ジャガイモ泥棒 ~またあいつか!~
死霊術師の秘密結社に潜入していたムシアナスは、その素性がバレてゾンビに仕立て上げられてしまっていた。
これでも連れて帰ってあげなければならないのか、と思うと気が重くなる。
ネニヨンド・トウィルの遺跡を出たとき、すでに日も暮れかけていたので、ファレギルの宿屋で一泊してから魔術師大学に帰ることにした。
イルオーメンの宿屋には、地下によくわからないおじいさんが泊まっていただけだけど、ここはどうなのだろう?
――と思ったら、獣族カジートの宿屋でした。シェオゴラスに狙われないよう、気をつけろよ。
のんびりと夕食を、とやっていたら、隣に座っていたカジートが話しかけてきた。
シジーラと名乗ったそのカジートは、無くなった巨大なジャガイモを探すのを手伝って欲しいと言ってきた。
巨大なジャガイモを無くすぐらいなのだから、普通の小さい奴は毎日のように無くしていることだろう。
さらに話をしていると、おいしいジャガイモパンを焼くときに、どうしても巨大なジャガイモが必要なのだとさ。普通の大きさのジャガイモはいかんの?
どうやら外に置きっぱなしにして太陽に当ててやろうとした時に無くなったらしい。誰かに盗られたんじゃないのか?
誰かが西の方へ逃げていくのを見たそうで、探してきて欲しいと言ってきた。西の方にあるネニヨンド・トウィルの遺跡に行ってきたが、誰か居たっけ? 死霊術師が盗んだのか?
お礼はするから取り戻してきて欲しいという話になった。結局盗まれていたのね。
「今日はもう遅いから、明日の朝一番で探してきてやるよ」
待ってたら犯人は逃げるかもしれないが、今日はもう疲れた。
寝る。
………
……
…
というわけで翌日、もう一度遺跡の方を調べてから大学へ戻ることにした。
今度はユニコーンは使わずに、じっくりと辺りを調べながら西へと向かっていった。
するとそこには、例の食人種オーガが一匹ぼんやりと立っていた。あいつが巨大なジャガイモを盗んだのか?
えーと、話をしてもわかる相手ではないけどどうするべきか……
「えーと、巨大なジャガイモを盗んだよね? 今返したら何もしないけど、どうする?」
一応穏便に話しかけてみた。
マラキャスの一件で、全てのオーガが悪い奴ではないということのわかっていたので、念のために語りかけてみたのだ。しかし――
やっぱりダメか……(。-`ω´-)
近くに登れる高台が無いので、麻痺→燃やすの作戦をとることにする。
オーガこんがり亭。持ってるジャガイモまで焦げてしまったらどうしようとか思うけど、気にしない。
こいつは野蛮で襲い掛かってるだけでなく、盗みまでする知能を持っているわけか。それとも日に当てるために置いていたものをそのまま盗っただけなのだろうか?
どっちにせよ、カジートもオーガも、今回の件はなんとまぁのんびりした事件だこと。
ついさっきまで、死霊術師やゾンビにされた仲間のことを見てきたのとは大違いだ。
オーガを退治して懐をあさってみたら、確かに巨大なジャガイモが出てきた。
具体的にどのぐらいの大きさなのかと言えば、人の頭ぐらいの大きさってか?
この大きさじゃないとダメなのかねぇ?
シジーラは不器用すぎて、このぐらいの大きさじゃないと扱えないのでしょうかねぇ?
ほんでもって宿屋に戻ってみたら、シジーラはすぐにわかったらしい。
持ってる持ってる、あの子たちがあんたのカバンに居るってわかる、などと言ってるの、よくわかんない。
んでお礼は、こんなもの。
まぁお金は他に入手手段あるし、宝石はあまり価値の無い国みたいだから、こんな報酬でも良いのかもしれないね。
トパーズ辺りの宝石よりは、価値のあるポテトパンらしい。
このパン三つともう少しで、上質のダイアモンドと同じ価値なのだ。
価値観について深く考えるのはやめにして、俺は魔術師大学へと戻っていった。
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