モラグ・バル ~殺されるがよい~
「ところでダル=マさんが転んださん」
「ああ、私のヒーローが戻ってきたわ」
「海賊船長ドゥガルの件だけど、お宝なんて無くて、代わりに俺が海賊船長になってしまったよ」
「めざせ海賊王ね、私のヒーローは」
「簀巻きにされて爆死させられるのは嫌だからやめておくよ」
次は魔術師ギルドだ。アリーレがそこに用事があるらしいので、送り届けなくちゃ。
――と思ったら、ダル=マと雑談している間にアリーレは先にギルドに行っていたらしく、既に普段着に着替えてメンバーと雑談してた。
ちょろっと聞き耳を立ててみると、デイドラのモラグ・バルについての話をしているみたいだ。
なんでもコロルの南の森の中に、モラグ・バルの祭殿があるそうで。
よし、先に行ってお宝を頂いてしまおう。
というわけで、コロル南の森の中を散策することになってしまった。
ここも道からそれると深い森だった、どうしてデイドラの祭殿は、どれもこれも人里離れた場所にあるのだろうか?
醜い神様とか、不浄な神様とかなので、一目を避ける必要があるのだろうか?
ひょっとしてデイドラって、やばい神様?
そんな森の中に、石像が祭られている祭殿はあった。
見た感じ、アルゴニアンの神ですか?
しかし司祭に話しかけると、どうやらここも一癖ありそうな神様のようだった。
「人類を苛むもの、モラグ・バルの祭殿になんの用だ?」だとさ。
苦しめ、悩ませる神様? 逆だろ?
苦しみ悩むから神にすがるのだろ? 神が苦しめたり悩ませたりしてどうするのだ?
マゾヒストの神か? そんなの嫌だぞ……
この祭殿には、「ライオンの皮」を捧げるとよいらしい。
ライオンの皮……、あった。
そういえば、シェイディンハルからコロルへ向かう途中の街道で、熊だけでなくマウンテン・ライオンにも襲われたっけ。
ライオンの出没する街道、なんなんだよ!
というわけで、ライオンの皮を捧げると、またしても頭の中に神の声が響いてきた。
この神が求めるものは、災厄と死だそうだ。
…………(。-`ω´-)
邪神じゃないのか?
モラグ・バルは、メラス・ペティラスを探し出して、そいつに呪われしメイスで殺されろと言ってきた。
…………(。-`ω´-)
無茶苦茶な神様だ、死ねという神があるだろうか?
いや、殉教者という言葉もある。俺にモラグ・バルの殉教者になれというのか?
……この話は無かったことにしようか。
これが呪われしメイスだ。
待てよ……
モラグ・バルは、殺されれば悲惨な生活から救ってやろうと言ってきた。
ひょっとして殺されることで、元の世界に戻れるのだろうか?
すっかり忘れかけていたが、俺はこの世界に飛ばされたという設定だったからな!
というわけで、森の中にあるメラス・ペティラスの小屋に行ってみたが、中には誰も居なかった。
そこで近所の人に話を聞いてみると、メラス・ペティラスとは大した英雄らしい。襲ってきたゴブリンの大群を殲滅したり、ミノタウロスの巣窟を一人で壊滅させたらしい。
そんな英雄に、何故殺されなければならないのだろうか……
しかし今のメラスは、妻が死んでからは戦いをやめ、毎日墓参りをしているのだそうだ。
森の中を散策すると、墓の前で熱心に祈りを捧げる男を見つけた。彼がメラスかな。
「メラスさんですか? 俺を殺してください」
俺はアホじゃないのか?(。-`ω´-)
しかし、モラグ・バルの要求を満たすには、彼に殺される必要があるのだ。
「ここに呪われしメイスを置いているので、それを使って殺してください」
…………(。-`ω´-)
諸君、俺は狂っているわけではない。
この様な事を要求する神様が狂っているのだ。そしてその通りに実行する者が狂っているのだ。
…………
俺が狂っているね。
当然メラスは、そんな基地外の戯言には耳も傾けず、祈りを捧げているだけだ。
いったいどうしろというのだ……?
そこで俺は、強硬手段にでることにした。
「てんめぇ、俺を殺せって言うのがわからんのくゎ!」
「私は怒りに身を任せて武器を振るうことはしないと誓ったのだが、お前は最も神聖なるこの場所で、私の名誉に傷を付けた! 悪魔め、死ぬ用意をしろ!」
「最初から殺せと言っている!」
俺はダル=マのヒーロー、しかしその実体は、英雄に殺してくれとせがむ基地外である(。-`ω´-)
これでいいのか? モラグ・バルよ……
いったい何がやりたい神様なのだ?
メラスは、転がっていた呪われしメイスを手に取ると、俺に殴りかかってきた。
とんだ茶番劇だ……、命がけの茶番劇だ……
やっぱりミラグ・バルとの話は無かったことにして、逃げ出したほうが良いかもしれない。
俺は、適当なところで逃げ出すことにした。
しかし、木の根っこに足を取られて転倒してしまった!
メラスは、容赦なく俺の頭にメイスを力任せに振り下ろした!
………
……
…
「おおラムリーザ! 死んでしまうとはなにごとだ!」
んん? アリーレさんの声が聞こえる、幻聴か?
はっ?!
気がつくと、俺はモラグ・バルの祭殿の前に立っていた。
なんだ? さっきまでの出来事は夢か?
しかし、またしてもモラグ・バルの声が頭の中に響いてきた。
「よくやった。また一人地獄に落ち、また一つ魂は堕ちたのだ」
ん? やっぱり俺は死んだの?
ここは死後の世界ですか?
それてもまた異世界に飛ばされたのですか?
一応モラグ・バルのメイスのメイスを報酬として受け取った。
結局、何がやりたかったのかわからない依頼だった。
そして、俺の身に何が起きたのかわからない依頼でもあった。
この世界の神様は、妙な神様ばかりだな……
デイドラクエスト モラグ・バル ~完~
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