
するとグラアシアは、ベルナドットもトーティウスも、陰謀に関与していないというのは信じられないと言ってきた。
監視からこんどは陰謀ですか、X-FILESの事件ですか?
たぶんあなたを監視しているのは、宇宙人だよ。
そして次に、ダヴィド・スリリーというスリリーブドウ園の有力者の調査を依頼してきた。
ダヴィドは陰謀の首謀者で、やはりグラアシアのことを監視しているのだという。
何の陰謀だよ全く、お前は重要人物どころか、街の中でぼーっと立っているだけじゃないか。
ちなみにダヴィドはグラアシアの隣人だそうだ。
うん、汝の隣人を愛せよ……(。-`ω´-)
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