消えた住民 ~透明の魔法~

 
 さて、死霊術師――じゃなくて、イヴォーカーに昇進した俺に対して、すぐに魔術師大学の仕事が舞い込んできた。

 次の仕事は、死霊術師に関係ないそうだ。俺が死霊術師みたいなイヴォーカーに昇進したからか?
 アイレイド遺跡の調査が、次の仕事である。
 
 その遺跡で、なんどか死霊術師と遭遇してきたのだけどな……(。-`ω´-)
 
 で、責任者のアーラヴ・ジャロルが担当している調査が難航していて、支援を求めてきているというのだ。

 この人が、アーラヴ・ジャロル。
 白いローブを着ている人は、偉い人なのだろうな。
 
 彼の話では、調査隊のスカリールが、通路が塞がれていて先に進めないという問題が発生しているとの調査報告書が届いたそうだ。
 相棒の名前はモルダールですか? 未解決事件でも捜査しているのですか?
 
 で、なんかしらんけど、アーラヴは、俺のことを優秀な頭脳の持ち主だから、代わりに行って手伝ってくれと言ってきた。
 おだてて乗せて手伝わせる気が見え見えですよ?
 アイレイドの遺跡の場所は、シェイディンハルの南西。名前はヴァータセン。何らかの遺物を発掘する調査だそうだ。
 
 というわけで、今度はシェイディンハルへの出張と決まりましたよ。
 あっちこっちに行ってばかりだなぁ。
 
 ………
 ……
 …
 
 帝都を出て、北周りにぐるりと回ってシェイデンンハルへ向かうことにする。
 出張ごとにその街に家を買ってやれ、ということで進んでいくと、小さな村か宿屋かわかんない集落に到着した。
 ちょっと立ち寄ってみると、違和感を感じる。

 う~ん(。-`ω´-)
 
 わかりにくいですか?
 アップにしますよ。
 

 鍬が宙に浮いて、ひとりでに畑を耕している……(。-`ω´-)
 
「これは何だ?」とつぶやくと、傍に透明な人が居たようで、すぐに返事が返ってきた。
「宿屋にいるディラムと話をしてくれ。村中を騒がせているこの茶番劇にはもうウンザリだよ!」
 
 なんだ?
 ジ=スカール先輩がやってきてここでもイタズラしているのか?
 

 宿屋の中には誰も居ない。いや、モヤッとした陰は見えるけど、それが何なのか……。
 ――と、虚空から突然話しかけられてしまった。
 
 この村の人はいささか問題をかかうているそうで。うん、見ればわかるよ。見えんけど。
 この村エイルズウェルは、数週間前から突然透明になってしまったのだ。最初は面白かったけど、そのうちうんざりしてきたと。
 まぁ透明化なんて、イタズラとかにしか楽しめないよね。
 で、宿屋は幽霊の居る宿屋とか評判が立ったら困るので、なんとかしてくださいというわけだ。
 
「ジ=スカール先輩の仕業ですか?」
「いえ、アンコターという者の仕業です。ここから南に行ってすぐの場所にあるカラクタカス砦に住みついた魔術師です」
 
 アンコターねぇ。ナンノコッタ!
 ではそいつを説得して、透明化をやめさせればいいのだ。
 しかし自分だけでなく周囲を巻き込んで透明化、けっこう強力な魔力なのかもしれんな。
 俺は自分だけでなく周囲を巻き込んで裸にする魔法を使ったことがあるけどな、サングインめ……(。-`ω´-)
 

 というわけで、あれがカラクタカス砦だ。
 周囲には透明化したモンスターも居るから気をつけろだとさ。厄介なやつだな、料理にして食べちゃうぞ!
 

 食べちゃうぞ、食べちゃうぞ。イタズラすることは食べちゃうぞ。
 アンコターに勝ったら食べよう。負けたら逃げればいいや。
 

 そんなことを考えながら、砦の中へと進入すると、ここでも突然虚空から声をかけられた。
 透明怪人め、鼻血をぶっかけて姿を現せてやるぞ!
 
 アンコターは、呪文の効力を強めるためとかなんとか言い訳をしていたが、俺が魔術師大学の者だと知ったら突然好意的になったのだ。
 静かに研究したいけど、田舎者に悩ませられるとか。
 待てよ、自宅で危険な実験を行うという行為は、ギルドでは規則で禁止されていなかったっけ?
 郊外の砦ならOKなのか?
 で、その田舎者の苦情というものが、「爆発で羊が驚いている」だの、「ネズミが発生して作物を食べ荒らす」だの。それ、悪いのはシェオゴラスということにしておけよ。
 
 それでも、透明化で村人が困っていることを知らせると、アンコターは反省して透明化反転の巻物を譲ってくれた。
 これを村の真ん中で使えば解決すると。つまり、スペクトルα、β、γ線ですね。
 α線で光の屈折を自由にコントロールし、β線で光の色彩吸収力を破壊し、γ線で光の反射角度に制限を加え、見えないものを見えるようにするわけか、難しいな!
 あと、なんか指輪みたいなのをくれで、巻物を使うときはその指輪をはめてから使えと行ってきた。魔力増幅ですかね?
 

 アンコターと話をしていたら、なんか襲ってきた。
 熊のうなり声とネズミの鳴き声が聞こえる。
 こんなの透明にしたら危ないだろうが!
 
 というわけで用は済んだので、こんな危ない場所はさっさと撤退するに限る。
 
 ………
 ……
 …
 
 さて、村の中心といえば、畑の真ん中だ。

 イタズラはこれまでだ、姿を現したまえ、アーメン!
 

 おっ、透明化は解けたみたいですね。
 オークが出てきたよ、マゾーガ卿によろしくっ。
 

 宿屋も元に戻ったようで、宿主もよろこんでいる。
 ただ、一緒に居る姉妹は見えないままでもよかったとか。そんなこと言ってたら怒られるぞ。
 傍に姉妹がいるにも関わらず、悪口を言うとはやるなおぬし。
 
 お礼に、エイルズウェルの宿はいつでも無料で泊まっていいことになった。
 帝都から近いから、そんなに立ち寄ることは無いと思うけどなぁ。
 
 さて、シェイディンハルへの旅を続けるか。
 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