脱獄大作戦?
どうやらここシロディールでは、大きな動きが起きているらしい。
何でも現皇帝陛下であらせられるユリエル・セプティムが、暗殺者に命を狙われているらしい。
たまたまグレイ・フォックスとして投獄された牢屋が秘密の抜け穴になっていたらしく、奥へと続く通路が開いたのだった。
この先に、護衛に率いられた皇帝陛下が進んでいったのだが、表から出られない以上、俺もこの奥へと進んでいくしかないのだ。
ひょっとしたら、皇帝陛下の脱出のどさくさにまぎれて、自由の身になれるかもしれない。
なにしろ俺はもうグレイ・フォックスではないのだからな。アークメイジのラムリーザが逮捕されたわけではないのだ。
隠し通路は土壁だったが、少し進んだところでアイレイドの遺跡のような場所に出たのだ。
そういえば、帝都自体がアイレイドの遺跡をそのまま利用していると聞いたことがある。
もっとも俺の家は、うすぎたない港湾地区にあるあばら小屋だけどな……(。-`ω´-)
盗賊ギルドが俺の事を忘れるまで、港湾地区には近寄らない方がよいだろう。
遺跡のような場所を道なりに進んでいくと、ずっと先を進んでいる皇帝一行が目に入った。
考えてみたら、コソコソする必要はないよな。アークメイジもお助け申す! とでも言って、手伝えば恩も売れるだろう。
皇帝陛下に恩を売っておいて損は無いはずだ。
俺が駆けつけたとき、護衛は戦闘に入っていた。
「アークメイジよ、ここは危険じゃ」
「私は大丈夫です、それよりも陛下の危険の方が危ないです!」
「下がっていろ囚人!」
皇帝陛下は俺の事をアークメイジと認識しているようだが、護衛はまだ囚人だと思っているらしい。
まぁ正確に言えば、確かに囚人ではあるが、それは冤罪。悪いのはグレイ・フォックス、俺ではない。
とりあえず下がっていろと言うので見物していたところ、護衛は襲い掛かってきた者達を退治したようだ。
なんか一人護衛がやられているようだけどね。
そして皇帝一行はさらに進んでいく。殉職した護衛はそのままに、まぁ仕方ないか。
念のために、襲い掛かってきた者のローブを剥ぎ取っておく。
死霊術師のそれとは違い、真紅に染められたローブ。皇帝の命を狙う者、いったい何者なのだろうか。
ついでに、殉職した護衛の武器も頂いておく。
この国に初めてやってきた時にいた地、ペイルパスの遺跡で大量に見つけた剣に似ているね。
さて、武器を手に入れたところで、急いで皇帝一行の後を追わねば――
――と思って階段を下りたところで、突然右手側の壁が崩壊したと思ったら、ネズミが襲い掛かってきた!
だが簡単にやられる俺ではない。
ついさっき手に入れた剣、刀と呼んだ方がよいだろうか。ネズミめがけて刀を突き出した!
アークメイジなのに剣の扱いに慣れているだって?
俺は魔術師ギルドのアークメイジであると同時に、戦士ギルドのチャンピオンなのだ。剣の一本や二本、扱えなくてどうするか。
――というか、ネズミ相手ならある程度戦いに慣れた者なら大したことないって。
ネズミ相手に勝利を誇るでもなく、皇帝一行が向かった方向へ行く。
鍵がかかってる……(。-`ω´-)
しかもこれは、特定の鍵が必要なタイプで、ピックや魔法では開かない。
俺は一緒に脱出させてくれないのね。
仕方が無いのでもう一つの通路、先ほどネズミが飛び出してきた方へと向かう。
そこはアイレイドっぽい場所とは違い、土の地面、洞窟って感じだった。壁は石造りで、ただの洞窟ではなく人の手が加えられているみたいだけどね。
ここでもネズミが襲い掛かってくるが、今度はアークメイジとして軽く退治しておく。
ネズミ相手に霊峰の指など放つ必要は無い。蹴っ飛ばしてもよいし、刀で切りつけてもよいのだ。
俺はエルスウェアで巨大なネズミを相手にしてきた。今更ネズミなど驚かんよ。ネズミの著作権に対する往生際の悪さには驚くが……
えーと……、ここは帝国の地下通路だよな?
ネズミは仕方ないけど、ゾンビが居るのは問題だと思う。死霊術師も紛れ込んでいるのかな?
ゾンビは火に弱い。ネズミごとまとめてパロマこんがり亭にしてやるのだ。勝手に炎上しているがよい。
そもそも皇帝を逃がすための通路――と思ったけど、そっちは鍵のかかっていた扉の向こうであり、こちらは単なる横穴。
はて? この空間は、誰が何のために作ったのだろうか?
通路の先には、不穏な空間があったりする。
人間のものと思える頭蓋骨がごろごろ、装備品も転がっているのだ。
これは死霊術師の仕業ではないな、奴らなら死体を飾っていたりするはずだ。
とりあえず腹が減っていたので、落ちていたトマトを頂いておく。落ちた食べ物も、三秒以内に拾えば大丈夫なのだ。
巨大なハンマーも落ちているようだが、とりあえず武器はこの刀だけで十分だ。そもそも俺の本職はアークメイジだからな。
洞窟には光が差し込んでいる場所もある。
ここを登っていけば外に出られるかもしれないが、流石にそこまで俺はアクロバティックではない。
飛び跳ねるのは精々奥の手、ラムリーザキックぐらいだ。
う~ん……
死霊術師もあまり感心できないが、ここに住み着いている者も問題ありそうだ。
どうやら死体ではなく、頭蓋骨をコレクションしているようだ。ひょっとして、狩りが好きな異星人か?
しかしその正体は、すぐに判明することとなった。
なるほど、ゴブリンね。
ゴブリンなら以前、奥さんの仇だの、小さな集落の解放などで何度か戦ってきた。
そういえばゴブリンの住む洞穴の入り口には、頭蓋骨が散乱していたっけな。
ゴブリンはまだこちらに気が付いていない。
盗賊ギルドで鍛えた隠密も、なかなか伊達ではないようだな。
どろぼうさんとしての下積みも、俺のサバイバルテクニックとして生きておるのだ。
というわけで、先手を取ってプリズミックミサイルを放っておく。
動きを止めたところで、焼くなり斬るなり自由にというところである。
ゴブリンごときに、霊峰の指を放つ必要は、ない。
気が付けば、壁も石造りでなく岩がむき出しになっていた。
もともと地下開発をやりかけたが途中で中断となり、勝手にゴブリンが住み着いてしまったということだろうか?
さて、今夜の晩御飯――ではない。
これは先ほどのゴブリンが残していったもの、さすがにネズミを食べようとは思わない。
エルスウェアに住んでいたアルゴニアンは、ネズミの肉が大好物だと言っていたけどね。
どこに続いているのかわからないが、今は道なりに洞窟を進んでいくしかないのだ。
普通に考えたら、どこか出口と繋がっているはずなのだ。
何度も言うが、俺自身は無罪なのだから、堂々と出て行けばよいのである。
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