オゥム・クォート・オゥム ~シギの羽根~
魔術師ギルドにおける、羊問題は解決した。
もっとも魔術師ギルド問題というより、緑娘が持ち込んだ余計なことと括られるかもしれないが、ひとまず解決だ。
魔術師大学から港湾地区に向けて道が続いているが、その途中にある橋からミーシャの遊び場が一望できる。
近辺に他のゲートは出現していないし、ミーシャもレヤウィンに居るよりはここの方が安全だろう。
さて、次は何だっけ。
マーティンがザルクセスの神秘の書を解読するのが終わっているのか確認に行くか。
それともリリィさんの言っていた、カザ=ダンへ向かって、妖刀サマラームを探しに行くか。
クヴァッチへ行って、復興状態を確かめに行くか。
「アークメイジ、ちょっとよろしいですか?」
「何ですかリリィさん、妖刀サマラームはまだ見つけ出していませんよ」
「それとは別に、研究を手伝ってもらいたいのです。こちらへどうぞ」
俺は、リリィさんに促されて、大学の東側隅へと向かった。
そこには、看板――オブリビオン・ゲートの記号が使われたものがある施設があった。
「私は大学では、ここに寝泊りすることにしました」
「ここは何ですか?」
「オゥム・クォート・オゥムという研究施設です。大学の一区画を分けてもらって、ここで研究することにしました」
「ふぅん、オゥムと言えば、座禅を組んで空中浮遊とかやりますか?」
「やりません」
というわけで、リリィさんの新しい研究所へと入ってみたのである。
分けてもらったと言っているが、ラミナスさんに許可をもらったのかな?
アークメイジの俺の許可は取らないのね。まぁ別に構わないけど。
そういった細かい人事とかは、全てラミナスさんに丸投げしているからなぁ……
だから勝手に動物を連れ込んだら、たとえアークメイジであろうと怒られるのである(。-`ω´-)
中は、ちょっと見たところでは酒場のような感じ?
カウンターには、見習い魔術師がグラスを磨いている。
「ようこそ、オゥム・クォート・オゥム研究所へ。リリィの助手をやっておりますギルバートです」
「研究の手伝いと聞いてやってきたのだが、何を手伝ってもらいたいのだ?」
「リリィから聞いております。あなたなら、任務を必ずやり遂げるということですね。研究に必要な物資を補充してもらいたいのです」
「その物資とは何かな?」
「シギという生き物をご存知でしょうか? 研究にどうしてもその羽根が必要なのです」
「聞いたことないなぁ。どこら辺に生息しているのかな?」
「待ってください、いまここに地図があるので、これを見ながら探してみてください」
リリィの助手ギルバートから受け取った地図を見てみる。
ふむ、コロール南に広がっているグレート・フォレストの中か。
ユニコーンで途中まで行って、そこから徒歩で森の中に入るコースが楽かな。
帝都の西にある馬屋。
普通の馬がいっぱい居る中、ユニコーンだけが目立ちまくっている。
そうだ、念のために聞いておこう。
「こんにちは、ちょっといいですか?」
「おや、あなたはクヴァッチの英雄ではないですか! オークが倒されると思った者など居なかったのに、あなたはそれを皆に見せ付けてやったんだ! はっはっはっ!」
「待て、いろいろ混ざっているぞ……(。-`ω´-)」
俺の評判が、徐々に意味不明な物になりつつある……
「それよりもだ。シマウマもここに繋いでいてもいいですか?」
「シマウマとは何ですか?」
そうか、エルスウェアを詳しく知らない人は、シマウマの存在とか知らないわけだ。
俺もエルスウェアで見るまでは、その存在を知らなかったからな。
「わんわんと鳴く馬です」
「不思議な馬ですね、一度見てみたいものです」
「それじゃ、後で連れてくるから世話はよろしく頼むよ」
別にミーシャに世話をさせてもよいのだが、シマウマは何故か気性が荒いところがあるのだ。
時々羊と喧嘩していることがあったので、ちょっと分けておいたほうがよいのでは、と思ったわけだ。
さて、コロール方面に向けて出発だ。
「アークメイジよ、二人乗りはダメだと言っているだろうがクヴァッチの英雄よ。オークを倒すとは見事だな、はっはっはっ!」
「文句を言うのか賞賛するのかどっちかにしろ! というか混ぜるな! あとそんなこと言っている暇があるなら、ゲートの一つでも閉じてこい!」
グレイ・フォックスが混じらないだけでも、感謝しておけとでも言うのだろうか……
「クヴァッチの英雄よ、100Gよこせ!」
「前やっただろうが! 退治するぞ追いはぎ! ってか、英雄にたかるな!」
「へっへっへっ、すいやせん」
帝都とコロールの中間点辺りにあるアッシュ砦の脇には、追いはぎが待機していたりする。
ついこの間100Gあげたばかりなのに、また強請ってくる困った野郎だ。
ん? あれは――?
「おい、追いはぎ!」
「なんでげしょ、クヴァッチの旦那」
既に英雄ですらなくなっているのな……(。-`ω´-)
「あそこにあるオブリビオン・ゲートを閉じてきたら、10倍の1000Gやる」
「1000Gだって?! へっへっへっ、一世一代の神風特攻をやってやろうじゃんか!」
「せいぜい達者でな」
追いはぎをゲートに追いやって、先に進むことにした。
ゲートの一つや二つ、閉じられないことでは一人前の追いはぎにはなれないぞ、と。
まあやられるだろうねw
さて、ここからグレート・フォレストに入っていくか。
この森には、モラグ・バルの祭殿があったりするから油断してはならない。
あのデイドラは、殺されろと命じてくるのだぞ? 無茶苦茶な奴もあったものだ。
森の中を地図で迷わないようにチェックしながら直進したところ、見慣れない生き物がうろついているのが目に入った。
ブルーグレーの生き物、あれがギルバートの言っていたシギだろうか?
う~ん、チュパカブラというか、トゥアチュートというか、不思議な生き物だね。
「こいつを退治して、シギの羽根を持ち帰らないとな」
「えー、やっつけちゃうの?」
「連れて帰るとか言うなよ」
「やだ、連れて帰るの」
動物園の仲間を増やすのか? それともリリィさんの研究所に置いておくか?
依頼では肉とかが欲しいわけではなくて、羽根が欲しいだけだ。
実物を連れて帰れば、必要な時に羽根を得られて助かるのではないかな。
研究所に動物を置きたくなければ、ミーシャ動物園に連れて行ったらいいだけだ。
………
……
…
「さあ、実物を連れて帰ってやったぞ。これで羽根は好きなだけ取れるぞ」
「ありがとうございます。あなたの努力に報酬を払いましょう」
「おっ、金塊か。意外とこっちの方が助かるな、普通の金なら余っているからね」
「知っていましたか? 金塊は我々にとって通貨だけでなく、大切なエネルギー源の役目を持っていることに」
「何? これが?」
俺は、ギルバートに言われて金塊を少しかじってみた。
「うまい! チョコレートのような……」
「どうです、力が出るでしょう。でも食べ過ぎると鼻血が出るよ!」
「ほとんど精力剤じゃねーか!」
というわけで、リリィさんの新しい研究所、オゥム・クォート・オゥムからの依頼は終わった。
珍しい動物も見れたし、十分に楽しめたよ。
これだから人助けは、やめられないのだよねぇ。
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