スワンプガス・ホールにて ~猟犬の牙の鍵~
シールタの目を手に入れるために、ニュー・シェオスから南へ向かった方角にあるハウリング・ホール、すなわち叫びの殿堂へ向かうこととなった。
その途中、ディープワロウの村に立ち寄ると、パスウォールの村で別れたベラモント親子、マシウとルノーと再会したのであった。
マシウはシェオゴラスから箱を受け取ったが、それには鍵がかかっていて開けない。
そしてその鍵は、村からずっと南にあるスワンプガス・ホールに隠されているらしいのだ。
そこでマシウの依頼で、俺はそこへと鍵探しに向かったのであった。
スワンプガス・ホールにて――
孤島にある洞穴、そして陸から見えた入り口から入ると、そこは行き止まりであった。
正確に言えば、木の根で道を閉ざされており、その根を開く仕掛けは奥にある状態。つまり、こちらからは奥へと進めず、どこか別の場所から入ってこの通路を開かせなければならないということだ。
「どうするのよ」
「ん~、ここで待機してもらって、俺が一人で別の入り口探してくる」
「入り口が見つからなかったら?」
「鍵は諦めてもらおう」
一旦緑娘と犬のチロジャルはここで待機。
俺は外に出て、別の入り口が無いか探してくる。
そして奥から通路を開いて合流しようという算段だ。
外に出て、スワンプガス・ホールとなっている木に登って周囲を見渡す。
すると、もう少し西へと向かった方向に、同じような木があるではないか。
もう一つ別の入り口。
こちら側は陸側からは見えないので、多くの冒険者が先ほどの入り口しか見つけられずに諦めた――ってことかな?
それでは改めて、洞穴に突入っと。
そこは、入ってすぐの場所に落とし穴が待ち構えていた。
これは引き返させないということだね。
先ほどの入り口と繋がっていることを祈りつつ、俺は中へと飛び込んだ。
洞穴は、エライトラの住処となっていた。
こいつらと言えば、フェルデューを思い出す。
セイドンの依頼で反転の杯を探す際、こいつらから取れる体液を補給しながら奥へと進んだっけ。
今ではそのセイドンはオーダー側へと寝返ってしまい、今どこで何をしているのかわからない。
俺がシェオゴラスの意思を引き継いだ以上、どこかでセイドンと決着を付ける必要が生まれたわけだ。
ま、シルより弱いと思うから、そんなに気にしていないけどね。
「ややっ、自然の牢獄に囚われている気の毒な娘と犬を発見」
「どうしてそうなるのかしら? それとまたミドリムスメって言った」
「この扉を開ける方法はこちら側にしか無いからだ。あと、キノドクナムスメと言ったのだ」
「後ろから出られるのに」
牢屋、監獄の後ろから出られる。
そう言えばグレイ・フォックスが捕らえられた独房は、後ろから出られるよう隠し通路へと繋がっていたっけ?
くれぐれも間違えないように。逮捕されたのはグレイ・フォックスであって、俺ではない。
俺のような英雄が牢屋に入れられることなどあるわけが――サングインめ……(。-`ω´-)
緑娘が加わると、もう俺が直接戦う必要はほとんどない。
手を出す場面は、緑娘が弓矢を構えた時だけだろう。
後は、前衛を突破された場合のみ。
ナールに木を取られていて、バリウォグの突破を許していますよお二人さん!
ま、こんなトカゲが襲い掛かってきたところで、恐れるものはなにもない。
さて、このスワンプガス・ホールの一番奥と思われる広間が、先ほどナールとバリウォグを始末した場所である。
そこには、一定間隔で煙を吐き出す緑色の玉があるぐらいで、後はヒタワリとかトゲバリとか錬金素材しか無かったりする。
「何かあるとしたら、この中だなぁ」
「やっぱりこの緑の丸、かわいいー」
「不用意に近寄らない方がいいぞ」
「ぬ、猟犬の牙の鍵? 確かに牙の先が鍵のような形になっているが、これかな?」
いろいろと中に入っていたが、確かに鍵っぽいものが入っていたりする。
これは珍品の類の気がするけど、他に何もなければこれをマシウのところに持ち帰ってやろう。
「わあっ」
「だから近寄るなと言ったのに……(。-`ω´-)」
この煙を吐き出す緑の玉、結局今に至っても何なのかさっぱりわからん。
ただ、中にいろいろと物を溜め込む習性があるらしく、こうして時には掘り出し物が見つかったりするわけだ。
以上、猟犬の牙の鍵という鍵っぽいものを見つけられたので、一旦引き上げることにする。
帰り道はこんな具合。
足が滑った! とか言って転んでやろうかのぉ……
………
……
…
「ややっ、これは確かに鍵!」
「苦労したんだぞ、緑娘の運搬とか」
「あっ、今度は確実にミドリムスメって言った!」
「あんまり騒ぐな。本当にそれが正しい鍵なのかさっさと試してみろ」
「そりゃあもう」
マシウは嬉しそうに箱に鍵を差し込んだ。
するとカチリと音がして、中から一冊の本? が出てきたのであった。
「なんだこの本は?」
手に取って内容を確認してみる。
とりあえず最後の方、新しい部分を読んでみよう。
「何々――、すり替えをやってるんだ。指令のすり替えを。本当に簡単だ。ラチャンスの棲家のファラガット砦から尾行して最初の指令の置き場所に行った。ラチャンスがいなくなったのを確かめてから、指令をすり替え――」
「うわあぁぁぁぁっ!」
「なんぞ?」
文章を読んでいると、マシウに素早く本を奪われてしまった。
ラチャンスって何だろう? ルシエン・ラチャンスかな?
指令のすり替えって、あ――
「マシューお前、それ日記か?」
「僕の日記だ! 勝手に読んではいけない!」
なんだか全部が気になるが、マシウはしっかりとつかんで離さなくなってしまった。
「これはもう必要ないから燃やすんだ」
「黒歴史日記なのな」
まぁいわゆる厨二日記のようなものだろう。
指令のすり替えとかなると、闇の一党だったころの日記なのだろう。
マシウの活動がどんなだったのか気になるが、俺も闇の一党時代は黒歴史にしてしまいたいので、ここはそっとしておいてやろう。
闇の一党は壊滅し、俺は再び緑娘と会えた。そしてマシウも母親と再会できた。
あの頃の出来事は、無かったことにしても良いぐらいだ。
そういえば、シェオゴラスがマシウの日記がどうのこうの言っていたような?
奴を殺すとか、色がどうのこうのとか言っていたような気がするが、シェオゴラスが傑作と評していた日記。
やはり気になる――
気になるが、そのまま焚書させてやろう。
「日記は渡さない。でもこの鍵はもう必要ないからあげるよ」
「俺も要らんけど、珍品博物館のウナが喜ぶかもしれんからもらっておこう」
こうしてマシウの依頼をやり遂げ、マシウはシェオゴラスから受け取ったという箱から過去の日記を手に入れたのであった。
そして俺は、猟犬の牙の鍵という牙なのか鍵なのかよくわからん珍品を手に入れたのであった。
さて、改めて叫びの殿堂へと向かいますか。
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