ブラヴィル地方にて ~ニベン湾、奇妙な扉~
ブラヴィル――
俺とマシウにとって、印象深い街だ。
かつてここで、闇の一党相手に最後の戦いを繰り広げた。
ブラックハンド最後の生き残り、そしてナイト・マザーとの死闘。
闇の一党は壊滅し、ナイト・マザーも葬られた。
これでこの世界から、闇の一党は消え去った――と思いたい。
俺たちにとっての復讐の戦いが終わった場所でもある。
「ディーサンさん!」
「ディーサンはシェイディンハル支部長、私はクッド=エイですよ、アークメイジ」
「ごっ、ごめんなさいっ!」
ダメだ……、アルゴニアンの顔の区別がつかない……(。-`ω´-)
ディーサンはシェイディンハル、クッド=エイはブラヴィル、場所で覚えなければならないのか。
あとコロールはティーキーウスな、忘れるなよ。
「ところでアークメイジ、街からすぐ東を流れるニベン湾中央にある謎の島をご存じですか?」
「ん~、以前見たような気がするような気がする」
「曖昧ですねぇ」
確か、ブラヴィルで幽霊の噂を聞いた時かな?
なんか不気味な顔の石像がある島があるなぁ、とか思っていたけど、あの島が何だと言うのだろう?
「謎の島がどうしたのですか?」
「その小島に奇妙な扉が出現したという噂を耳にして以来、ギルドメンバーが不安がっているのです」
「つまり、俺に調査してもらいたいってわけだな?」
「よろしくお願いします」
どうもシロディールは平和になったというのに、魔術師ギルドのメンバーは不安がっている者が多いな。
やっぱり皇帝不在というのが、臣民の希望を失う方向へ作用しているのだろうか……
「それじゃ、調査が終わったら、こいつの推薦状出してやってくださいよ。こいつと一緒に調査しますんで」
「そりゃあもちろん書いてあげるよ」
「んじゃちょっと行ってくるか」
相変わらず、何から何までアークメイジに丸投げしてくる魔術師ギルド。
こんなので大丈夫なのか?
俺が覇王の道を選び、アークメイジをリリィさんに譲った後のギルドは……。
いや、思うまい思うまい。
とりあえず今夜は遅いので、ここで一晩明かして明日調査に向かうことにする。
そろそろ俺にばかり頼っていないで、自分たちで調査してみようという意気込みを見せてもらいたいものだ。
俺が皇帝になったら、もう下々の細かい仕事などできなくなるぞ?
それともこの臣民たちは、皇帝陛下に雑用を申し付けるのだろうか……(。-`ω´-)
………
……
…
翌朝、俺はマシウと共に、ニベン湾へと向かった。
さて、あれが以前見たことのある、ニベン湾に浮かぶ小島だ。
顔の形をした石像が見えていたような気がするが、いったい何を意味する石像なのか?
「泳いでいくしかありませんね」
「水上歩行の魔法を使うか?」
「そんなのもあるのですか?」
「魔術師として、そして変性魔法を扱うなら見習いとして学ぶこととなる。詳しくはシェイディンハルで学ぶがよい」
「わかりましたっ」
マシウには持っていた水上歩行のアミュレットを渡し、俺は実際に魔法を使って島へと向かって行く。
島に近づくにつれて、石像の顔がはっきりとしてくる。
その時俺は、何だかその顔に見覚えがあるような……、どこかで見たことがあるような……
そんな気がしてきた。
いったい何を模って作った石像なのだろうか?
いや、違った……(。-`ω´-)
こんな三人の顔が合体したような、不気味な顔は見たことが無い。
リョウメンスクナという化け物は、二つの顔が合体したような物となっていると聞く。
これはその化け物をも上回る化け物だと言うのだろうか……?
口の中は光り輝いていて、まるで異次元への扉――オブリビオンゲートか?
いや、ちょっと違う感じだが、何らかのゲートに違いない。
その扉の前には一人の衛兵が。もう一人、カジートの男か女か――わからん、が居るだけだ。
なんだここは――?
とりあえず衛兵に話を聞いてみよう。
「えーと、すいません、ここは何ですか?」
「扉だよ。でも俺ならあんな扉に近づかないね。くぐって無事に戻れた奴は居ないんだ」
「オブリビオンゲートですか?」
「そんなの知らんし知りたくもない。ただ、中に入ったものはイカれて戻ってくるのさ。俺はお前――シロディールの勇者ではないですかっ。警告しますよ、まともな人間も狂ってしまいますよ」
何か最初はぶっきらぼうな台詞だったが、俺がシロディールの勇者だと知ってからは急に態度を変えたぞ?
元クヴァッチの英雄のシロディールの勇者、しかし本体はアークメイジだけどな。
もうすぐお前らの皇帝になる身でもあるんだぞ。
ここの調査も終わって、残りの推薦状を集めてマシウを魔術師ギルドに突っ込んで、リリィさんに後を託したらな。
「正気じゃない! 狂ってる! 何もかもおかしい! 無茶苦茶だ!」
その時、けたたましい叫び声が響き渡る。
そして、光の中から一人の人物が姿を現した。
「また現れたか! 下がっていろ! こいつは凶暴だ!」
衛兵も叫び声をあげて剣を抜くと、ゲートから現れた者に切りかかっていった。
何だ?
デイドラか?
やはりオブリビオンゲートなのか?
まだオブリビオンの動乱は、終わっていなかったのか?
「戻らねぇぞ! みんな殺す、皆殺しにしてやるぅ!」
「この狂人め!」
ゲートから出てきたのは男だった。
顔色が悪い、ダンマー、ダークエルフか?
随分とおかしくなってしまっているようだが……
「見たでしょう、こうなってしまうんだ!」
結局ゲートから出てきた男は、衛兵に切り殺されてしまった。
さてどうするか?
もしもこれがオブリビオンゲートの一種なら、中に入ってシジルストーンを奪ってやれば閉じることも可能だが……
その時、地の底から響いてくるような声が聞こえてきた。
『駄目だ! 駄目だ! 無価値な肉体め! 努力は認めるが、死んでしまった。仕方ないよなぁ』
その声は、俺たちをあざ笑うかのように、見下したかのようにも聞こえる。
しかしその声は――
『勇者が必要なのだ! わが敵の身体を引き裂く、定命の勇者が!』
それは俺のことですか?
――ってか、これアカンやつだ。
こいつはデイドラ――というかこの声に聞き覚えがある!
俺をそそのかして、一つの村を恐怖に陥れるよう仕向けたヤツだ!
『いざ来たれ! 島は今が見ごろだ! 訪問するなら今が旬!』
何が見ごろだ。
俺はお前を知っているぞ!
今度は何を求めるのだ?
シェオゴラスよ!!
「聞いたろう? 謎の声に、狂人――いったいつ終わるんだ? なんでこんな任務に……」
衛兵はすっかり怯えてしまっている。
「安心してください。このゲートを閉じて破壊してあげますよ」
「ほっ、本当か? 流石はシロディールの勇者殿!」
俺は、意を決してゲートへと向かう。
ゲートは白い光を放っていて、オブリビオンゲートの赤い光とはまた違っていた。
しかしこの先の世界は、シェオゴラスの支配するオブリビオンの世界の一つなのだろう。