叫びの殿堂にて 前半 ~内部抗争?~
シールタの目を手に入れるために、ニュー・シェオスから南へ向かった方角にあるハウリング・ホール、すなわち叫びの殿堂へ向かうこととなっている最中だ。
途中ディープワロウの村に立ち寄って、再会したマシウの依頼を引き受けてやったりしたが、いよいよハウリング・ホールである。
なんだか入り口前にゼロットが住み着いていたけど、緑娘が弓矢を取り出さずに戦っているのでそのまま任せる。
そしてレルミナも作っていたミニゲートキーパーは、死霊術ではなく召喚術で呼び出せることがこの戦いで判明。ゼロットはこいつを召喚できるのであった。
「さて、ハウリング・ホールへ突入したわけだが、道が左右に分かれている」
「あたし右を選ぶわ」
「では俺は左を選んでみよう」
戦力分散は、各個撃破の的になってしまう恐れがある。
しかし個々の戦力が高ければ、二正面作戦を取って二倍の戦果を挙げられるのだ。
「ぬ……」
「意味のない分かれ道を作っているのね」
「たぶんグルグル回ってしまう罠なんだよ」
「そこに居るのは誰だ?!」
雑談しながら石造りの遺跡を進んでいくと、突然何者かが現れたのだ。
赤いローブ――、ヘレティックでもゼロットでもない。
第三勢力か?
「覚悟しなさい! えっと――」
「サキエルだ!」
「あたしはテフラ! 勝負だサキエル!」
だから弓矢の意味があるのかねそれは?
絶対に当たるからこっちは手出ししないけど、放つ前から鼻の先に刺さっとるやん。
こいつが持っていたのは、使徒のダガーとローブ、そしてどこかの鍵であった。
こいつのローブを着ると、自分の周囲が明るく輝くのだ。
ここに居ますよー、と敵に教えるだけである。
「わぁ、いろいろ集まってるー」
「そんなに炭素やクロム入り酸化アルミニウム、フッ素入りネソケイ酸塩鉱物が欲しいかねぇ?」
「金貨はどう表現するのよ」
「金?」
「それだけそのまんまね」
要するにダイヤモンドやルビー、トパーズなわけで。元素で語るとなんだか科学者チックになれる不思議ー。
ちなみに琥珀は樹液な。
そんな感じでシャムシエル、ラミエルと名乗ったヘレティックでもゼロットでもない第三勢力を退治しながら進んでいくのであった。
こいつらは一体何に属している奴らなのだろうか?
「こ、こらっ! お前はここの者じゃないな?! 他の奴らに見つかる前にローブを着るんだ! 見つかったら殺されるぞ」
「いや、サキエルとかシャムシエル、ラミエルとか退治してきたけど? お前はガギエルか?」
「違う、ラ=キーランだ。乱暴する気はない、ラ=キーランは力を貸せる」
「ラッキーマン?」
「ラ=キーラン!」
さて、ラ=キーランの話では、ここに居るのはシールタが打倒シェオゴラスという光を求めてやってきた使徒たちであった。第三勢力は使徒か。
だが彼は、シェオゴラス打倒の話にうんざりしていて、逆にシールタを打倒するために力を貸して欲しいと言ってきた。光を見せてくれると約束してくれたのに、シールタの話はいつもシェオゴラスに対する復讐のみだったのだ。
そしてシールタを始末できれば、代わりに彼が信者を光へと導いてやれると言ってきた。
それから俺のことも公爵だと知っていて、シェオゴラスがシールタを始末するためによこしたのだろうと言った。ちょっと違うけど、まぁ今はそれでもいいか。戦略的目的は同じだからね。
そこで、他にもシールタを消したがっている者が居るので、そいつらをラ=キーランがまとめ上げて反乱を起こすと言ってきた。
そのために、使徒のダガーを3本集めてきて欲しいと言ってきたのだった。
ん~。
こいつが信者を光に導けるとは思えんが、シールタを始末するという目的は一致している。
ここは無駄な戦いを避けるため、手を組んでやろう。
それに、シールタは打倒シェオゴラスを掲げているが、他の信者は光を求めているだけ。頭さえ潰せば残りに害は無いだろう。
「さて、俺は使徒に化けて潜入するが、君も使徒に成りすますか?」
「やだ、そんなローブ着たくない」
「じゃ、面倒なことを避けるために、ここで待機な」
「む~」
「むーでも駄目」
「わんっ」
「わんもそこで待機、ハウス! お座り!」
というわけで、ここから先は俺一人で潜入だ。
使徒のローブを着ていれば襲い掛かってこないらしいので、それを信じて安全に行かせてもらう。
でもローブを着ていないと襲われるわけで、結局は害ある者たちなのだよなぁ……
確かに使徒は、ローブを着ていたら襲い掛かってこない。
「光が汝の顔を照らさんことを!」
「シールタってどんなん?」
「シールタとは光をもたらす者。彼女は未知なるものを目にしたのです。我々に加わりたいのなら、彼女とお話を」
「ん、話してみよう」
とりあえず話を合わせて先へ進む。
使徒のダガーを集めて反乱を起こしてもいいし、回りくどいことはせずに一気にシールタを退治してもよい。
打倒シェオゴラスを掲げる彼女は、シェオゴラスの意思を継いだ俺の敵ということになるからな。
いや、あまりよろしくない集団でもあるようだ。
これでは死霊術師と変わらないねー。
途中、信徒が熱心に拝んでいる骨が気になったりした。
これはペラギウスの骨盤らしい。
数百年前、ここハウリング・ホールは狂気を治療する寺院として使われてきた。
そしてペラギウスとは狂気に取りつかれた皇帝で、その間ここに滞在していたらしい。
しかしこの広間で亡くなった時に、寺院も取り壊されてしまった。
そこで信徒たちは、シロディールから石を拝借してきて、ここに立て直したのだとさ。
ん~。
なんか珍品っぽいから頂いて帰るか。
俺は、信徒が他所に行っている間に、飾られていたペラギウスの骨盤を取り出した。
そのままにしていると騒ぎになるかもしれないので、代わりに琥珀を入れて様子を見ることにした。
「ごきげんよう、ブラザー。今日、光に目覚めたのかね?」
「うむ、目覚めたようだ。ペラギウスの骨盤も輝いて見える」
「ややっ、本当だ。ナマンダブナマンダブヒデブ――」
ん、すり替えられたのに気がつかないらしい。
ただのあほなのか、俺の戯言を信じたのか――
ま、カルト集団なんて、しょうもないことを信じる者が集まる場所だ。
こいつらは人の言うことを信じやすいのだろう。
俺は、こういった宴会場に苦手意識を持っている。
それもこれも、全てはサングインが悪いのだ。
俺がシェオゴラスと同格の力を得られた場合、まず最初にサングインに「めっ」しに行こうか。その後、メファーラに「めっ」だ。ちと怖いけどw
続く――
前の話へ/目次に戻る/次の話へ