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死刑執行 ~奈落への階段~

 
 闇の一党には、五つの教義があるようだ。
 

 全てに共通する事柄として、シシスの怒りというものがある。
 このシシスとは何か?
 もしも神のような存在だとすれば、この闇の一党は深遠の暁教団によく似た組織と言うことになる。メンバーの事を闇の信徒と書かれているのもあって、その可能性は高い。
 もしも頂点に立つ人ならば、俺の最終目的はこのシシスを始末するというものになるだろう。そこから雪崩れ式に幹部を消していくのだ。
 
「レイジィ殿」
 
 それに加えて、ナイト・マザーという存在も組織に対する影響力がありそうだ。
 シシスとナイト・マザーは夫婦のようなものだろうか?
 

 
「レイジィ殿」
 
 一番片腹痛いのは、教義その五だな。
 殺しを主業としておきながら、同胞を殺すな。
 やはりこいつらは、自分達さえ良ければそれで良いという集団なのだ。
 
「はい、なんでしょうかヴィセンテ殿」
「教義について勉強中ですかな、感心なことです」
 
 今こいつに、シシスやナイト・マザーについて聞いてやろうか?
 
 いや、焦ることはない。
 今は任務をこなして信頼を得て取り入る場面だ。
 
「新しい契約が入ったところです。熟練した潜入技術を要する契約が」
「引き受けましょう」
「いつもながら、期待に背かない方ですな」
 
 今回の任務は、ダークエルフのヴァレン・ドレスという者。なにやら帝都の刑務所に捕らえられている囚人だそうだ。
 もしも刑務所の衛兵を一人として殺さずに契約を履行すれば、前回同様ボーナスが出るという。
 結構なことだ。俺もなるべくならば、任務意外では殺しなどやりたくないからね。
 
「ごく最近、帝都の下水道と繋がる秘密の地下道を通って、ある囚人が脱獄しました。絶好の侵入経路として使えるでしょう」
「ほ……、ほう」
 
 ヴィセンテの言葉に一瞬ドキッとする。
 ある囚人とは、ひょっとしてグレイ・フォックスのことではないだろうか……?
 俺にとって黒歴史、そして現在も進行形で黒歴史を作り上げているのだ。
 ということは、ヴァレン・ドレスという奴は、ひょっとして?
 
 
 ………
 ……
 …
 
 

 またここに戻ってくることになるとはな。
 あの時は、ユリエル皇帝からの使命を受けて、英雄への階段を駆け上がるためにこの地下道から外の世界へと飛び出してきた。
 そして今は、復讐のために奈落への階段を駆け下りる為に、再び下水道へと駆け込む。
 運命とは何だろうね?
 

 王者のアミュレットを片手に、ネズミやゴブリンを駆逐しながら進んだ下水道。
 もしもあの時に戻れるのならば、俺は別の人生を歩めただろうか?
 オブリビオンの動乱など無視して、緑娘と一緒に故郷へと帰る方法を探せばよかったのだろうか?
 
 そして下水道をぬけると、懐かしい場所へと辿りついた。
 

 皇帝を逃がす為に作られたという秘密の通路も、深遠の暁教団にその存在を明らかにされた今、ここの警備も通常任務となってしまったのかな。
 二人の衛兵が、なにやら話し合っている。
 
「あの暗殺者たちはやり終えて、皇帝は死んでしまったんだ。もう奴らが戻ってくる理由は何も無いはず」
「しょうがないだろ、隊長が聞く耳持たないのだから」
「それじゃあ俺達は誰の護衛をしているんだよ? ドレスのか? もう一人の囚人、グレイ・フォックスも居なくなったし、ここにいるのは奴だけだろ?」
「そうさ、全く。モントローズ隊長にも困ったものだ」
 
 やはりあの牢獄に捕らえられていたのはグレイ・フォックスだという認識なのだな。
 それはアークメイジの裏の顔だと知ったら、人はどのような顔をするだろうか?
 
 その後、しばらく話し合っていた二人も、いつもの巡回警備に戻っていった。
 そこで影から飛び出して、地下道を進むのだった。
 

 この場所は覚えている。
 ユリエル皇帝が深遠の暁教団の暗殺者にやられて、俺に王者のアミュレットを託した場所だ。
 思えば、シロディールの英雄物語は、ここから始まったようなものである。
 その英雄に対する仕打ちが、今の俺の立場なのだ。シロディールは殺伐としすぎだろう……
 

 かつてユリエル皇帝やバウルスと共に歩いた道を、衛兵に見つからないよう逆へ進んでいく。
 やはり奈落への階段を下りていっているようにしか見えない。
 でもそれは、仕方の無いことだ。
 

 巡回中の衛兵を、陰に隠れてやり過ごしながら進んだ先。
 ここでユリエル皇帝と話をして、明かり係になったことがつい昨日の事のように思い出される。
 ゴブリンの巣を抜けた先であるここで合流したのだよね。
 

