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手がかりを辿って 後編 ~裏切り者の死~

 
 コロールにて――
 

 第八の指令書(偽)によると、標的はアルクェンという者は居場所は不明だが、コロールのグレイ・メア亭か、シェイディンハルの橋という宿で聞き込みをすればよいらしい。
 そういうわけで、ルシエンを裏切り――元々仲間とは思っていないので正確に言えば裏切ったわけではない――偽の指令書通りに働くことにした俺は、グレイ・メア亭へやってきた。
 ここから先も、ルシエンに従っているふりをしつつ、偽の指令書を本物だと思って行動必要があるわけだ。
 

「こんにちは、アルクェンという者を探しているのですが、何か知っていることはありますか?」
「アルクェン? あの売春婦ですか……」
「知っているのですね?」
「昨夜ここに泊まりましたが、少し前にここを発ちましたよ。アップルウォッチという場所に用事があるみたいでした」
「そうか……」
 
 宿屋の女将、エンフリッドはいぶかしむような目つきで俺を見てくる。
 そうだろうな。売春婦として認知されている相手を追いかけているのだ。怪しまれても仕方が無い。
 とにかく行き先はわかった、変な具合に追求されないうちに、さっさとここを立ち去ることにしよう。
 
 

 アップルウォッチと言えば、ブルーマの外れにある農場だ。
 俺は街道を通ることを避け、北にある山道を通って密かに向かうことにした。
 このルートを通るのは何度目か?
 最初は初めてこの世界に来た時、ブルーマからコロールへ向けて旅をした時に通った。
 その次は、この道の途中にあるサンクレ・トールの遺跡へタイバー・セプティムの鎧を取りに向かう時に通ったものだ。
 
 しかし標的のアルクェンは、アップルウォッチに何の用があって向かったのだろうか?
 あそこは元々ペレニア・ドラコニスが住んでいたが、闇の一党の仕事の関係で始末してしまい、今は無人のはずだ。
 そして今は、裏切り者だと疑われたルシエンが、身の危険を感じて身を隠していることになっているはずだ。
  

 ん? 待てよ?
 
 本当の裏切り者――実は同志だったマシウ――もそこへと向かっているはずだ。
 これはどういうことだ?
 裏切ったと思われているルシエンの居所を割り出して、そこへ始末しに向かっているのか?
 マシウの裏切り行為に気がついて、ルシエンを助ける為に向かっているのか?
 それとも全てが俺を陥れるための罠なのか?
 
 ここから先は、慎重に行動した方が良さそうだな。
 マシウも身の上話は聞いたが、その為に闇の一党に潜入するとは普通はそこまで行動しない。俺が語るのもなんだがな。
 しばらくは誰も信用するな精神で行くのが正しいやり方かもしれない。
 
 

 そして昼過ぎ頃、俺はアップルウォッチへと辿りついた。
 特に乱闘騒ぎが起きているような雰囲気は感じられない。
 戦いは終わったのか? それとも俺を待ち伏せしているのか?
 しかしこの時、俺はちょっとした違和感を見逃さなかった。
 

 こんな墓あったっけ?
 気になったので、墓碑銘を読んでみる。
 
 ――ドラコニス家の母親、ペレニア・ドラコニスここに眠る。その平穏な暮らしを奪った殺人者を、彼女の霊が永久に呪わんことを。
 
 なんてこった、俺が殺害したペレニアの墓じゃないか。ということは、残りの四つは子ども達の分か。
 墓碑銘をそれぞれ読んでみると、思ったとおりマティアスからシーリアまでのものだった。
 その時、後ろから突然衝撃を食らった。闇の一党か?
 

 振り返るとそこには幽霊が一匹。
 他に誰も居ないので、召喚されたわけでなく自然発生したようだ。
 ペレニアの霊が、俺を呪っているのか?
 

