リセッテ物語1 ~私の夢、そしてお気に入り~
戦士の心を英雄は求む。
来たる来たるはドラゴンボーン。
ノルドに伝わる、秘術と共に。
信じよ来たるをドラゴンボーン。
――
これは私のお気に入り、私達みんなが大好きな伝説を歌った歌です。
ドラゴンボーン――
もし伝説が本当なら……
私の名前はリセッテ、ウィンキングスキーヴァーで働いている吟遊詩人。
仕事の合間には、音楽に興味を持ったラムリーザさんにリュートの弾き方を教えているの。
彼がマルカルスに出発する前は、毎日のように演奏を教えていたなぁ。
私が先生から教わったことをそのまま言っているだけなんだけどねw
~~~
数年前――
冒険の夢を見て故郷のハイロックを飛び出して、北の海を渡る船に乗ったんだけど、途中で難破して海に投げ出されてしまったの。
どこをどう漂ったのか知らないけど――
――いつのまにか見知らぬ海岸に流れ着いたみたい。
そして気が付いたら、オグマンドって人に助けられていたの。
そこはソリチュードって都市の北にある海岸で、当時オグマンドさんは吟遊詩人大学で音楽の講師をしていたの。
オグマンド先生は、私の歌声が美しいって褒めてくれたので、うれしかった私は大学のお世話になることにしたのよね。
そんなこんなで私は吟遊詩人大学の生徒だった……
友人パンテアと共に、オグマンド先生から音楽を学んでいた。
パンテア「リセッテー、『侵略の時代』はもう覚えたー?」
リセッテ「もうちょっとってところかなー」
パンテア「今日もオグマンド先生に見てもらいましょ」
オグマンド「おぉ、『侵略の時代』か。よく聞いておけよ」
♪乾杯をしよう、若さと過去に――
オグマンド「いいか、歌は気迫だ。一流の作品には気迫がこもっているものだ」
侵略の時代、ウルフリックがトリグ上級王を暗殺した後にできた歌。
スカイリムの心強い守護者、帝国に捧げた叙情歌……
もちろん帝国にはしっかり戦ってもらいたい。
でも、私は侵略の時代よりも、こっちの方がお気に入り。
オグマンド先生からは、音楽だけでなく歴史のことも教えてもらっていたの。
ドラゴンボーンの話も聞いたわ。
来たる来たるはドラゴンボーン――
パンテア「リセッテはそればっかりね」
リセッテ「私ね、ドラゴンボーンと旅をするのが夢なの、そして英雄の詩を創るのよ」
パンテア「また壮大な夢をもってるわねぇ……」
オグマンド「ドラゴンボーンか、あれは伝説だ。かつてシロディールの皇帝が最後のドラゴンボーンだったがな」
リセッテ「でも、また現れるかもしれないでしょ」
パンテア「まぁ、現れたとしても、えっと何だったっけ、山頂に住む?」
オグマンド「グレイビアード」
パンテア「そう、きっとグレイビアードのように世界のノドに篭って俗世には下りてこないわ」
リセッテ「そんなことないもん」
パンテア「どうせ貴族のお抱えよ。少なくとも、私達庶民が一緒に楽しくってわけにはいかないと思うわ」
リセッテ「ふんっ」
まぁ、ドラゴンなんて見たこともないし、全ては伝説なんだろうけどね。
でも、いつか冒険して世界を見て回りたいってずっと思っていたんだ……
私は戦士のように腕っ節が強いわけじゃない。
かといって魔法に長けているわけじゃない。
でも、ドラゴンボーンのような人と一緒なら……
~~~
あれから時は流れ、パンテアは大学の先生として講義をしているし、私はウィンキングスキーヴァーで歌姫として働くことになったわ。
そしていつのころからか、良い音楽、良い飲み物、良い友達に囲まれるだけで十分だと思うようになっていたの。
でも、とある出来事があって、以前描いていた「夢」を思い起こしたのよねぇ……
ポテマとの戦い
まさか私がポテマとの決戦を目の当たりにできるなんて、彼と出会うまでは想像もしてなかった。
彼は「帝国軍人」だって言うけど、以前は魔導師大学のローブ着ていたし、今はグレイビアードのローブ着ている。
そのくせ突然吟遊詩人大学に入学したりもする……
なんだか行動に一貫性が無くてちぐはぐなのよね。
でも彼と一緒に居たらほんと楽しいのよね。
酒場に、冒険談を嬉しそうに語りに来てくれる。
正直、彼がうらやましいって思ってる。
私がやりたいって思っていた人生をそのまま実践しているような。
彼から聞く話で、自分も冒険した気分になってた気がするんだ。
でも悔しいから「さすらいの風来坊」って付けてやったわw
「世界を股に掛ける冒険者」だなんて絶対に言ってあげないw
それだけじゃなく、突然突拍子も無いことやったり言ったりして笑わせてくれるのよね。
下手な歌歌いながらリュートを振り回したり、教卓の上で演奏する人なんて初めて会ったわよw
その前もあったよね……、王宮で卑猥なこと叫ぶなんて、恥ずかしいったらありゃしない。
はぁ、いつのころからかな……
最近、あの「シェオゴラスの信徒」が、ちょっと気になって来ちゃった……
ドラゴンボーンと旅をして英雄の詩を作るってのはさすがに夢物語なのは分かっているけど、彼となら、ひょっとしたら一緒に楽しく世界を回れるのかもしれないって思う気がしてきたのよね。
彼の話に出てきた、「ドゥーマーの遺跡」や「ブラックリーチ」って所に行ってみたい。
いろんな所を見て回りたいけど、私は剣の腕は全然だし、魔法もほとんど知らない……
でも彼と一緒ならひょっとして……
だってほら、ポテマとの決戦……
ドラゴンボーンなんて夢伝説を求めなくてもいいんだ。
彼みたいな人でも。
最近では、マルカルスのカルセルモの所に届け物をしてくるって出かけたっきり、一週間以上音沙汰が無い。
早く配達仕事して帰ってきてって言ったのにな……
どうしちゃったんだろ?
ひょっとして何かあったのかしら?
少し前にしばらく訪れなかったときは、ウィンターホールド大学で叔父さんが大怪我して大変だったって言っていたけど……
ちょっと行ってみようかな……
マルカルスならオグマンド先生が居るし。
大学を引退した後は故郷のマルカルスに帰ったと聞いているのよね。
久しぶりに会いに行くのも悪くないな。
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