エピローグ2 新生シェオゴラス誕生祭 ~戦慄の島は今日も平和です~
「ところでで、それは何の格好だ?」
新生シェオゴラス誕生祭の朝、目が覚めると緑娘が全身緑娘になっていた。
「結婚式を挙げてくれるって言ったでしょう? こんなこともあろうかと、用意していたのよ」
「ああ、それ系統の衣装だったか」
「あなたもそれ系統の衣装に着替えなさいよ」
「別にこのままでもかまわんが――」
でもまぁ折角だから、いつもと違う俺を見せてやろうか。
――と思ったけど、実は今日の日に相応しい衣装があったりするのだ。
どうだ!
シェオゴラス二世になるつもりはないが、便宜上シェオゴラスの後を継いだことになっている。
公式の場では、この衣装で現れる方がよかったりするのかもしれん。
「よし、これで君はシェオゴラス夫人となるのだ」
「やっぱりシェオゴラス二世になるのね」
「……えーと、ネレウ――?」
「ネレウテリア」
「ネレウテリア夫人でいいです」
思い出せない限り、この名前にはしっくり来ない。
しかし、俺の本名フルネームは、どうやらラムリーザ・ネレウテリアらしいのだ。
それだったら、ラムリーザ=シェオゴラス・ネレウテリアとして生きていくと決めたばかりだったので、慣れるしかないというわけだ。
今日の予定は、朝から晩まで宴となっている。
午前中は、サセラム・アルデン=スルで緑娘との結婚式。
午後からはずっと、ニュー・シェオスで新生シェオゴラス誕生祭だ。
どうせこの世界の住民、特にマニア地方の住民は、年がら年中頭の中がお祭り騒ぎなのだろうがな。
俺の治世で、少しずつまともな世界へと導いてやる。
………
……
…
そして、戦慄の島のしきたりに従って、俺と緑娘の結婚式は始まった。
それぞれの村から集まってくれた人たちが、サセラム・アルデン=スルの講堂に並んでいる。
まずは、俺と緑娘は祭壇に向かって並んで進まねばならぬのだ。
ハスキルに聞いてリハーサル済み、ただ歩くだけではない。
これも狂気の世界の名残り、踊るように入場するのがポイントなのらしい。
俺と緑娘が動くたびに、招待客は「わあっ」と沸いて拍手喝采。
妙な風習もあったものだ。
「ああ、誇らしげな花婿と、美しき花嫁がやって来た。式を始めよう」
聖女マーラは初めに創造物を産み、同胞を神の子として守護することを誓い給うた。
民を愛し給う聖女の教えにより、我らは相互の愛を学んだ。
そしてその愛から、独り身の人生が全き人生ではない事を我らは学ぶ。
今日ここに、聖女マーラの愛の眼差しの下、我らは会して二つの魂が永久の交わりで結合することを証言する。
神の子らが、この世と次の世を通じて、富める時も乏しき時も、また喜びと難をも共にすることを念ずる。
教会に居る二人の司祭が、声を揃えて宣言する。
これが巫女だったら、伝説の不死鳥の卵を守っていそうな雰囲気ではあるが、残念ながらここにいるのは二人のおっさんだ。
ちょっと気になったことを尋ねてみる。
「マーラなん?」
「結婚式は、どこであろうともマーラです。それでは花嫁テフラよ、夫を未来永劫、愛し続ける事を誓うか?」
どうやらタムリエルでは、九大神の一つであるマーラが結婚を取り仕切っているらしい。
マニア側の司祭、ダーヴェニンは緑娘に尋ねてきた。
「はい、これからもずっと――」
「花婿ラムリーザよ、未来永劫、妻を愛し続ける事を誓うか?」
「そうだな、永命の者となったし、たちまちは一万年と二千年ぐらいは愛し続けてみよう」
「その後はどうなるのかしら?」
「たぶん八千年過ぎた頃からもっと恋しくなると思うので、一億年と二千年後も愛しているだろう」
「五億年ボタンは押す?」
「君と一緒に居られるなら、押すさ」
「雑談やめい! 愛の神マーラの名において、二人の婚姻をここに認める!」
二人には、マーラの神聖なる愛の祝福を受けた揃いの指輪を授けよう。
二人の新たな生活において、互いを護ってくれるであろう。
こうして、俺たちの結婚式は終わった。
………
……
…
午後は、予定通りニュー・シェオスでの宴会だ。
まずは全員で乾杯と行こうではないか。
みんなに酒が行き渡ったところで、俺は――
「乾杯! ――と俺が言ったら乾杯だぞ~」
「乾杯~っ!」
ラナル・ジョーだけの声が響き渡る。
引っかかったな王様!
さて、せっかちな奴をあぶり出したところで、改めて――
「さあ、新しい時代の始まりだ! 乾杯!」
俺の音頭に合わせて、王様以外の乾杯が響き渡った。
なぜカップを地面に叩きつける?!
お前らこれから出征するのか?
「何カップを叩きつけているのよ」
「あれっ? 俺もやってた?!」
ぬ、プロージットということで……
いや、それ出征前祝いやん……(。-`ω´-)
まぁ、なんというか――
平和だよな。
シロディールから戦慄の島にかけて、いろいろと辛い事もあったけど……
俺は今、たぶん幸せだ。
さあ、新しい世界を創っていこう!
緑娘と共に!
「さて、最後にみんなで記念撮影と行こうか」
「ほらそこ真ん中に寄って」
「王様、女王様、お前らも入ってこい」
「あれ? ランズ・イン・サークルが居ないよ」
「またどっかに走っていったか。まぁ、ワ=マワーレ一人ぐらい欠けたところで問題ない」
「それではみんな撮影機を向いて笑顔でーっ」