別の扉 後編 ~友達の小さな手助け~
金鉱奥にあった古代の遺跡。
エウリウス兄弟の調査で、さらに奥へと続く通路が発見された。
しかしその通路は、声や視界、所持品を奪う、悲惨な呪いの込められた通路だったのだ。
「大丈夫、まだあなたには耳が残っている。次の部屋は罠でいっぱいみたいだが、私は罠の識別はできる。私の指示通り進めば大丈夫です」
仕方が無いので、アレニオンの指示通りに進むことにした。
「まずはここから北西へ向かい左に曲がると、前方に門があるのでそれを通り抜けてください」
「いいぞ、次は右の壁に手を置いて、北西の方向へ進むんだ」
「角に進んで、南西の壁を追い続けて」
「角を曲がり、南東へ壁沿いに進んでください。でも途中で止まってください」
「ここでストップ、左を向いて北東へ向かって歩き、部屋の中心へ入るのです」
「よし、もうすぐです。右に曲がって南東へ向かってください。そこで次の石碑を見る事ができますよ」
以上、これがアレニオンの指示通り進んできた部屋の全貌。
ひし形をした部屋で、右端から入って周囲をぐるりと回り、次に中央部へと向かい、最後に南東部へと抜けたわけだね。
というわけで罠の間を通り抜け、次の石碑へと辿りついた。
「この石碑には『友人達は無力になる』と書いてある。あなたがそれに触れたとき、我々に何かが起きるのかもしれない」
しかし触るしかない。迷わず触れて、先に進むしか無いのだ。
石碑に触れた途端、何かが金属のようなものが落ちてくる騒々しい音がした。
振り向いたが、視覚を奪われた状態では何が何だかわからない。
どうやら、鉄格子が落ちてきて、探検隊は分断されてしまったようだ。
鉄格子の向こうに居る人は、無力化したも同然だ。
「私は友人ではないからな、あなたの熱狂的なファンなのだ」
「…………(。-`ω´-)」
アレニオンとログクロズ監督は分断されたが、アマリウス兄貴の方は残ったようだ。
「あたしも友人じゃないわ、恋人――いや、婚約者よ」
「…………(。-`ω´-)」
緑娘も残ったのね。
「じゃあここからは、あたしが解説してあげるわぁ。まずは階段を登ってね」
緑娘の指示通りに進む。
左右の壁は、鉄格子が張り巡らされているらしく、独特な手触りだ。
「ちょっと待って、通路から刃が飛び出してくるわ」
「そうね、床の方までは刃が伸びていないので、匍匐前進で行きましょう」
いつも思うのだが、この仕掛けの動力源はどうなっているのだろうね。
緑娘の指示通り、匍匐前進で刃が振れている通路を突破したのである。
その先には、再び石碑のある小部屋。
アレニオンが居ないから石碑に何が書かれているのか分からないが、触るしかないのだ。
全く、次は何が失われるというのだ?
