レックスの始末 前編 ~推薦状の窃盗と偽造~
さて、ネナラタの王はゴタゴタで終わったので、再び盗賊ギルド潜入作戦を再開させようと思う。
ちなみに東部連峰から戻ってきてからは、単独の窃盗は一度たりともやっていない。
盗品扱いのアイレイドの壷や、今回はウンバカノの遺品整理で手に入れたアイレイドの彫像などを売り払えば済むのだ。
ちなみにアイレイドの彫像は、盗商に売った後に買い戻せば正規品となる。マネーロンダリングというか、アイテムロンダリングか?
そんなわけで、再びスクリーヴァの元へと赴いた。
「グレイ・フォックス直々の任務があるよ」
「それは責任重大ですね!」
「この仕事に成功したら、グレイ・フォックスはあんたに会ってくれるかもしれないよ」
これには驚いたが、いよいよ任務も大詰めとなってきたわけですな。
今回の任務は、アンヴィルのアンブラノクス伯爵夫人が新しい衛兵隊長を探しているので、その推薦者を盗賊ギルド側で操作してやろうという内容だった。
グレイ・フォックスは、ヒエロニムス・レックスをアンヴィルの隊長に強く推薦したいそうな。
うむ、レックス隊長はやはり有能なんだね。例えば俺が町を作ったとしても、レックス隊長みたいな人を隊長として迎えたいものだ。
その推薦書が、現在はアンヴイルの執事であるダイリヒルという者の机にあるらしい。
任務の大まかな流れとなるのは、まず推薦書をダイリヒルから奪って偽造し、帝国刑務所へ持って行って執務室で司令官の印章で封をする。
そしてその偽造した推薦書をアンブラノクス伯爵夫人に直接渡すまでが任務となる。
なんだかめんどくさそうだな……
それもこれも、グレイ・フォックスがアンブラノクス伯爵夫人の保護に熱心だからだそうだ。
それでレックス隊長をアンヴィルに向かわせて保護させる。筋は通っているな。
う~む、アンヴィルは実は危ない町なのか? 裏で盗賊ギルドと繋がっているのか?
密輸人の巣窟であるタスラもあったからな、油断できない。町中にマウンテンライオンも出没するしな。
というわけでアンヴィルへ向かおうとしたところ、スクリーヴァの家の前で待たせていた緑娘の姿がない。
どこ行った?
何をしているのだろうか?
「おいっ、その像が気になるか?」
「あっ、ラムリーザ。なんだか分からないけど、あたしこの像に嫌な予感を覚えるのよ」
「普通の像に見えるが気になるのか? 少なくともアイレイドの彫像よりは普通だと思うぞ」
「なんなのかしら、この像を見ていると胸騒ぎしかしないの……、おかしいよね?」
「俺はトビウオ師匠の視線の方が気になるけどな。なぁ師匠、盗賊ギルドについてだが――」
「そんな物は無い!」
「またまたー」
まあよい、アンヴィルへ行くぞ。
………
……
…
東部連峰へ行く前ぶりのアンヴィルだね。
港町で雰囲気も良いが、今回の話でグレイ・フォックスと繋がっている可能性が少し生まれたので警戒しておく。
ひょっとしたらタスラも公認のものだったのかもしれない……
「というわけで物乞い!」
「どういうわけでございましょうか?」
「3Gあげるからダイリヒルの執務室がどこにあるのか教えてもらおう」
「城の内部までは知らないです。でも城には秘密の通路があり、場内に住む鍛冶屋なら詳しいという話だよ」
「また秘密の通路か」
レヤウィン、スキングラード、そして今回はアンヴィルまで。お偉いさんは隠し通路が好きなのだな。
残念ながらアークメイジの私室がある塔に秘密の通路を作るスペースは無い。
まぁ魔術師なら、いざとなったらテレポート――できるのか?
「というわけで緑娘!」
「完全に名前を間違えているわよ」
「あっ――、こほん! 俺はこれからアンヴィルの城でこっそり作戦を実行するから、自宅で待ってておくれ」
「やだ」
「何で?」
「名前間違えるから」
「テフラ! 自宅で待っててくれ!」
「しょうがないわね……」
というわけで、アンヴィルの城だ。
なんだか「というわけで」が多いな、まあそういうわけだから仕方が無い。
しかしこの城、初めて入るような気がする。以前に入ったことあるかな?
明るくで雰囲気の良い場所だ。ここが盗賊ギルドと繋がっているとは思えないなぁ……
衛兵も居なかったりするし、やっぱ警備関係に難があるのかんな?
