狂気の縁を抜けて3 ~対決! ゲートキーパー~

 
「昨夜はお楽しみでしたね?」
「黙れ氷血、ゲートキーパー狩りに行くぞ」
「おう、待ちかねたぞ!」
 

 ジェイレッドは待ちきれなかったのか、すごく早朝から宿泊していた部屋までやってきた。
 
「よーし、あたしの弓術を見せてやる時が来たわ」
「俺も人のこと言えんが、期待――しとってやる。それよりも、もっと効果的な攻撃方法あるから、ちょっとベッドに座って足を出せ」
「何よ、そんなにあたしの足が好きなのかしら?」
「黙って従え……(。-`ω´-)」
 
 

 ちょっとフェチっぽいが許せ。
 俺は緑娘の本来の「武器」を、レルミナの涙が染みついたハンカチを使って塗り込む。
 当たるかどうかわからん矢に期待するより、こっちで蹴り刺してくれた方が手っ取り早いはずだ。
 俺の主力武器である魔術には、レルミナの涙を使えないからな。
 その分緑娘や、ジェイレッドにはしっかりと働いてもらうのだ。
 
 

 準備完了!
 ゲートキーパーを始末して、狂気の門を突破して、フリンジを抜けるんだ。
 緑娘は嬉しそうに弓を掲げて見せるが、使いこなせるかどうかというのはまた別の話である。
 
 
 
 狂気の門前の広場にて――
 
 

 弓を構える緑娘。
 長距離砲を狙うなら、ゲートキーパーに反応されることもなく落ち着いて対処できるわけだ。
 
「構え――撃てっ」
「えいぴゅ~っ」
 
 謎な掛け声と共に、矢を放つ緑娘。
 
 
 ゲートキーパーは、何も反応しない……
 
 

 しかし俺は見た。
 緑娘の放った矢は、奴の遥か手前に落ちたことを……
 
「届いてないぞ、もうちょっと上に向けて撃て」
「さっきのはウォーミングアップ、そろそろ本気を出すわ」
「最初から本気で撃ってくれ」
 
 まぁ、本気で狙ったのだろうな。
 俺の知る限りでは、緑娘が弓を使っているところを見たことが無い。
 俺がシロディールに迷い込む以前に使っていたのならいざ知らず、そんな話は聞いたことが無いからな。
 
 
 ゲートキーパーは、何も反応しない……
 
 
 しかし俺は見た。
 緑娘の放った矢は、奴の遥か上空を通過して、奥にある壁に当たって跳ね返ったことを……
 
「上過ぎだ、最初に撃った時と今のと間ぐらいに構えろ」
「今日はちょっと調子が悪いみたいだわ」
「弓術で調子が良かったことがあるのか?」
 
 緑娘は不満そうに俺をにらみつけるが、知ったことか。
 文句があるなら当ててから言え。
 
 
 ゲートキーパーは、何も反応しない……
 
 
 しかし俺は見た。
 緑娘の放った矢は、奴から体二つ分ぐらい右側を通り抜けていったことを……
 
「高さは丁度いい。もうちょっと左に撃つんだ」
「いちいちうるさいわよ」
「なんでやねん。文句があるなら一発で当てろ」
「む~……」
 
 当ててやろうか?
 次は左側に反れるかな?
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
「なぁ、いつまで続けるのだ?」
 

 とうとうしびれを切らしたジェイレッドは、不満をぶつけてきた。
 これで十四本は、矢を無駄撃ちしている。
 残り六本、たぶん当たらないだろうな。
 
「ええいもう、うっとうしいわね!」
 
 緑娘を癇癪を起こした。だから最初から期待していなかったのさ。
 

 ――などと思っていたら、緑娘は突然ゲートキーパー目がけて駆け出したのだ。
 
「だから最初からそうしていればよかったのに……(。-`ω´-)」
 
 弓担当はジェイレッドに任せて、俺は魔法攻撃、緑娘は格闘攻撃を仕掛けていればよかったんだ。
 しかし緑娘は、ゲートキーパーの攻撃を避けながら、接近して矢を放つのであった。
 そこまでして弓にこだわるのかよ!
 

 所謂「接射」って奴か?
 それって、武器が弓である必要が無いだろう。
 まぁでも骨の矢はゲートキーパーに有効と言うし、折角弓にもレルミナの涙を塗り込んだので、使ってもらうに越したことは無い。
 あ、ジェイレッドの弓にもレルミナの涙を使ったらよかったね。
 
 

 緑娘は、矢を撃ち尽くすと今度は普通の接近戦を挑んでくれた。
 いや、緑娘の接近戦は、他に類を見ない独特なものだけどね。
 
 

 俺も霊峰の指改だけでなく、霊峰の指最終形態プラズマ版を放ったりして、ゲートキーパーの生命力をどんどん奪ってやった。
 

 そして――
 
 
 

 う゛ぃくとぉるうぃぃーーっ!
 
 
「やったぞ、ゲートキーパーは死んだ。死体から鍵をむしり取る栄誉はお前のものだ」
「要するに、死体いじりをやりたくないだけだろう」
「お前が鍵を開けたら、俺もすぐに入るからな!」
 
 レルミナの話では、ゲートキーパーの体内に鍵が埋め込まれているらしいのだ。
 ちと気色悪いが、俺はこいつの身体を切り裂いて、中身を調べる。
 死霊術師ちゃうで。別にこの遺体を使って実験をするわけではないからな。
 
「気持ち悪いわね」
「しょうがないだろが」
「腹を掻っ捌いて、子供の遺体が出てきたらどうするのよ」
「海水浴場は閉鎖だな、文句は言わせない」
 
 別に腹の中から子供の遺体が出てくることは無く、二つの鍵を手に入れたのだ。
 それぞれマニアの鍵、ディメンシアの鍵というらしい。なぜ名前が分かるのかは、不明だ。
 ちなみに今、俺や緑娘の腹を切ったら、ある意味子供が出てくるだろうな。
 妊娠ちゃうで、俺からも出てくる。何しろ今朝の朝食メニューは「粉ふきいも」だったからな。
 ん、理屈は意味不明である。
 粉ふきいもの材料と、子供が結びつく要素など、どこにも無いはずだからな。
 
 
 
 こうして俺たちは、マニア、もしくはディメンシアそれぞれの扉を開けるための鍵を入手したのであった。
 鍵は二つということは、門も二つなのか?
 いったいどちらを選べばよいのだろうか――?
 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