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シャドウスケイルの背教者 ~敵の裏切者は味方とす~

 
「レイジィ殿」
「なんぞ?」
「少し時間をくれないかな? 少々扱いにくい状況を抱えているのだ。協力してくれるとありがたい」
 

 この日、俺を呼び止めたのはヴィセンテではなくテイナーヴァというアルゴニアン。
 ちょっと聖域でのんびりとしていたら、向こうから依頼を持ち込まれたのだった。
 テイナーヴァは、個人的な仕事で出世とは関係ない話だと言っているが、仕事は出世のためだけではない、信頼を得る為にすることもあるのだ。
 そこでおれは、偽りの信頼を築く為に、彼の申し出を聞き入れることにした。
 
 テイナーヴァの話では、裏切者の始末をして欲しいというものだった。
 シロディールの南端近くに、ボグウォーターという野営地があり、そこにキズ=シッポというアルゴニアンのシャドウスケイルが隠れ住んでいるという。
 
「キズ=シッポ? 変な名前だな」
「本名はスカー=テイルという。だが今はキズ=シッポという偽名を使っているんだ」
「偽名ねぇ」
 
 偽名などどこにでもある話だ。
 そのキズ=シッポという者は、テイナーヴァとオチーヴァと共に腕を磨きあった親友同士だったのだ。
 しかしキズ=シッポは、暗殺者としての義務を果たすことを拒否して、闇の一党を裏切って逃亡したのだという。
 この反逆行為に罰を下す為に、俺にキズ=シッポを殺してその証拠として心臓を持ち帰れというのだ。
 
 要するに、闇の一党五教義その三、決して闇の信徒上層部よりの命令実行を従わぬか拒否すべからずに触れたわけだ。
 そしてシシスの怒りを呼び覚ますというのは、結局の所刺客を向かわせられて消されるということであって、シシスとやらが何かをするわけではない。
 つまりシシスとは、こいつらが勝手にそう呼んで祭り上げているだけで、実在するものではない偶像のようなものだとわかった。
 
 また、テイナーヴァやオチーヴァが自ら手を下さずに俺に頼ってきたのは、シャドウスケイルがシャドウスケイルを殺すことは禁じられているからだという。
 シャドウスケイルはよくわからんが、アルゴニアンの暗殺者がそう呼ばれているということらしい。
 闇の一党五教義その五、決して闇の同胞を殺すべからず。これに引っかかるようなものだ。
 時々強欲な商人を表現するとき、「売れるものなら親でも売る」と聞くが、こいつらは「殺せるものなら親でも殺す」とは言わないようだ。
 
 覚悟が足らんな……
 
 

 そんなわけで、シロディールの南端、ブラックウッドの森へとやってきた。
 レヤウィンの町から東に広がっている森と湿地、さらに東に進むと、アルゴニアンの国ブラック・マーシュがあると聞く。
 さて、この森のどこかにボグウォーターという野営地があるはずだ。
 

 森の中を彷徨っていると、遠くに焚き火の明かりが見えたので駆け寄ってみる。
 そこは野営地で、一人のアルゴニアンが滞在していた。
 
「スカー=テイルか?」
「なっ……、その名を知るお前は誰だ?」
 

「これを見たら、俺が何をやりに来たかわかるだろう?」
「そうか、現れるだろうと思っていたよ。あんた暗殺者だろ? 嘘は言いっこなしだ」
「それなら話は早いな」
「当ててやろうか? オチーヴァだろ……いや、テイナーヴァだな。まあ殺りたければ好きにしな、俺にあんたの相手は務まりそうにねぇからな」
 
 思ったよりも抵抗せずに、覚悟を決めているようだ。
 そこで俺は、ちょっと話を聞いてやることにした。冥土へ持っていく土産を聞いてやるというか――
 

「闇の一党を抜けたそうだが、そう簡単に抜けられるものなのか?」
「あんたみたいな刺客を送り込まれたときに対処できるならな」
「なぜ辞めた?」
「人を殺すような稼業に嫌気がさしたのさ。故郷に戻って羊でも追いかけてのんびり暮らそうと思ってな」
「そうか……」
 
 故郷に戻って羊でも追いかけて……、か。
 
「そうだ、あんたの良心とやらに訴えてぇところだ。生かしてくれたら宝の在処を教えてやるよ」
「あいにくと、お前の心臓を持ち帰ることになっているんでね」
「そこに転がっているアルゴニアンの調査官の心臓を持っていったらいいさ。テイナーヴァは馬鹿だから、簡単に騙せるだろうよ」
「そうか、そうしてやろう」
「地獄に仏とはこのことだな、恩に着るぜ。宝ならこのキャンプの近くにある岩の中に隠してあるぞ」
 
 俺は、こいつを見逃してやることにした。
 個人的な仕事だし、殺さずに済むならそれに越したことはない。
 それにこいつは、闇の一党を抜けてまっとうに生きようとしている奴だ。
 敵の裏切者は味方――とまでは行かないが、復讐の対象から外れるからな。ただし本業のターゲットに至っては、俺の栄達のための犠牲になってもらうがな。
 この先数人の犠牲で、闇の一党は壊滅するのだ。
 もう少しの辛抱――ではなく、俺と緑娘の幸せを作ってくれない国に遠慮することはないと考えよう、ははっ――
 
 

 ちなみに岩の中には50Gが入っていた。
 こんなものは宝とは言わない。
 いや、普通のダイヤモンドと同じ価値のある宝物と見てやるべきかな?
 

 そして、スカー=テイルの言うとおり、近くにアルゴニアンの遺体が転がっていた。
 代わりにこいつの心臓を持ち帰ればよいのだな。
 
 
 暗殺者がターゲットを見逃すとは大した偽善だね。
 でもそう言うなら勝手に言うがよい。
 俺は、シロディールでの名誉など、どうでもいいものに成り下がってしまっているからな。
 しかしもしも――
 
 もしもだ――
 

 夢を司る神ヴァーミルナよ、もう一度俺を生きさせてくれ。
 
 緑娘と共に過ごせる、幸福な夢の世界でも構わないから――
 
 
 ………
 ……
 …
 
 

「ほら、これがスカー=テイルの心臓だよ」
「キズ=シッポを始末してくれたか! でかしたぞ! 感謝の印に血染めの跳躍のブーツを与えよう!」
「そんな薄汚れたブーツなど要らんが、それで満足してくれるならば受け取っておこう」
 
 闇の一党を抜けたら刺客を送り込まれる――か。
 跡形もなく存在を消してしまえば、刺客も何もなくなるだろうな。
 
 
 
 
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