 幽霊ごときに遅れを取るような俺ではない。
 幽霊には物理攻撃は効かないが、魔法攻撃なら普通に食らう。そこで霊峰の指を放ってやるのだ。
 
 俺を呪い殺すのは、もうちょっと待ってくれ。
 あと三人、もしくは四人、それか五人を始末すれば、俺の復讐は成就される。
 俺の罪が許されないものであるのならば、それから受け入れることにするよ。
 
 
 さて、問題はここの建物の中だ。
 ルシエンが待ち構えているのか?
 それとも残った闇の一党メンバーが、俺を待ち構えているのか?
 その時、相手は味方だろうか? それとも敵なのか……
 
 
 意を決して、俺は家の中に飛び込んだ。いつでも戦闘に入れるよう、神経を尖らせて――
 

「サイレンサーよ! とうとう来たな!」
 
 そこで待っていたのは、闇の一党幹部が四名。
 そして逆さ吊りにされた遺体が一つ。殺されたのは誰だ? ルシエンか? マシウか?
 俺が身構えるよりも早く、俺を出迎えた女性は話を続けた。
 
「恐れることはない。闇の一党を脅かしていた危機は、ついに終わりをみせたのだ!」
 
 俺は素早く、その場に居る者達を一人ずつ確認した。
 目の前に居るのは女性、アルクェンか?
 そして初めて見る顔が二つ、そして――
 

 マシウ・ベラモントだ……
 ということは?
 
「私はアルクェン、ブラックハンドを代表するスピーカーだ。見ての通り、我々は裏切り者のルシエン・ラシャンスを始末した! もはやお前は奴の操り人形ではない!」
 
 そうか……
 ルシエンは死んだか、裏切り者として……
 つまり、事はマシウの思惑通りに運んでいるといったところか。
 
 そこで俺の昇進が決まった。
 アルクェンは、ルシエンに代わって俺をスピーカーへと昇進させたのだ。
 そしてこの場の流れから、ルシエンに次ぐ闇の一党の支配者が、このアルクェンだという事がわかった。
 そういえば、マシウはアルクェンが一番強いとか言っていたような気がする。
 
「しかし問題は、お前がリスナーのウンゴリムを殺害したことだ。リスナーの居ないブラックハンドなど、差し詰め親指の無い手のようなもの。さらにはリスナーの後継者も死んだのだ」
 
 そんなことは、俺の知ったことではない。むしろ闇の一党が機能しないのなら、願ったり叶ったりだ。
 しかしこうして、闇の一党は俺を除いて後四人となった。マシウが闇の一党の裏切者で俺の仲間なら、後三人だ。
 この場でアルクェンと見知らぬ二人を始末してしまうか?
 
「そこで我々は、古の儀式を執り行う以外に手はなくなった。ナイト・マザーを眠りから覚まし、母の教えを乞わなくてはならないのだ!」
 
 そうだ、ナイト・マザーという存在が居たのだ。
 ここまでの情報では、闇の一党はリスナーがナイト・マザーから神託のようなものを受け、それをスピーカーからサイレンサーへと伝えることで暗殺稼業を行っているらしいのだ。
 諸悪の根源は、ナイト・マザーという存在。そいつを消さなければ、第二、第三の闇の一党が現れることとなる。
 ナイト・マザーはどこに居るのだ? アルクェンなら知っているのか?
 
「夜になったら我々は出立する。母の家へ向かって、儀式を行うのだ。あのり遠くへ行くではないぞ」
「わかりました」
 
 そういうわけで、もう少し仲間の振りをしてやることにした。
 ナイト・マザーの居場所さえわかれば、後は一気に殲滅するのみだ。
 

 しかし酷いものだ。
 裏切り者として抹殺された結果とは言え、まるで死霊術師が遺体を弄ぶようにボロボロにされている。
 やりすぎ、とも言えないが、闇の一党ならこんな仕打ちもやりかねないといったところか。
 
 しかし夜まで時間はまだある。
 俺はマシウに目配せをしてみると、彼も小さく頷いたのだった。
 
 
 

「ルシエンの奴、マシューお前がやったのか?」
「違う、僕だけでは勝てないと思ったので、ベリサリアス、ベイナスを誘ったんだよ。三人がかりで襲撃してやったんだ」
「やりすぎだぞ、とは言わないが、悪趣味だぞ。まるで死霊術師だ」
「遺体を晒したのはアルクェンだよ。後から突然現れたのでびっくりしたさ」
「奴もここに向かっていたからな。俺もアルクェンを追ってきたわけだ」
「僕は君が失敗したのか、やっぱりルシエンの手先だったのかと疑ってしまったよ」
「それも仕方ない。これから先、しばらくは慎重にな」
「うん」
 
 
 闇が帝国を包む時、ナイト・マザーがブラックハンドを安らぐ地へと導き、覚醒の儀式が始まるという。
 いよいよだ。闇の一党が、歴史から姿を消すのはもうすぐ――
 
 俺の復讐の旅も、終わりが近づいているのだ。
 
 
 
 
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