だからレックス隊長をFAで獲得して、警備を強化しようというのだろう。
あまり人が居ない城だから、鍛冶屋はすぐに見つかった。
「お前が話に聞いていたキャットバーグラだな、ついてこい!」
「いや、何それ?」
キャットバーグラ? 初めて聞くぞ?
そういえばスクリーヴァも俺のことをそう呼んでいた気がするけど、いつの間にそんな名前になった?
俺は盗賊ギルドでは「夜盗」ではないのか?
俺はふと思った。
こんな窓も無い閉じこもった場所で鍛冶屋をやっていたら、部屋が煙でいっぱいになってしまうのではないかな? と。
サンダークリフ・ウォッチの奥にあった地底都市にも鍛冶屋があったけど、あまりそんなことは気にしないのかな?
城の中に煙が充満してしまいそうだが……
「ほら、この先に執務室がある。衛兵に気をつけて行ってこい」
「はいよん」
どうでもよい――、いやよくないが、城の鍛冶屋が盗賊ギルドと裏で繋がっているのな。
グレイ・フォックスを捕まえたら、お前のこともレックス隊長にチクッてやるw
そんなこんなで、衛兵とすれ違うことも無く隠し通路を通って執務室に辿りついた。
しかし――
「立ち去りなさい! 衛兵を呼ぶわよ!」
「ごめんなさい!」
執務室の机に推薦状があるというのだが、執事ダイリヒルが机に陣取っていて侵入が不可能だ。
部屋から出て行くのを待つか、他の手を考えるか――
秘技!
ジ=スカール先輩直伝、どろぼうさんの極意発動!
先輩は一つだけいいことをしてくれたよ。それは透明化の魔法を俺に教えてくれたことさ。
とまぁ透明になっていたら、執事ダイリヒルがどれだけ探し回っても見つからないわけなのだが。
これはまずいね、透明化の魔法の管理は徹底しないと、悪用されたら大変なことになる。
――と、悪用しているアークメイジが述べるのであった……(。-`ω´-)
さて、盗み出した推薦状がこれ。
一部突っ込みたいところがあるが、まずイティウス・ハイン、知らん。
レックス隊長は暴走がちで推薦しないとなっている。確かに勇み足の港湾地区強制捜査を連発していたな。
もう少し待てば、俺がグレイ・フォックスのことチクッてやるのにね。
そして突っ込みたいところは最後の一人。
オーデンスは道徳的に問題ありというのは間違ってないが、もう死んでいる人だぞ? 死人を推薦して大丈夫か?
個人的には、レックス隊長よりもオーデンスを推薦して、その結果をニヤニヤしながら眺めてみたいものではあるな。
さて、推薦書は手に入ったので、次は偽造屋を探す必要がある。
「こら物乞い、5Gやるから偽造屋を教えろ」
「67G下さい」
「高っ!」
「私には五人の子供が……」
「そして四人と言い間違えて、嘘でしたと言うのだろうが! だまされんぞベニー!」
「誰ですかそれは。とまぁ冗談は置いといて、魔術師ギルドの隣にあるあばら小屋に住んでるよ」
「このやろやっぱり冗談だったか、罰として3Gしかやらん」
「6G下さい」
「ほらよっ!」
何茶番を演じているのだろうか……(。-`ω´-)
それでも物乞いの言うとおり、魔術師ギルドの隣にあばら小屋があったりする。
入り口の隣に巨大な洗濯板があるのが気になるが、こんな所に偽造屋はいるのだろうか?
「ごめんくさい」
「誰だ!」
「あなたは偽造屋コリン・ブライスですか?」
「違う、私はコルヴァスというものだ」
「見知らぬ者? それ名前なんだ……、それは置いといて、この推薦書を偽造してください」
「ふーむ、どう偽造するのだ?」
「オーデンス……、じゃなくてレックスを推薦するようお願いします」
「よし、一日待ってくれ。それまでに仕上げておこう」
「あまり細かい作業ばかりしてないで、目を大事にしろよ」
「任せておけ。報酬は後でもらうからな」
これで推薦状の偽造は依頼できた。
絶対オーデンスを推薦したほうが面白いと思うけど、ここは仕方が無い。
さて、明日まで一日のんびり過ごすか。
まだ穴を直してないな。
またマウンテンライオンが入ってくるぞ、と。
「というわけで、任務が終わったのですりすりへろへろやろうか」
「誰とやるのかしら?」
「ミ――テフラと」
「…………」
「とふかふ! へろへろ!」
「誤魔化さないの」
「はい……」
こうして、アンヴィルの自宅で翌日までゆっくりと休むことにしたのであった。
続く――
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