 かつて俺が通り抜けてきたゴブリンの巣は、今では板が打ち付けてあって塞がれていた。
 別の道を探して通るしかないようだ。
 俺は、皇帝やバウルスが通ってきたであろう道と思われる別の通路を進んでいった。
 

 細い通路と扉を通り抜けた先は、ここも見覚えのある場所だった。
 あの時はここで皇帝の親衛隊の隊長は深遠の暁教団の暗殺者にやられて、皇帝一行は俺を放置して先へ進んだのだ。
 取り残された俺が通った道は、先程と同じように板が打ち付けられていて塞がれている。
 開いていたらネズミが出てくるだけだから、塞いだのは賢明な判断だと言える。
 
 この先は、俺が囚われていた牢獄へと続いているはずだ。
 いや、俺じゃなくてグレイ・フォックスがな……
 

 ここが俺が囚われていた場所。あの時のまんまだ。
 そして向かいの牢屋には、あの時俺に罵声を浴びつけてきた奴が、まだ囚われの身となっていた。
 

「認めざるを得ないが、寂しくなるぜ、ドレス。お前の騒ぎ声や哀れなすすり泣きが聞けなくなるなんてな」
「うるさい番犬だな! おれはもうすぐ刑期満了、ここから出て行くんだよ!」
「出て行ってどうするのだ? どうせすぐに戻ってくることになるさ」
「サマーセット島のビーチでお前の女房と寝そべりながら、ここのことを思い出してやるさ、インペリアルの豚め! 俺はタムリエル中の有名人になるんだ! ヴァレン・ドレス! ヴァレン・ドレス様さ!」
「はいはい、黙っていたらすぐにでも出してやるさ」
 
 衛兵と、ヴァレン・ドレスと呼ばれた男が憎まれ口を叩きあっている。
 やはり標的は、あの男だったか。
 あの時の暴言に対する、小さな復讐ができるわけだ。ついでにやってしまうなんて、今回の仕事は悪くないかもしれないな。
 

 その内衛兵は、どこかへ行ってしまったので、チャンスとばかりに俺は牢屋から飛び出した。
 

「ふっふっふっ、久しぶりだな」
「誰だお前は? ――いや、見覚えがあるぞ、お前はあいつだな! 皇帝が殺されたあの日、衛兵達が独房を通り抜けていった時に居た奴だな。運のいい奴だ。それで、なぜ戻ってきた? 俺を助けに来たんだな? 早く助けろ、頼むぜ相棒!」
「残念だったな、お前はここで死ぬのだ」
「何だと? この汚らわしい蛆虫め! ここから出たら真っ先にお前を殺してや――」
 

「たわぱ――っ!」
 
 もう後は聞いていなかった。
 俺は牢屋の扉をぶちやぶると、魔剣をヴァレン・ドレスへと叩きつけていた。
 いろいろ恨みのある奴だったから、これは俺の意思でデリートだ。
 俺を罵る奴は、地獄に落ちることになるのだ。覚えておけよ。
 
 
 下水道へと戻るのは大変なので、帰りは表口からこっそりと出て行くことにした。
 

 しかしそこには、牢屋の管理人が待ち構えている場所を通らなければならない。
 気がつかれないように、こっそりと――
 

「こらっ! 誰だお前は怪しい奴め!」
 
 気がついてしまったか、仕方が無い。
 俺はフードを脱いで、顔を出して管理人と対峙する。
 

「何か問題でもおきたのか?」
「ややっ、あなたはアークメイジにしてシロディールの英雄の――っ!」
 
 ちょろい奴だ。
 以前も自分の持ち物を取り返しに来たときも、物乞いの姿では怪しんでいたくせにいつもの衣装に戻るとペコペコしたようなやつだ。
 俺はこの時だけ、レイジィではなくラムリーザへと戻った。
 
「多くの戦友を失ってしまった。だが最悪の事態には至らなかった、最悪のな」
「そうとも限らないぞ、ある者にとっては最悪の事態を引き起こさせたりしている」
「君はあそこで彼を――、見ていた。マーティンは本当にアカトシュ神の力を呼び出し、デイゴンを打ちのめしたのか?」
「そうだったな。マーティンは立派だった」
「おお、あの火竜は本当にアカトシュであり、マーティンだったのか……」
 
 あの日は、オブリビオンの動乱が終わった日であり、俺の幸せな日々が終わった日でもあるのだ。
 絶対に闇の一党だけは、許さない。
 今度は盗賊ギルドの時のように、最後の最後で失敗するようなことは避けてやるのだ。
 
 

 
 こうして、帝都の地下牢にて、ヴァレン・ドレスは始末されたのであった。
 衛兵を一人も殺さなかったということで、ヴィセンテより「無情な裁断の秤」というものを受け取った。
 魅力が下がるが、腕力と知力と敏捷度が上がる魔法のアイテムらしい。闇の一党らしい効果だな。
 
 
 
 
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