順番から行って次は聴力だろうな。その次は全身の力が奪われる。
全く――、戦場に行ったジョニーじゃあるまいし、なんで俺がこんな目に合わなければならないのだ。
これで遺跡の奥にある物がしょーもないものだったら許さんぞ。
まったく、こんな苦難に比べたら――
「こんな苦難に比べたら、帝位簒奪など大した事ないな、まったく」
「あ、しゃべりだした」
「むっ? この石碑に触ると声が戻るのか。ん? 見える、見えるぞー」
「あなたさっき『帝位簒奪は大した事ない』って言ったわね」
「それは空耳ケーキです(。-`ω´-)」
「何それ意味わかんない」
しかし視界が戻ると、やっぱり裸で居る事が恥ずかしすぎる。
人類は神に創られた直後は裸だったが、知恵を得てしまったら裸を恥ずかしがったという神話がある。
ぱっぱらぱあは裸で居ても恥ずかしくないというのだろう。配達人とか……
まぁ基本的に蛇が悪いよ、たぶんね。
幸い、通路の終点にアイレイドの聖骨箱というものがあり、そこに持ち物を全て見つけたのだった。
やっぱりサングインっぽいな、これは……
「やっぱりその方がいいわ」
「あたりまえだろ」
「裸でうろうろしているの見ていたら、あほじゃないかなと思ったわぁ」
「自主的にやる奴はまぎれもないあほだ。でも俺は強制的にやらされただけだ! 以前も! 今回も!」
「あほみたいな仕掛けね」
「サングインもあほだよ」
というわけで、いつもの調子を取り戻して先へと進むのだった。
ここの目の前にあるのは新たな扉。ヴァッサ・タルナビエという場所に通じているようだ。
塞がれていた別の扉と同じ場所だね。
ここで一旦アマリウス兄貴は来た道を引き返し、鉄格子が元に戻っているか確認へ向かった。
俺と緑娘は、遺跡の奥へとさらに進む。
そこは、格子状の床が広がる広間になっていた。
上と下の層に分かれていて、床の下にも空間があるようだ。
「グランド・チャンピオン! 大丈夫か?」
「アレニオン?」
俺のことをグランド・チャンピオンとしか認識しないアレニオンは、下の階層に居るのだった。
どうやら分断された跡いろいろと探っていたら、塞がれていた別の扉の方が開くようになっていて、この下に通じていたようだ。
「先に進めるか?」
「だめだ、鉄格子が行く手を塞いでいる」
どうやら下の階層は迷路になっていて、その行く先を鉄格子で塞がれている様だ。
先に進むには、何かやらなければならないようだね。
「よし、何か秘密が無いか捜しに行くぞ」
「わかったわ――って、きゃあっ!」
「なんぞ?」
一歩足を踏み出したところで、突然緑娘が体勢を崩して転びそうになっている。
「どうした、疲れたか? 少し休んでいくか?」
「疲れてなんかないわよ、何よこの床!」
ああ、そういうことね(。-`ω´-)
普通に考えて、ニードルヒールは歩行に適した靴じゃないからな。
もっとも緑娘が言うには、これは靴じゃなくて武器だと言うが、まぁそれでよい。
太陽系儀の部屋の亜種みたいなものだねここは。とりあえず緑娘とガチ勝負しなければならなくなったら、ここで戦おう。
なんかニヤニヤしてしまうねw
足を落とす位置が少しでもずれて、かかとを外してしまうと後ろに倒れてしまうのだ。
しかし鉄格子の隙間は結構広いので、俺も油断していたら足を踏み外してズボッと入り込み、股間を強打してしまいそうだから油断してはいけない。
とまぁ冗談は置いといて、この空間にあったものと言えば――
壁にずらりと並ぶボタンの群れだった。
このボタンを押したときに、何かが起きるのだろう。
まさか間違ったボタンを押したら、格子状の床が崩れて俺達は投げ出され、アレニオンはぺっちゃんこにならないだろうな?
「おーい、アレニオン聞こえるか?」
「どうしたんだ、スペルスリンガー」
いちいち癇に障るヤローだな(。-`ω´-)
アークメイジと呼べ、アークメイジと!
「謎のボタンを見つけたぞ。押してみるから変化があったら教えてくれ」
「任せておけー」
ボタンを押すと、下の方からゴリゴリと岩をこするような音が響いてきた。
「おおっ、鉄格子が引っ込んだり飛び出したりして通路が変化するようだぞ」
「つまり、鉄格子をうまく動かして通路を作れということだね」
鉄格子の組み合わせてできた迷路、これをボタンをいろいろと押しながら通路を作っていく作業が始まった。
恐らくゴールは、奥へと続く扉までの道を作ればよいのだろう。
下層部にいるアレニオンと連絡を取りながら、ボタンを押したり引いたりし続けた。
結論:右から二番目、四番目、五番目、七番目のボタンを押したとき、下層部の迷路は完成したのであった。
続く――
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