ディメンシアの旅路 ~水浸しのキャンプとかオベリスクとか~
ねじれ窟・ノッティー・ブランブルや、ゼディリアンを目指して、ディメンシアの地を南西に向かう旅は続いている。
しかしホント、マニアの地と違って、こちら側は雰囲気からして既に陰気だ。
とにかく暗い、まだ午前中のはずなのに、この暗さである。
青空一つ見えず、青白い靄に包まれた空は、心をドンヨリとさせてくれるのだ。
こんな所に居るから、バーニスも病弱になったような気になるんだ。
彼女は、マニアへ移住したら、それだけで回復すると思う。
「なんだか廃墟があるねー」
「さしずめ水浸しのキャンプってところかしら?」
「キャンプだったら、フォークがあるかもしれないね」
ビッグヘッドに義理を通す必要は無いが、いずれは俺の臣民となる者、良いようにしてやろう。
彼の求める失われた「戦慄のフォーク」とやらは、なにやらヘレティックやゼロットが奪い合っているらしい。
そこで、見かけたキャンプには全て立ち寄っておこう、ということになったのだ。
いや、あれがキャンプには見えないけどね。
――と思ったけど、近寄ったら寝床があったりしてキャンプみたいだった。
そこが「みたい」と曖昧なのは、マニアの地にあったキャンプのように、屋根付きの建物があったわけではないからだ。
「ガウゥッ! ガウッ!」
「ぬっ、スケイロンだな」
このキャンプには人はおらず、スケイロンが一匹うろついているだけだった。
これならフォークはここには無さそうだな。
それよりも驚いたのは、この犬――だったものは、敵味方の区別がつくらしく、スケイロンに一直線に飛び掛かっていったのだ。
見た目はゾンビ犬、ケルベロス。
だが、ウシュナールが相当訓練させていたのか、見た目通りゾンビだから、新たに命令を上書きされたのか知らんが、少なくとも俺たちの仲間であるらしい。
「おう、えらいぞ」
「グルルルル……」
「やっぱ名前つけてやれよ」
「思いつかないわよ。らむりんとでもつけてたらどうかしら?」
「そんなのやだよ」
ただ、この元犬だったものは、「わんっ」とは鳴かずに唸るだけ。
まぁゾンビだから仕方がないと言えば仕方がないのだけどね。
ただ、このポーズから察せられるように、一応犬ではあるらしい。
「さて、念のために周囲の宝箱を確認して、フォークがあるかどうか確かめるぞ」
「この寝床の傍にある宝箱はどうかしら?」
「3G入ってた……(。-`ω´-)」
この微妙な額が、俺に嫌な予感を覚えさせ、緑娘を不機嫌にさせる。
そして、この微妙な額ではあるが、小銭が入っているのを見て、物乞いがいかに怠慢なのかを思い起こさせる。
小銭など人から施されなくとも、樽や袋を漁ればそれなりにあるんだよ。
「とりあえず、この水浸しのキャンプ? ――も、調べておこう」
「ご自由にどうぞ」
緑娘は、なんだか椅子みたいな感じになっているキノコに腰かけて、調査の手伝いをしてくれない。
ま、以前から濡れるのを嫌っているからね。
「宝箱発見!」
「中身は何かしら?」
「2Gと銀のボウル!」
「おしかったわね、食器だけは合っているじゃないの」
「袋発見!」
「中身は?」
「3Gと黄褐色の水入れ!」
「ご苦労様」
8Gと食器と水入れが見つかったぜ!
やったね、らむちゃん!
そんなわけで、南西へ向かう旅を再開するのであった。
ちょっと気になることがあったりする。
道中、ハンガーやナールが勝手にくたばっていたりするのだ。
そして、その身体には無数の「いざなう闇の矢」が刺さっている。
う~む……
矢を使うハンターが、どこかに潜んでいるのかもしれないね。
周囲に気を配って、油断しないようにしなければ。
「道が分かれているわ」
「向かうは南か西、だからこっちだ」
ここから北に向かうと、スプリットの村へと続いている。
俺たちの目的地へと向かうなら、西へと続く道を選ぶべきだ。
スプリットの村へ戻って、ディメンテッド派を消していもいいのだが、もう少しディメンシアを探ろう。
すでにこの陰気さに、うんざりしているけどな。
「よくそんなの触る気になるわね」
「ミリリの依頼を忘れたのか? 錬金素材を集めなければな」
「あたし持たないわよ」
「へいへい」
何の卵かと思ったら、ただのグラマイトの卵だった。
まだ持ってなかったので、頂いておく。
以前グラマイトを退治した時に卵を持っているのを見たことあるけど、その時は気にせず放置していたからね。
また、ディメンシアでも引き続きエリトラが襲い掛かってくるので、サクッと返り討ちにしておいた。
ゾンビ犬が足止めしてくれるので、俺も安全な場所から狙いを定めて霊峰の指改を撃ち込めるというものだ。
見た目が普通の犬だったら、いいパートナーに――いや、こんなでも立派な仲間だと思ってやらないとな。
陰湿なのは、ウシュナールだ。
普通の犬をくれたらよかったのに、なんでこんなのにしたのだろう。
あ、ディメンテッド派だから陰湿なのか、それなら仕方ない。
そして、このディメンシアの地にも、謎のオベリスクは存在していた。
マニアの地で見た物と同じだ。
「いったい誰が、こんなもの作ったのかしら」
「ただの水晶じゃないかな」
「こんなにでっかいのが?」
「ひょっとしたら、何かを封印しているのかもしれんぞ」
「水晶の里の照光子とか?」
「誰だよそれ」
今は何だかわからんが、いずれこのオベリスクの謎も解明できることだろう。
道は今度は西と南へと分かれていた。
「今度も西かしら?」
「んや、ここからは南だ」
南西に向かいたいのだから、南を優先しつつ西へと向かえばよいだろう。
あまり西へ行き過ぎると、フリンジに戻ってしまうかもしれないからな。
ねじれ窟・ノッティー・ブランブルや、ゼディリアンを目指している旅は、まだまだ続く――
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