密偵 前編 ~怪しい変態不審者?~
さて、レヤウィンに行ったりシギの羽根を探したりしていて数日過ぎたので、そろそろマーティンの解読は終わっているかなと思い、再びクラウドルーラー神殿へと向かうことにした。
まずはブルーマに向かい、そこで一泊してからさらに北を目指す。
ん? なんか街道の影でコソコソした人が居るね。
盗賊ギルドの連中かな? 盗賊ギルドはもう指導者は居ないのだぞ。
組織力を無くしたギルドは、勝手に動き回っているのかもしれない。
俺はもう知らんからな。
よく見ると、おばさんのようだ。
こんなおばさん、盗賊ギルドに居たかな?
メスレデルは若い女性だったけど、ま、もうどうでもいいや。
というわけで、クラウドルーラー神殿にて。すぐにジョフリーが迎えてくれた。
「マーティンは、例の本の解読は終わりましたか?」
「あの悪魔の書か……。彼はその本の扱いを心得ているといいのだが……、悪い影響が出ないか心配している」
「エルダースクロールに比べたら、安全だと思いますよ」
「ちなみにその本を教団から取ってくるときに、ちゃんと呪文は唱えたか?」
「何それ?」
「クラトゥ、ベラタァ、ニクトゥだ。その呪文を唱えずに持ち帰ると、災いが起きるという……」
「先に言ってくださいよ、そんな話今初めて聞いた!」
「うむ、今思いついたからな」
「ジョフリーさん……(。-`ω´-)」
この親父、なんなんだいったい。
この分だと、オブリビオンの動乱に関しても、ブレイズは余裕があるようで何よりですな。
「――と遊んでいる場合ではない。君の助けが必要なんだ」
「俺は遊んでいません(。-`ω´-)」
「門番の報告によると、ここ数日、不審な者がこの近辺をうろついているそうなのだ。しかし部下を山腹の捜索に回して、クラウドルーラーを手薄にできないのだ(チラッ」
「それは大変ですねぇ」
「しかしスパイは排除せねばなるまい(チラッチラッ」
「わかったよ、そのスパイ達を探してみせましょう」
「おお、やってくれるか、感謝する。ステファンと話をしてみてくれ。スパイを見た場所を知っているそうだ。あと、ブルーマに居るバード隊長も、役に立つかもしれんぞ」
「スパイの名前は、ボンドとか言いますかね? それともハントですかな?」
「名前までは知らん」
不審者、スパイねぇ。
そういえばここに来る途中、コソコソした奴が居たけど、あいつがスパイだったのかな?
ただのおばさん、コソドロに見えたけどね。
ちなみにステファン隊長は、神殿内部をうろうろしている人。
ブレイズはみんな同じ格好、しかも兜までかぶっとるから、なかなか見分けが付かなくて困る。
「おお、クヴァッチの英雄! オークを――」
「もうよい! 混ぜるな危険!」
「スパイは神殿の周辺、ルーンストーンの近くから街道にかけてうろついているのです」
「ところで相手はスパイと決まっているのかな? コソドロの可能性は?」
「スパイもコソドロも始末してください! 我々はここで陛下をお守りするので、安心して戦ってください!」
これも一種の丸投げのような気もするが、仕方が無い、片付けてあげよう。
神殿の周囲を虫が一匹うろうろするだけで、夜も眠れぬというのなら気の毒だからな。
問題は、不審者が盗賊ギルド関係者だった時だ。グレイ・フォックス! と言われたら、問答無用で叩きのめそう。
というわけで、再び神殿から出て、周囲を探索――
だいぶん近くまで来ておるな、こそこそした奴だな。
こんな時は、遠慮なく話しかけるというものだ。
悪い奴なら、すぐに正体を現すだろう。良い奴なら、こんなところで不審な動きをしていないはずだ。
「こんにちは、不審者ですかね?」
「こらっ、見つかるじゃないか、シッシッ!」
「そんなことを言うなら、あなたはあやしいへんたいふしんしゃです」
「よく見たらお前は、クヴァッチの英雄ではないか!」
「不審者にまで知れ渡っているとは……(。-`ω´-)」
その時、怪しい不審者は、「マスター万歳!」と叫びながら何らかの魔法を唱えてきた。
次の瞬間、不審者は良く見た装備に身を固めていたのだ。
「お前、深遠の暁か!」
「ザルクセスの神秘の書を返してもらうぞ!」
「本の奪還作戦か!」
どうやらブレイズと深遠の暁は、それぞれの重要アイテムを盗んで奪われての応酬を繰り広げているようだ。
ブレイズは王者のアミュレットは奪われたが、逆に経典の一つを奪ってやったのだ。
それを奪いに来るのは賢明なことだ。マーティンに解読されたら、楽園に攻め込まれるからな。
しかし残念ながら、迎撃されてしまうのだった。
深遠の暁末端風情が、アークメイジと戦士ギルドマスターのコンビに向かってくること自体が無謀なのだ。
「ん、こいつを調べるから、そのまま押さえておいてくれ」
緑娘に刺し踏まれたままの不審者、深遠の暁の懐を探る。指令書なり、教団グッズとか出てくるかもしれない。
しかし出てきたのは、「地下室の鍵」と記された鍵だった。
地下室の鍵、死霊を閉じ込めているのかな?
とりあえず、不審者は深遠の暁だったということと、始末したことをジョフリーに伝えておくか。
「ジョフリーさん、不審者は退治しましたよ。あと、奴は深遠の暁のスパイでした」
「よろしい。だがまだスパイの残党がいるかもしれん。引き続きブルーマにあるスパイの拠点を捜査してくれ」
「バード隊長でしたっけ?」
「そうだ。スパイの排除が終わるまで安心できない。敵の意図が不明なのだ」
「目的の一つは、本の奪還みたいですよ」
「なるほどな、本を奪えばこちらから反撃するめどが立たなくなる」
スパイの拠点は、ブルーマにあったのか。
確かに奴らなら、戦う寸前まで市民に成りすますことができるからね。
召喚武器や防具も、もっと勉強する価値があるのかもしれないな。召喚魔法の勉強なら、コロールの支部を訪れてごらんなさい。
そして今度は、ブルーマの街へと向かうのであった。
続く――
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