オークのマゾーガ ~マゾーガ卿~
「予言じゃ、予言が下った!」
「なんですか、ダゲイル先生!」
「レヤウィン城でマリアス・カロ伯爵がお前を待っている! そこでシロディールでも指折りの騎士と出会うであろう」
「いや待って、城はちょっと……」
レヤウィン魔術師ギルドでうとうとしていると、マスターのダゲイルに叩き起こされてしまった。
アミュレットを取り戻して以来、予知能力に磨きがかかったタゲイルは、前にも増して予言を口走るようになってしまった。
しかし、レヤウィン城にはちょっと行きたくない。先日のサングイン騒動で、パーティ荒らしをやってしまったばかりだ。あまり歓迎はされないだろう。
「予言に従わねば、天罰が下るぞえ!」
「それって従わなかったら予言が外れるから、無理強いをしているだけでしょう?」
「早く行くのじゃ!」
「ダ、ダゲイル先生……(;´Д`)」
仕方なく俺は、レヤウィンの城に向かった。無論、変装をして……
「伯爵殿、お初にお目にかかる、マス・ミルカラスという旅の者でござったござった」
「ミルカラス殿、マゾーガというオークの女が騎士だと名乗っている。彼女がここに来た理由を突き止めて報告してくれれば、レヤウィンの貢献者として相応の報酬を約束する」
「お安い御用、このドス・マスカラスに任せておけ」
「名前が変わっておるぞ?」
「千の名前を持つ男と呼んでくれ」
「世の中ではそれを偽名と言う」
なんかばれそうなので、伯爵の元をさっさと立ち去って、マゾーガという者を探しに向かった。
城の入り口付近でマゾーガはすぐに見つかったので、さっそく話しかけてくると俺のことを伯爵か? と聞いてきた。
「いや、俺はミル・マスカラ――っとこれでは本名になってしまう――じゃなくて! 伯爵の命で会いに来た!」
多少ぎこちない挨拶で始まった会話。
マゾーガは、岩の下で生まれ、両親は居ないのだそうだ。ダンゴムシか?
さらに騎士への口の利き方を教えてやるということで、「はい、マゾーガ卿」と呼べと言ってきた。
「はい、鏡さん!」
……こほん(。-`ω´-)
えーと、マゾーガ卿は独立騎士で、主君は居ないそうだ。それなら俺も、光学騎士とでも名乗るぞ?
いや待てよ、騎士のマゾーガ卿とタッグを組む時に、俺が超回転光学戦士を名乗れば――って話を逸らすな! ちゃんと話を聞くデス! 俺はカラスではなく、ラムリーザデス!
というわけで、街に居るウィーバム=ナーというアルゴニアンを探してくることになった。この辺りの森に詳しいハンターだそうで。
そのウィーバム=ナーの家はここ。
たしかにハンターらしく、弓を装備しているな?
しかし、ハンターするよりも追い剥ぎ狩り――っ、てもういいや。
しかしウィーバムは、オークに会う意味もないし、俺の頼みを聞くほどの仲になっていないと言うのだ。
仕方ないな! 魅了!
こうして、ウィーバムはマゾーガ卿に会ってくれることになった。
魅了の魔法があれば、セールスマンになるのも手だな。この魔法を使えば、何でも売りさばいてみせるぜ!
なにしろ、これをかけるだけで信頼が最大になるからな、魔法とは危険な代物だ。
マゾーガ卿は、「漁師の野営地」という場所に行きたいらしく、その場所を知っているウィーバムから情報を得ようとしたのだ。
騎士だけど、やっぱり釣り人になることにしたのだろうか?
その漁師の野営地は、レヤウィンの北、ニーベン河の東岸にあるそうな。
しかし、ウィーバムは案内を拒否したので、何故か俺が案内することになってしまった。
そこで野営している風賊モゲンズという男に話があるというのだ。
風族か、俺なら空族を目指すね。主人公になれそうだし。
というわけで、この辺りを目指すことになった。
街から出たら、もう変装は要らない。
マゾーガ卿と共に、漁師の野営地へ向かい、風賊モゲンズに対して俺は何もするな、という話になっている。
何をやりたいのかわからんが、見物だけしておけというのなら、喜んで控えさせてもらおう。
漁師の野営地へ到着すると、マゾーガ卿は何も言わずに上半身裸の男へと向かっていった。
さてと、それでは俺は見物させてもらうか。
うむ、このモゲンズという男は、マゾーガ卿の友人を過去に殺したらしい。
それで、その仇討ちにやってきたわけだ。
こんな話なら、進んで傍観者を決めさせてもらおう。存分に恨みを晴らすがよい。
って、部下はなんで俺に襲い掛かってくる!
マゾーガ卿とモゲンズは一騎打ちを始めたが、モゲンズの部下は何も関係のない傍観者の俺に襲い掛かってきた!
俺はマゾーガ卿の仲間じゃねーっ。ただ道案内をしただけだーっ。
と言っても話を聞いてくれないので、始末しちゃったよ。
しょうがない、装備だけは頂いていくから、な!
どうやらマゾーガ卿も、モゲンズを仕留めたみたいだ。
漁師の野営地と言っているが、モゲンズ達は盗賊団で追い剥ぎを働いていた。賢い奴らだ。
しかし、マゾーガ卿の友人に目撃されて衛兵に通報されたので、友人を殺して逃亡したのだと言う。
追い剥ぎは通報されるけど、追い剥ぎ狩りは通報されないよな?!
そこでマゾーガは、友人の仇を取るために騎士になり、そして今、その悲願は達成された。
マゾーガ卿は騎士のことは何もわからないが、いろいろ学んでみせる。そして俺こそは本当の騎士だ、と言ってくれた。
それだけ言い残すと、マゾーガ卿は一人、立ち去っていった。
いつの間にか騎士にされちゃったよ。一応魔術師なんですけどねぇ……
あとは、このことを伯爵に報告しておしまいだ。
伯爵は、友人の仇を討つ行為を非常に評価してくれて、褒賞としてマゾーガ卿と共に「遍歴騎士」にしてもよい、と提案してきた。
やっぱり俺も騎士になるのか?
「ところで、お前さんどこかで見たような?」
「どこにでもある顔ですよ!」
「その声にも聞き覚えが……」
「このガラガラ声に聞き覚えがありやすか!」
しまった、変装をするのを忘れていた!
パーティ荒らしの犯人だとばれる前に、出直してくるとしましょう!
レヤウィンにて オークのマゾーガ ~完~
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