父の罪 ~コロルの栄誉ある剣~
ある日コロルの街で、変な頭をしたおっさんに話しかけられた。
先日ジェメーン兄弟をウェザーレアに送った後、東部から来たダークエルフが彼らのことを街で聞いて回っていたと聞いていたので、たぶん彼がそうなのだろう。
シェイディンハルによく居た青白い顔の人だ、ダークエルフか。ダンマーとか言っていたな。
彼はファシス・ウレスといい、ジェメーン兄弟の父親アルベルト・ジェメーンについての話を持ちかけてきた。
アルベルトはプロの泥棒で、ウェザーレアは盗んだ物を隠すために建てたのだと。なるほど、あんな所に家を建てる理由としては、理にかなっている。
そこでファシスは、アルベルトが盗んだものは自分に所有権があるので、持ってきて欲しいと頼んできた。
いや、盗品の所有者は、盗まれた人だからね。ファシスでもアルベルトでもないよ。
というわけで、レッドガード渓谷洞穴へ、盗品を探しに行くことになった。
アルベルトが盗んだ盗品は、ウェザーレアに隠されていたが、オーガが襲撃したときにそこに持ち去られたというのだ。
高台に登れば手も足も出ない馬鹿だけど、盗品を持ち帰るぐらいの知能はあるようだ、あの野蛮人め。
場所はウェザーレアからちょっと東に行ったところにある洞穴。
ギルバートにファシスから聞いた話をしてみたら、父親が盗賊だなんて根も葉もない言いがかりだと怒っちゃった。
まぁ、普通は父親が盗賊だなんて知られたくないよな。俺は魔術師ギルドで二度、民間人から一度盗みを働いているけどな!
東に向かうと、アイレイドの遺跡があったけど、今回は遺跡が目当てではない。
近くにあるであろう洞穴を探して回った。
途中、以前農場に襲い掛かってきた怪物が現れたが、今回はゾンビを召喚して襲い掛かってきた。
召喚魔法を使いこなす怪物、やるではないか。
というわけで、レッドガード渓谷洞穴。
串刺しになった頭蓋骨や、壷いっぱいの頭蓋骨が、食人種オーガ、あの野蛮人の住処だということを物語っている。
中は暗く、よくわからないが、オーガが居ることはなんとなくわかる。
明かりをつけたらこっちの位置がばれるので、暗闇の中こっそりと霊峰の指を打ち込んで退治しつつ奥へと進んでいく。
そして洞穴の一番奥、ひときわ大きなオーガが待ち構えていた。
「お前が宝を盗んだのか!」
「がう!」
ダメだ、言葉が通じない奴だった。
つまり降伏勧告は無意味なわけで、最初から全力で打ち込んでやった。
たとえ降伏したとしても、こんな野蛮な食人種は問答無用で退治するけどね。人間ですら悪即斬の世界なんだ。こいつに躊躇してやる理由は無い。
戦闘によって持っている宝が壊れたりしないかと心配になるが、よく考えたらこんな奴が持っていた物なんだ。精密品なら既に壊れているだろう。
こいつが持っていたのは、「コロルの栄誉ある剣」だった。
栄誉ある剣ならネコババしても悪くないが、あいにく俺は剣の腕はからきしだ。
ファシスに届けるか、ジェメーン兄弟に届けるか、コロルにとって大事なものなのだろうから、城に届けるか……
帰り道の途中でウェザーレアに寄ってギルバートやレイナルドに話しかけてみたが、父親は盗賊じゃないの一点張り。宝物の剣に目もくれやしない。
こうなったら、城に届けるしかないな。
盗品は、盗まれた人のところに戻すべきだ。
俺もフィンガーオブザマウンテンの本を何度か盗んだが、最終的には元に戻しておいた。
魔術の手引き? あれはイタズラだ。あんな本、どこにでも売っている、と思う。
「この剣が目に入らぬかぁ!」
「おおっ、これは由緒あるコロルの栄誉ある剣、何故あなたが持っているまのですか? まさかあなたが?!」
「違うわい! ファシスって奴が――ってどうでもいいや。ほらやる、持っていけ」
「感謝の気持ちをこめて、あなたに勇気と栄光の象徴であるコロルの紋章盾を授けましょう」
なんかくれたぞ。
わらしべ長者みたいに、次から次へといろいろな宝をくれたら面白いな。
ちなみにこの装備は、チルレンドとコロルの紋章盾。コロルで報酬としてもらった装備品だ。
ダサいエプロンしかくれなかったシェイディンハルとはえらい違うなぁ。
というわけで、わざわざジェメーン兄弟にも盾を見せびらかしに行ってやった。
すると、父の過ちを正す仕事をさせてすまなかったと誤ってきた。やっぱりどろぼうさんだったのか!
それでも盗品がコロルの城に戻ったことを喜び、お礼としてギルバートが子供の頃に父からもらった形見を譲ってくれた。
あなたが持つべきだとか言っているが、いいのか? 形見だぞ?
というが、形見はソウルジェム。
何に使うのか分からない……
黒い奴だったらヴァーミルナに捧げられるが、これは黒くない。
今度ソウルジェムの使い方を、ジーンヌかティーキウスに聞いておこう。
コロルクエスト 父の罪 ~完~
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